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向井柳雲の食とワインのマリアージュレポートVol.9 ~フランスの豊饒の大地とアメリカの西部劇の出会い編~
ワイン
ワイン名
シャトー・エルヴェ・ラロック2014
ワイナリー
シャトー・ムーラン・オーラロック フランス ボルドー地方 フロンサック。
このワインを造るのは、ボルドーの商取引に反旗を翻し、偉大なるワイン(グランヴァン)造りにこだわる、小さな家族経営の蔵元です。長年ご愛顧いただいているお客様には、「エルヴェさん」のワインでご存知の方も多いかと思います。
出会いは今から約30年前。
ボルドー地方の北東部に位置し、有名なワイン産地サンテミリオンやポムロールにほど近いフロンサックに位置します。
「ネゴシアン*を通さない上、なかなかワインを譲ってくれないが、地元では密かに話題になっているシャトーがある」と知人から聞きつけ、早速訪ねてみました。
前当主エルヴェさんは、まだワインの産地としては無名であった時代、地元のワインの品質を向上させるため、地域全体のぶどう畑の品質向上にも取り組んでいました。
「この地でも有名格付けワイン並みのワインができるんだ!」と、徐々に若き後継者たちが地元に戻ってワイン造りをするようになったそうです。まさに、地元のワインの素晴らしさを世に広めたパイオニアの一人!
息子であり現当主のトーマさんは、自宅の目の前に広がるぶどう畑で、これまで通りの自然な農法を継承しています。
父と同じように、ぶどう畑をくまなく足で回り、ぶどうの生育状態を観察し、収穫期になると区画ごとにぶどうを食べて、その熟成度を見極め、収穫日を決定しています。
ファーストワインでもある「シャトー・ムーラン・オーラロック」の飲み頃が20~30年と言われる一方、今回ご紹介するワインは、より飲みやすくより早く熟成を迎えるため、約10年が経過してやっと飲み頃になり、特別に分けていただきました。
ファーストワインと同じぶどうを使用し、同じワイン造りへの情熱を注ぎ込んで造るため、このワインをセカンドワインと表現すると、蔵元からは叱られるほど!?こだわり抜いた1本です。
葡萄品種
メルロ主体、カベルネ・フラン、カベルネ・ソーヴィニヨン
アロマ
プルーン、チョコレート、蜂蜜。
価格
3,680円 (4,048円 税込)。
購入店
マリアージュ
筋肉質な印象はカベルネ・ソーヴィニヨンのタンニンの深さ故だろう。それをメルローが作用することで、まるで筋骨隆々でありながら滑らかな光沢を見せる古代ギリシャの戦士の彫像のような趣を見せている。そこに、カベルネ・フランらしい謎めいた部分が加わることで、味わいにより奥行きが出ている。
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チーズ
チーズ名
蔵直®日本のチーズ 青 ダイワファーム
マリアージュ
チーズの青カビの作用により、筋肉隆々の戦士の彫像に命が吹き込まれ、西部劇をテーマにした映画を思わせるような、どこか懐かしくまた滋味溢れる味わいになっている。
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料理
料理名
ハンバーグ
諸説ありますが、ハンバーグの歴史をさかのぼるとその原形は、いわゆる「タルタルステーキ」にたどり着きます。
タルタルステーキが生まれたのは13世紀ごろ。中央アジア(現在のロシアやモンゴルの辺り)のタタール族が、ヨーロッパに侵攻していた時代(東ヨーロッパを支配した)のことです。タタール族は馬で移動していたのですが、その乗り潰した馬も貴重な食料でありました。しかし、馬肉は筋張って硬く非常に食べづらい…。そこで、馬の鞍の下に肉を置き、乗り手の重さで押し潰すことと馬の体温の相乗効果で柔らかくし、さらにそれを細かく切り叩く料理を開発しました。
「硬い肉を柔らかいミンチにして食べる」
この発想が現在のタルタルステーキの原点となり、タタール族の侵攻とともにヨーロッパに広まりました。
文献によっては、自生している玉ねぎやチャービルなどの香草を混ぜ込んで肉の臭みを消す工夫をしていたとの記述も見られます。中央アジアは玉ねぎの原産地でもあるので、ハンバーグに玉ねぎを入れる文化もタタール族がルーツといえるかも知れません。
タルタルステーキは16世紀頃にドイツに伝わります。※ロシアのバルト海沿岸諸国に伝わり、これらの地方と交易のあったハンブルグに伝わったともいわれています。
ドイツのハンブルグはニューヨークを結ぶヨーロッパ最大の航路で、18~20世紀前半に掛けて、多くの人々がハンブルグからアメリカ移住に向けて出航していました。
時期を同じくして、タルタルステーキを焼いて食べる料理が生み出されました。焼き上げることで、冷蔵庫のない時代の航海中の保存食として重宝したのです。(18世紀ごろ、ドイツ国内においてハンブルグのある領主が当時大流行していた牛生肉のステーキを、もっと美味しく食べられるように焼き上げたのが発祥との説もあります。)
安価な硬い肉しか手に入らない労働者階級にとっても、この調理法は願ったり叶ったり。時には、肉を水増しするためのジャガイモや米を練り込むなどの工夫もされて親しまれていたようです。
そして、この焼いたタルタルステーキが、ハンブルグから伝わった「ハンブルグ風ステーキ」としてドイツ人と共にアメリカに渡ったとされています。このハンブルグ風ステーキ=ハンバーグ・ステーキこそが、現在のハンバーグのルーツとされています。
マリアージュ
まろやかな甘みとその中にわずかに混じるほろ苦さ。それはまるで、遠い日を思い返しながら、一人夕暮れにまどろむ古老のようだ。彼は思い出している。これまでの人生における様々な人々との出会いと別れを。衝突した日があった。和解した日もあった。ともに一つの目標を目指した日もあった。恋人と永遠の愛を誓い合った日もあった。全ては、今では過ぎ去った懐かしく、且つ愛おしい日々だ。古老は膝の上に載せた白猫の頭を優しく撫でながら、物思いに耽っている。
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おすすめのシチュエーション
宴の後に一人夕日を見ながらゆっくりしたいとき。
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