水中考古学者の…

海事・水中考古学博士です。 水没遺跡・沈没船の研究をしています。 海に囲まれた日本です…

水中考古学者の…

海事・水中考古学博士です。 水没遺跡・沈没船の研究をしています。 海に囲まれた日本ですが、水中に存在する文化遺産の保護・研究はまだまだ。 日本でこの分野を定着させるための奮闘記です。

最近の記事

サン・ホセ号の「財宝」

コロンビアで発見されたサン・ホセ号、数兆円規模の「財宝」について キーワードはこちら  コロンビア沖で発見  スペインの船ー所有権を主張  戦争中に撃沈(1708年)  銀貨(ポトシ銀山から採掘)などを搭載  アメリカのトレジャーハンター会社が発見したと主張  積み荷の原価は史上最高額か(ハッキリ言って、どうでもいい) コロンビア政府が引き揚げるとか引き揚げないとか話題になっています。単なる財宝の金銭的な価値だけではない。文化遺産としての価値、歴史の重み、そして、海底の環

    • 水中考古用語集 え

      え え~  どうしよう。 やっぱり、エルトゥールル号しかないだろう。ほか、「塩素」とかにして脱塩処理・保存処理も考えたのですが…。 ご存じの方も多いであろう。1890年、和歌山県串本町沖で嵐に遭い、座礁、海水がボイラー内に入り大爆発・沈没したトルコ軍艦。日本とトルコの友情のきっかけとなった船だ。トルコの使節団を乗せた船で、明治天皇謁見後、横浜を出港した後の出来事。 数百名の死傷者を出したが、串本・大島のジュ民が懸命の介護を行った。沈没後の窃盗などもなく、また、義援金も多

      • 水中考古用語集 う

        ウル・ブルン沈没船 最初は、「埋め戻し」と思ったんですが…それは、2巡目で書くことにしましょう。水中遺跡は、発掘をせずに「現地に埋め戻して」保存・管理が鉄則となっていますね。 ウル・ブルン沈船は、トルコで発見された青銅器時代・3300年前の沈没船・商船。沈没船遺跡として完掘された世界最古の商船 -世界最古の船ではないですよ。 エジプトからの積み荷を搭載し、おそらくウガリトに向かっていたのだろうか。乗組員はシリア・レバント地方であろう。王侯貴族の積み荷を運んでいた商船であ

        • 水中考古用語集 い

          水中考古に関するざっくばらんな話題をお届けします! 今日は、い   特定の遺跡の話ばかりになると嫌なので… 「遺跡か遺物か」 というトピックについて沈没船は遺跡ですか遺物ですか?と聞かれることが、ごくたまにある。 水中考古学のキャリア20年以上になるが、講演会などで4~5回ほど話題に上がった。特に、一般向け講演会よりも考古学者向けの専門的なシンポジウムなどで聞かれる。 考古に詳しくない人は、なんのこと?と思うかもしれない。 遺跡は、過去の人の使ったモノを指す   

        サン・ホセ号の「財宝」

          水中考古用語集 あ

          水中考古に関するざっくばらんな話題をお届けします! 今日は、 相島 (あいのしま)福岡県新宮町―福岡市の隣町。 博多湾を出て東(宗像方面)に向かうと最初に見えてくる島である。海から福岡空港に着陸するときには、博多湾に入る前に左側真下に見える。 一昔前、猫の島として海外のニュースで報道され、今では釣り客とネコを見に来る外国人観光客でにぎわう。島の沖には「メガネ岩」があり、新宮町の名称となっている。 ここの沖に相島海底遺跡がある。海難事故の現場であろう。平安時代の瓦が大量

          水中考古用語集 あ

          研究者日記 Day36 水中遺跡は楽!

          収蔵庫問題の続きです 日記としていますが、全然「日記」ではないですね。 そうそう、今、ちょうどは出張調査中ですので、日記らしいことを次の機会に書きます。 陸の遺跡では収蔵庫問題が大きな話題となることがあるが、水中遺跡はそれほど問題視する必要がない!ということ。その解説をしています。 収蔵庫問題…水中遺跡をマネージメントする上で実はそれほど問題になりません…。何を言っているのか?まあ、読んでもらえばわかるかな… 陸の遺跡の考え方をそのまま水中遺跡に押し付けているだけ

          研究者日記 Day36 水中遺跡は楽!

          研究者日記 Day35 水中考古は簡単!

          水中考古学の良いところ特集…陸の遺跡調査は大変だな~と思うことがよくある 水中だったら、そんな問題はないのに、と考えるのだが…待てよ、陸の考古学者のマインドしか持ち合わせていないと、逆に「水中遺跡はもっと大変!」と勝手に勘違いされていることがよくあるんです! 例えば、収蔵庫問題  現在、日本の様々な自治体の遺跡調査で出土した遺物の保管場所がなくなってきている。遺物によっては温湿度管理も徹底する必要がある。どこの自治体も新たな収蔵庫を作る予算もなく、建物は老朽化。それでも

          研究者日記 Day35 水中考古は簡単!

