平尾 静

フリーランスの人事をしています。

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最近の記事

『切り取れ、あの祈る手を』。本を読むということについての所感(17/50)

久々の更新になりました。ここ数ヶ月休載していたのですが、採用・採用広報の方針見直しに伴い、公式プロジェクトとしての『就活de名著』は終了という運びで決定しました。 休載中の数ヶ月間、個人で続けようか、それともこのままさらっと終了しようかなど、色々考えてはいたのですが、今後は完全に個人で別テーマについて書いていこうかなと考えています。更新頻度はまだ未定ですが年明け頃から書いていこうかと思っており、その前の一区切りとして、本連載の最終回をお届けしようと思った次第です。 という

    • 『旅のラゴス』を読んで考える、現代社会の正解とオルタナティブ(16/50)

      最近、学生の皆さんに「面接が苦手で上手くいかない」と相談いただきます。単純に慣れの問題もあるとは思いますが、就職活動をしていると、自分に自信を持てなくなる瞬間が来る人も多いのではないでしょうか。最近、「自信をなくすこと」について個人的にも考える機会があったので、今回はこのテーマについて書いていきたいと思います。 私が自信をなくす時、基本的には思い描いた理想像と現実の自分に乖離が起きています。テストの点が低かった時や、仕事において努力したと思っても成果が出なかった時。これは、

      • 『サピエンス全史』を読んで考える「安定」の在り方(15/50)

        「ベンチャー企業って安定していないのでは?」という疑問をよく聞きます。一口にベンチャー企業と言っても色々ですが、ベンチャーの定義を「冒険的な事業創造を行う企業」だとすると、確かに「安定」という言葉からは遠いような印象を受けるかもしれません。一方で、バブル崩壊やリーマンショックなど、いわゆる安定していると思った企業が破綻した事例も珍しくありません。そんな中で、安定を経済的自立だと仮に定義した時、学生の皆さんはどのように考えて就職先の企業を選定すれば良いのでしょうか。 今回は、

        • 『TECHNIUM』を読んで「IT系」とは何かを考える(14/50)

          「IT系」を中心に企業を見ているという話をよく聞きます。「何をするにもITが関わってくる」だったり「これからも発展する分野がITであるから」だったりと、理由は多くありますが、特にどんな分野やプロダクトに興味があるのかと聞くと、明確な答えを持っていない方が多いように思います。確かに、ITという言葉が示すものが多すぎることもあり、ITとは何か、とあらためて考える機会も少ないように思います。そこで今回は、ITをどのように理解して、今後世界がどうなっていくかを解像する方法の1つを、W

        『切り取れ、あの祈る手を』。本を読むということについての所感(17/50)

        • 『旅のラゴス』を読んで考える、現代社会の正解とオルタナティブ(16/50)

        • 『サピエンス全史』を読んで考える「安定」の在り方(15/50)

        • 『TECHNIUM』を読んで「IT系」とは何かを考える(14/50)

          『星の王子様』から学ぶ、自分に合った企業の見極め方 (13/50)

          内容を覚えていなくとも、『星の王子様』を読んだことのある方は多いのではないでしょうか。私も子どもの頃に初めて読んで以来、何度かこの本を読む機会に恵まれていますが(この本に感銘を受け、実際にサハラ砂漠まで行きました)、大人になってからの方が、子どもの頃に読んだ時よりも響くものがあるように思います。 今回は本書を考察しながら、自身に合った企業の見極め方について考えてみようと思います。 生きていると、あらゆる場面で「評価に納得がいかない」という声をよく聞きます。サークルや部活で

          『星の王子様』から学ぶ、自分に合った企業の見極め方 (13/50)

          『車輪の下』を読んで考える、就活軸の考え方(12/50)

          ハンス・ギーベンラートは疑いもなく天分のある子どもだった。ほかの子にまじって走っていても、どんなに賢そうで、きわだっているか、それを見れば、もう十分だった。シュヴァルツヴァルトの小さい町にそんな人間が育ったことは例がなかった。ごく狭い世界の外に、目を放ったり、働きかけたりする人間がそこから出たことは、かつてなかった。 ヘルマン・ヘッセ『車輪の下』の主人公、ハンス・ギーベンラートの紹介は、この文から始まります。小さな町の天才児として生まれたギーベンラートは、周囲の他の子どもと

          『車輪の下』を読んで考える、就活軸の考え方(12/50)

          『沈黙』から読み解く、新卒採用における企業の評価と自己の経験について(11/50)

          前回のnoteで、一面的な正解を目指すことの寂しさについて書きました。企業というものは少なからず経済システム内で動くよう設計されており、就職活動もその流れに紐づきます。前回はニーチェになぞらえて”正解と不正解の彼岸”を探してゆきたいと書きましたが、実際にどのようにして彼岸に向かってゆけばいいのかについて、今回は遠藤周作による『沈黙』を参考に、この問いを考察してゆこうと思います。 本書は江戸時代初期の日本におけるキリシタン弾圧をテーマとした小説で、1人の司祭がキリスト教に対す

          『沈黙』から読み解く、新卒採用における企業の評価と自己の経験について(11/50)

          『善悪の彼岸』と就職活動の寂しさについての所感(10/50)

          『就活de名著』と銘打って書いてきたnoteも、10回目となりました。全50回で1年間(来年の6月いっぱい)を予定しているため、今回の校了で1/5が終了になります。今回は、そもそもなぜ私がnoteを書いているのかをあらためて振返りながら、フリードリヒ・ニーチェによる『善悪の彼岸』について、書いてゆこうと思います。 私は、就職活動というものに、寂しい側面があると思っています。 就職活動は、大体の場合最初の就業先を選ぶ行為です。この期間において学生の皆さんは多くの企業と対峙す

