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【映画のつぶやき】『怪物』※ネタバレ有
僭越ながら、ストーリー展開、構成が、流石カンヌで脚本賞受賞するだけあるなと思った。
人間一人一人の描き方はやっぱり是枝監督すごい。
なんかこの人嫌だなぁと思う人にも、
憎めない瞬間がある。
こういう、絶妙に、自分に不利益となりそうな状況を、うまい具合に嫌われないように回避するのが得意な人、いるよなぁ、とか。
ある出来事をそれぞれの人間の視点で辿っていく中で、少しずつ全体の状況、事実が明らかになっていく。
前半の内容が、途中から180度覆され、人物に対する見方が変わる。
個人的に印象的だったのは、大雨の中で姿を消した湊を死に物狂いで捜索する大人たちと、実はその最中、いつもの場所で戯れる湊と依里。2人だけの時間。最後のシーン、雨が上がった晴れ間に、野の向こうまで駆けていく2人と、暗がりの中で子どもたちを探し続けた大人たちの対照的な描かれ方が後を引いた。
結局2人を見つけ出す画がなかった。
2人の世界の中に、大人たちの関心が介入する隙は与えられないのだろう。
そして、前半に見られる湊の不可解な言動や、先生たちの挙動の不審さ、校内に響く地鳴りのような金管楽器の音。これら全てが『怪物』というタイトルさながら奇怪で不穏な空気を感じさせる。
***
〈余談〉
前から思っていたけど、教員ってつくづくリスキーな職業だなぁと今回改めて思い知らされた。(教員の方ごめんなさい)
仮に100%冤罪だったとしても、子どもが嘘をついていたとしても、教員の過失だと判断される可能性が高い。
「子どもが嘘をついたことにはできないでしょう」とある教員の一言。
「学校のために」と言いくるめる校長。
もちろんそんな不運ばかりではないだろうが、教員という立場上、何かあった時の社会的制裁が重いのだろうと思う。
『怪物』
監督:是枝裕和、
脚本:坂本裕二、
音楽:坂本龍一
その他キャスト陣含めて、
贅沢な一本だった。