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あきれるくらい死ぬのが下手くそな、心優しい頑固オヤジ ~フレドリック・バックマン『幸せなひとりぼっち』

 スウェーデンの作家フレドリック・バックマンの、デビュー作にして世界的ヒットとなった小説『幸せなひとりぼっち』。面白おかしく読ませながら、じわじわ感動させてくれる、とてもいいお話でした。

 主人公の男オーヴェは、最愛の妻に先立たれ、リストラされて仕事も失ってしまった超頑固な59歳。無口で無愛想、人付き合いについては不器用で、ご近所でも孤立しています。
 亡くなった妻に会いに行きたくて、自宅でひっそり死のうとするのですが、いざとなるとそのたびに邪魔が入って、なぜかご近所の人付き合いに巻き込まれ、人助けをしたり、野良猫を助けたり。
 その様子をコメディタッチで描いているのですが、合間にオーヴェの過去が語られ、背負っている人生がだんだんと明らかに。その彼が、他者との関係を取り戻していく様子に胸を打たれます。

 スウェーデンで映画化され、日本でも公開されました。

 今度ハリウッドでリメイクされることが決定していて、主演はトム・ハンクスだそうです。楽しみ!


 同じくバックマンの小説では、『ブリット=マリーはここにいた』も面白かったです。

 こちらは63歳の、やはり頑固で人付き合いの下手な女性ブリット=マリーが主人公。長年専業主婦だったのに、夫に浮気されて家を出て、どうにか仕事を見つけます。それは、さびれた田舎町のユースセンターの管理人。なりゆきから子どもたちのサッカーチームのコーチをすることになり、不器用ながらも社会の理不尽と闘いながら、自分の人生を取り戻していきます。

 読み始めてしばらくは、ブリット=マリーを好きになれなかったのですが、今作でも物語が進むにつれて彼女の過去が明かされていき、愛しく感じるようになりました。

 どんどん素敵になっていく、ブリット=マリーの変化に注目です。 
 そして、もうひとつ。
 個人的な感想としては、サミがかっこよすぎて泣く……。


◇見出しの写真は、みんなのフォトギャラリーから、
鍬形(kuwagatg_bass)さんの作品を使わせていただきました。
ありがとうございます。

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