          『善悪の彼岸』と就職活動の寂しさについての所感(10/50)

          『老人と海』とビジョンと利益(9/50)

          「ビジョンだけで生きていけるんですか?という質問を別の会社でされました。平尾さんはどう思いますか」 最近人事面談にいらっしゃった学生の方が仰いました。その方は、共感できるビジョンの実現のために働きたいという意思を強く持っている方で、社内におけるビジョン浸透度についてご質問いただいた流れでこの話をしました。その問いに対する私の回答は「(ビジョンだけで生きていけるのか、という)その質問自体が大変ナンセンス」というものでしたが、直近お会いする学生の皆様を見ていると、ビジョンの実現

          『老人と海』とビジョンと利益(9/50)

          『コンビニ人間』に読む、ダイバーシティの限界とその先(8/50)

          「ダイバーシティ」という言葉があります。「マイノリティ」の後に流行ったような気がするこの言葉について、学生の方から質問を受けることも多いです。内容は弊社における男女比についてだったり、グローバルの推進についてだったり。多様性を表すこの言葉が流行った背景について、仮説は様々かと思いますが、個人的にはマジョリティVSマイノリティモデルが限界を迎えたからだと思っています。社会は概してより多くのものやことを受容する方向に進んでおり、その中でAかBか以外のCのことや、Zのことまで考えら

          『コンビニ人間』に読む、ダイバーシティの限界とその先(8/50)

          『イノベーション・オブ・ライフ』を読んで考える、人生の資源配分(7/50)

          クレイトン・M・クリステンセンをご存じでしょうか。破壊的イノベーション理論を確立させた経営学者で、『イノベーションのジレンマ』や『ジョブ理論』など複数の著作を出版しながら、多くの経営理論を打ち出してきました。そんな彼が60代を迎えて出版した『イノベーション・オブ・ライフ』は、これまで彼が確立してきた経営理論を、人生全般に応用させようとした意欲作です。 死の床についた時「幸せな人生だった」と言うために、私たちはいかに生きれば良いのか。この問いについて誰しも考えたことがあるかと

          『イノベーション・オブ・ライフ』を読んで考える、人生の資源配分(7/50)

          『論理哲学論考』を読んで考える「幸せ」の定義(6/50)

          およそ語られうるものは明晰に語られうる。語りえないものについて、人は沈黙しなければならない。 本書を読んだことのない方でも、このフレーズを聞いたことのある方は多いのではないでしょうか。20世紀初頭のオーストリアの哲学者ルートヴィッヒ・ヴィトゲンシュタインは、著書『論理哲学論考』にて、新たな論理哲学体系を構築することで、哲学において扱うべき領域とそうでない領域とに線を引くことを試みました。 本日は本書を参考に、弊社の掲げる理念「幸せから生まれる幸せ」について考察してみたいと

          『論理哲学論考』を読んで考える「幸せ」の定義(6/50)

          『利己的な遺伝子』を読んで考える、自然淘汰と企業の生存(5/50)

          『利己的な遺伝子』の初版が出版されて約半世紀、本書で主張されている内容は、出版当時と比較してかなり常識的なものになりました。主な内容は、生物の淘汰は遺伝子レベルで決定されているというもの。それまで個体淘汰が定説だった進化論への新解釈を”ほぼサイエンス・フィクションのように”キャッチーに描き、世界中にセンセーションを巻き起こしました。遺伝子が”利己的”であるという表現や、文化的伝達単位である”ミーム”の存在についての仮説などが度々物議を醸しつつも、今なお新装版が出続けるほどに世

          『利己的な遺伝子』を読んで考える、自然淘汰と企業の生存(5/50)

          『月と六ペンス』が描く、人生のハイライトに至るまでの話(4/50)

          『月と六ペンス』という小説があります。小説の内容は、イギリス人作家である”わたし”が、知人の画家チャールズ・ストリックランドの半生について語るというもの。 本書において、ストリックランドは最初、証券会社に勤める何の変哲もない男として登場します。”わたし”もストリックランドを「特別な人間だなどとは思いもしなかった」と書いていますが、四十歳になったある日、ストリックランドは十七年間の結婚生活で築き上げた家庭と裕福な生活を棄てて突然蒸発します。理由は、ずっと夢見ていた画家になるた

          『月と六ペンス』が描く、人生のハイライトに至るまでの話(4/50)

          『一九八四年』イングソックの思想統制と、就職活動における自己表現(3/50)

          『一九八四年』という小説をご存じでしょうか。一九四九年にジョージ・オーウェルによって書かれた、一九八四年のロンドンが舞台の近未来(当時)ディストピア小説です。小説内のロンドンは、イングソック(English Socialism=イギリス社会主義の略称)と銘打った全体主義に支配され、強固な思想統制が敷かれています。歴史は政府に都合が良いように改変され、住民はそれらを信じるように強制されます。反体制的な思想を持つ人間が見つかった場合、思考警察により逮捕、最終的には射殺される、そん

          『一九八四年』イングソックの思想統制と、就職活動における自己表現(3/50)

          『FACTFULNESS』を読んで”ベンチャー志向”について再考する(2/50)

          Q:世界で最も多くの人が住んでいるのはどこでしょう? A:低所得国 B:中所得国 C:高所得国 調査会社であるIpsos MORIとNovusにより、2017年に開始された「ギャップマインダーテスト」のうちの1問です。この設問の解答はBですが、実は日本人の正答率は24%。4人のうち3人は世界の様相を事実とは異なる見方をしています(ちなみに、選択を無作為に選ぶチンパンジーに同じ問題を解かせたところ、正答率は33%でした)。『ファクトフルネス』の著者であるハンス・ロスリングは

          『FACTFULNESS』を読んで”ベンチャー志向”について再考する(2/50)