見出し画像

リーマン・ショックからの失業と、あらたな道のり ― わたしの転機をふりかえる #2

この連載では、私自身のライフキャリアストーリー(=人生の物語)を少しずつ綴っていきます。今日は、私の人生において大きな転機となった失業と、そこからの再起のきっかけを振り返ります。

前回はこちら:

*******

大学を卒業後、小さな映像プロダクションに就職しました。

前回もちらっとお話ししたとおり、活字系の業界は避けて就職活動をしていたのですが、表現にかかわる分野はあきらめきれず、隣接する業界に落ち着くという形を取りました。

会社では仲間に恵まれ、忙しくも充実した日々を送っていました。

そこは映像業界らしい雰囲気に満ちたプロダクションでした。帰宅は毎晩終電、日によっては午前様。出張ロケなどもある体力重視の現場でした。社長以下の先輩方も、広告業界やテレビ業界出身の方が多く、その界隈独特の雰囲気がありました。学生時代にテレビ局でアルバイトをしていた私にとっては、どこか懐かしく、映像業界にいることを実感できる刺激的な職場でした。

まわりの同期も、映像作家やプロデューサー志望のメンバーばかり。みんな朝から晩までバリバリと仕事をしていました。わたし自身は映像志望というわけではありませんでしたが、職場の和気あいあいとした雰囲気や、外部のクリエイターさんをはじめそこに集まる職人気質の人々が好きで、充実した日々を送っていました。

しかし、あいにく私はそこまで体力がある方ではありませんでした。そんななか、長時間勤務と重労働がしだいに体に堪えるようになってきました。

さらに、もともとは活字の仕事がしたかったのに諦めてしまったという個人的な経緯もあり、「これでよかったのかな」という思いが次第に芽生えてきました。

そんなあるとき、仕事でいくつかのトラブルが重なりました。それをきっかけに、割れたガラスのように自分自身が一気に壊れていきました。

身体がだるく、精神的にも無気力な日が続きました。気づけば何時間も涙を流している時もありました。それでも平日は気合いを入れて仕事に行っていたのですが、週末になると人に手を引かれなければ外に出られないような状態になりました。

いちばんしんどかった時は、路上でところかまわず座り込んだり、その辺のベンチで寝込んだりなど、いま思い返すと異常な状態に差し掛かっていました。それでも不思議と仕事にだけは行けていたのですが、「いつか環境を変えた方がいいかもしれない」としだいに思うようになりました。

そうして、2年目を迎えるタイミングで一区切りと決め、退職しました。おりしもリーマンショックの直後で、転職活動も一筋縄ではいきませんでしたが、なんとか新しい仕事を見つけることができました。

そして新しい仕事がはじまり、10日ほど経ったある日のことでした。

出社した矢先、社長室に呼び出されました。何事かと向かうと、開口一番に解雇を告げられました。理由ははっきりしなかったのですが、とにかくその日中に荷物をまとめて出て行ってくれということでした。

あまりのことに呆然と立ち尽くしました。その日どうやって帰宅したか、記憶にありません。数日後、テレビのニュースでその会社が倒産したことを知りました。 

しばらく路頭に迷った後、運よく別の会社に拾っていただきました。「今度こそ長く働きたい」という思いで自分なりに一生懸命働きましたが、そこでの日々も長くは続きませんでした。働きはじめてから一年半ほど経ったときのこと。リーマン・ショックの影響もあり、所属していた営業所の閉鎖が決まりました。

ふたたび職を失うことになった日、どうやって家まで帰り着いたか、やっぱり覚えていません。とりあえず最後の仕事と片付けをするために、翌日いつもどおり会社に行ったことだけは覚えています。

仕事がまたなくなり、あてどもなく近所をぶらぶらとさまよっていたある日。歩きながらスマホを見ていると、ある会社の求人広告が目にとまりました。出版社の人材募集でした。「いいなぁ」とぼんやり思いました。自分も、出版社で働けるような人生だったらよかったのになぁ。そんなことをぼんやり思いつつ、何かアクションを起こせる気力すら残っていませんでした。そして何もせず、その求人広告は見送りました。少なくとも、自分ではそう思っていました。

その翌朝。起きてスマホを見ると、ある会社からメールが届いていました。何かと開くと、前日に求人情報で見た出版社からの連絡でした。読むと、どうやら面接に呼ばれているらしいことがわかりました。

自分はまだ夢を見ているのかもしれないと思いました。求人広告を見ただけなのに、なんであちらから突然メールが来て、しかも面接に呼ばれるんだろう?そもそも 私の連絡先はどうやって知ったんだろう……? わからないことだらけで混乱しました。

しかし冷静になってあらためてメールを読むと、やはりこれは現実のようでした。面接に呼ばれていることも確かなようでした。

正直にいって、この時のことは今でもあやふやな記憶しかありません。恐らく思考が停止していたのだろうと思います。ただ状況からして、恐らく自分で無意識のうちに応募ボタンを押すなどしたんだろうと思っています。

そんなわけで、面接に伺い、ご縁あって正社員として採用されました。

つぎの投稿では、出版社で働くなかで経験した最初の挫折と、そこから得た新たな目標について振り返ってみます。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集