          研究者日記 Day34

          日本だけなぜこれほどまでに水中文化遺産保護が発展しないのでしょうか? この質問を学生にすると、帰ってくる答えに ―お金がないから ―遺跡の数が少ないから ―技術的に難しいから ―海に関心がないから というのが、よく聞かれます。しかし、これらはすべて間違いです。いや、「海に関心ないから」に関しては部分点をあげてもいいかもしれません。これらの回答は「日本だけ」の答えになっていないです。 他国で可能なのに、なぜ日本だけ?  お金がないから→高度経済成長期、ジャパンア

          研究者日記 Day33

          ここ2~3日の間に見た、「気になる水中考古学」関連ニュースの紹介。 脈略、順番関係なし。ただし日本のニュースをトップに持ってきました。皆様には、ぜひリンクをクリックして読んで欲しいです。翻訳機能フル活用かな…。 その1にゅーすというか、お知らせ。 たくさんの人に参加して欲しいですね。水中遺跡を実施に見つけるのは漁師やダイバーの方々。そこにはまだまだたくさんの情報が眠っている。 その2 長野県諏訪湖の曽根湖底遺跡。日本ではじめて水中遺跡の調査が行われたのは明治時代なんで

          研究者日記 Day33

          研究者日記 Day32

          たまには、水中考古学と関係のないことを書いてみよう。そして、今日は写真なし! 水中考古で私が書けることと言ったら、音楽・作曲、料理、そして自分の体調や普段の生活のことぐらい。 なので、お休みについて。ちょっぴり前はGWでしたね。私、休みのたびに体調を崩します…今回のGWも鼻水から始まり喉の痛み、微熱…なんとなくだるい。でも、もう大丈夫だと思っていたら、鼻の奥のつまりが取れずなんか耳の奥まで違和感が…。 やすみのたび、ということで 昨年はクリスマスイブにインフルエンザ。

          研究者日記 Day32

          研究者日記 Day31

          なぶんけん、文化財総覧WebGISをちょっぴりリニューアルしたそうですね。見るだけでも楽しくなるデータベースですね。 多くのウェブサイトは、なんかリニューアルすると使いにくくなったり醜くなったりするんですが、なぶんけんさんは、不思議とリニューアルのたびに見やすく使いやすくなる。某漫画アプリサイトや某SNSは、何か変えるたびに不満が… おそらく、なぶんけんは自分たちが一番使い込んでいるから、なのかと思ってます。 もちろん、水中遺跡の情報も挙げてありますよ! 水の子岩! 

          研究者日記 Day30 GW中…

          GW中です。授業や出張はないので若干羽を伸ばしちゃってます。でも、やらないといけないことが…。 ところで皆さんには、水中文化遺産の保護に関する問題で日本が世界に対して責任ある行動を取っていると思っていらっしゃるでしょうか? 水中遺跡保護に関する問題? 責任? 何のこと? と思った方もいるかもしれませんが、海洋問題、環境問題、様々な海の問題と水中文化遺産は密接にかかわっています。 国連海洋科学の10年という取り組みがあります。これと関連して、様々な組織が協力して3つの国際的

          研究者日記 Day30 GW中…

          気になるニュース 

          ちょっと、気になるニュース記事や論文を集めてみました。これらをどのように解釈するかは、みなさまそれぞれ….. 以下のお話し…    ①中国の水中考古学! 金使ってるな~   ②中国政府の主張   ③そういえば、フィリピンとの対立   ④中国は、南海で考古学調査を   ⑤西沙で遺跡発掘   ⑥重要な論文ー皆さん頑張って読みましょう!   ⑦白さんの博士論文   ⑧ユネスコ水中文化遺産保護条約   ⑨日本政府の考えというわけではないですが ①中国の水中考古学! 金使ってるな~

          気になるニュース 

          研究者日記 Day29

          この前の火曜日、オンライン配信トークしました。 Youtubeのライブはひさしぶり。けっこうグダグダだったかも。 内容は、神戸大学とおこなっている「海洋文化遺産プロジェクト」 市民参加型の水中・海洋文化遺産の探求。大人の自由研究です。現在、このプロジェクトの参加者を募集しており、その呼びかけです。 どうしたら多くの人を水中・海洋考古学に興味を持ってもらうか、どうしたら関わってもらえるのか、そんなことを話しました。ゲスト4名。水中ドローン会社経営者、ダイビング産業の方、水

          気になるニュース 海洋開発と文化遺産

          海洋開発…海底油田やガス、そして最近は風力発電。 今日は書きすぎてしまう可能性大。 海洋開発に際して、「水中文化遺産も守る必要があるよね」という合意は世界で形成されつつあります。国連組織(ユネスコなど)も、それに向けて動いています。多くの国では、風力発電など施設を建設する際には、事前に調査で影響を受ける水中遺跡の有無を確認します。掘るところだけではなく、建設により「影響を受ける範囲を事前に調べる」ことをします。 その結果、世界各地で水中遺跡の発見ブームが起きており、先進

          気になるニュース 海洋開発と文化遺産

          研究者日記 Day28 生い立ち4

          大学院生活は、まあ、過酷でしたが楽しかった。充実していましたね。 最初の一年は、毎週木曜日は大学に泊まってほぼ徹夜でした。今はもう、All Lightなんか無理です。年をとりました。 住んでいた町の名は、「College Station」 名前のまんまの町です。 もともと全寮制の農工大学(たしか1876創立?)で、何もないところに大学を作ったようです。当時ですので、鉄道が敷かれました。で、駅の名前をどうしようと…。そこで、わかりやすく Collegeにしようと。 なの

          研究者日記 Day28 生い立ち4