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出版社でのちいさな挫折と、あらたに見つけた目標  ― わたしの転機をふりかえる #3

この連載では、私自身のライフキャリアストーリー(=人生の物語)を少しずつ綴っていきます。今日は、新しく働きはじめた出版社でのちいさな挫折と、そこから見つけた新たな目標についてお話しします。

前回はこちら:

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二度の失業により、ふたたび路頭に迷った私は、ひょんなきっかけから憧れの出版社で働くことになりました。

大好きな本に囲まれながら働く日々は夢のようでした。無我夢中で仕事にのめり込みました。

そのオフィスの一角には大きな書庫があって、さまざまなジャンルの本が壁一面にぎっしり並んでいました。そこに足を踏み入れるたび、色とりどりの本の背表紙と紙のにおいに包まれて「なんて幸せなんだろう……!」と感じたことを今でも思い出します。

一方で、仕事を覚えていくうちに、だんだんとある葛藤が芽生えてきました。すなわち、自分自身の無知と経験の浅さです。

その会社は学術出版社で、お客様の大半は教育関係者や大学の先生といった方々でした。そして私が最初に配属された部署は、そのようなお客様から日々舞い込んでくるお問い合わせに対応する部署でした。

書籍の内容に関することから、語学や教育学、はては科学的な内容にいたるまで。あらゆる種類の問い合わせが連日矢のように飛んでくるのですが、それらになかなか即答することができない。お客様から宿題をいただき、調べて電話を折り返すことがルーティンとなっていました。調べもの自体は大好きなので、仕事自体はとても楽しかったのですが、自分自身の無知さと日々直面せずにはいられませんでした。

そうして悶々と過ごしていたある日のこと。忘れもしない2011年3月11日、東日本大震災が発生しました。

当時、私は東京のオフィスで震度5強の揺れに遭いました。社長の命令により、その日は解散。港区のオフィスから自宅までの約12キロの道のりを、都市機能が麻痺した東京の様子を目の当たりにしながら、半日かけて歩いて帰宅しました。そしてようやく自宅に着き、テレビをつけた瞬間に飛び込んできた光景。たった一日でここまで世の中が様変わりしてしまうことに衝撃を受けました。

「朝が来れば、昨日の続きがまたはじまる」――。

そう信じて疑わずにいたこともありました。でもそうとは限らないかもしれない、ということをこの瞬間に思い知りました。

― もう、社会に翻弄される人生はこりごりだ。
― ちゃんと自分の足で人生を歩んでいくためには、どうすればいいんだろう。

ひたすら悩み、あれこれ考えた末にたどり着いたのが、大学で学び直すという選択肢でした。

つぎの投稿では、その選択に大きな影響を与えたある女性との出会いを振り返ってみます。


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