見出し画像

水中考古用語集 う

ウル・ブルン沈没船

最初は、「埋め戻し」と思ったんですが…それは、2巡目で書くことにしましょう。水中遺跡は、発掘をせずに「現地に埋め戻して」保存・管理が鉄則となっていますね。

ウル・ブルン沈船は、トルコで発見された青銅器時代・3300年前の沈没船・商船。沈没船遺跡として完掘された世界最古の商船 -世界最古の船ではないですよ。

エジプトからの積み荷を搭載し、おそらくウガリトに向かっていたのだろうか。乗組員はシリア・レバント地方であろう。王侯貴族の積み荷を運んでいた商船であり、金の装飾品、ガラスのインゴット、スカラベ、ビーズなどが発見されている。その他、青銅器時代と言うこともあり、銅のインゴット10トン、青銅を作るために錫1トンも積まれていた。

錫のインゴット

文献史料や壁画などに登場する交易をそのまま具現化したような沈没船である。20世紀最大の考古学発見のひとつであるとも言われている。

一つ残念なのは、この沈船の発掘の跡、多くの人々に「次の水中考古学の成果」に過度な期待を持たせてしまった一面がある。水中遺跡と言えば、ウルブルンやヴァーサ号のような沈没船が連想されてしまう。特に、アメリカなど一部のメディアで「第2のウルブルンか?」と期待され…蓋を開けてみれば…。ウルブルンのインパクトが強すぎて、しばらくはどんな小さな水中遺跡の調査でもメディアが大げさに取り上げる傾向がちょっとあったようです。

フォトグラメトリーで有名な山舩さんがウルブルンについて詳しく日本語で説明しています。


さて、ウルブルン遺跡は、同じく青銅器時代のケープ・ゲラドニア遺跡と対比されることが多い。こちらは、1960年代に発掘された遺跡である。同じくトルコで発見され、乗組員もシリア・レバント地方の人々であったようだ。

ケープ・ゲラドニアについては後ほど紹介するが、ようは「庶民の船」であった。文献史料には全く登場しない、当時の人々の海の生業を色濃く再現することができた遺跡である。「け」で書きますので、よろしく。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?