Shinkai

短い文章を書くのが好き。 あなたの文章を読むのも好き。

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最近の記事

「ただの私よ」

息の詰まった土の中 腕を伸ばしもがいて 届かない 進めやしない 喉に隠れた僕の言葉は 棘が出てて味もなくて 吐き出せない 優しくなれない カーテンも開けない狭い部屋で 鉢に植えた君と 焦げてく 腐ってちぎれる 愛のこもった君の目を 見つめ返す勇気を 持ってない まだ持てない 背丈を知らないただの私に 会いたい 今は会えない

    • 文章は口以上にものを言う

      20240409 ようやく酸素が脳に回ってきた。 決してくつろげる時期ではないが、例えるとしたら クロールで泳ぎ続ける時間が終わって、平泳ぎで大丈夫になったぐらいだ。 こんな僕が今日書きたいのは自分の転職する理由についてだ。 ちなみに動画でも撮ってみた。ぐだぐだだった。 職場の上司に退職することを話すと、なかなかにショックを受けているように見えた。 控えめに言って、この職場で僕は大きな期待を受けていたようだ。 そりゃそうだろう、僕ほどに何をやらせてもそれなりにこなせて

      • 酸欠

        20240228 1つ言い訳をするとすれば、世の中があまりに便利すぎるんだ。 僕らは狭くて孤独でつまらないはずの一人暮らしの1Kの中から、インターネットに蓄積された知識やエンタメに時間を問わず接続できるようになっている。 僕らはわざわざつまらない時間を過ごすことができなくて、勉強をしたり、性欲を満たしたり、くだらない動画をみて、広告に頭を焼かれていく。 そうだ、選択的にしかつまらないことが出来なくなったんだ。 これは僕らのなんでもない日常生活を、相対的につまらなくしている

        • エッセイ: パーマさえ自分でできれば良いのに

          20240209 最後に美容室に行ったのが2023/9/16らしい。 それ以来、僕はずっと自分で髪を切っている。 美容室にいる時間は嫌いじゃないんだけど、世の中に必要以上にある美容室の中から1つを選ぶ作業がとても面倒臭い。 検索して、評判を調べて、駅からの距離を測って、値段を調べて、どんな風な髪型にしたいか考えることまでして、安くないお金を払って髪を切ってもらうのだ。割に合わない。 じゃあ1つ、行きつけの美容室を作れば大体解決する問題に思うけど、それもそれで良いものじゃ

        「ただの私よ」

          エッセイ: 水たまりの中の僕ら

          240204 なんとなく停滞感を感じる、そんな時期がある。 その停滞が袋小路的な意味じゃなくて、ただ苦痛も変化も少ない日々であるのならば、僕らはそれに満足するべきだ。 でも僕は水たまりのような停滞の中で幸福を感じることがなかなかできない。 不幸を感じないこともどうやら難しい。 僕に転職の相談をしてきた人がいた。 要約するとこんな感じだ。 「今の職場は辞めたい。職種も変えたい。」 「でもやりたいことは分からない。」 「自分にしかできない仕事がしたい。」 「そもそも自分がど

          エッセイ: 水たまりの中の僕ら

          エッセイ: 「遅刻魔」と「遅刻され魔」の依存関係

          20240204 約束の時間に平気で遅れてくる人間が好きかもしれない。 もちろんわざわざ遅れてきて欲しい訳ではないが、それぐらい適当な人間が相手だと気楽だ。 そういう面の皮が厚いというか、自己中心的なところを他者に見せれる人間を僕はある意味尊敬している。 生物としての強さを感じる。 僕自身は人を待たせることが苦手だから、なるべく時間より早く到着するタイプの人間だ。 そうやって持つ時間も(来てくれるならば)別に苦ではない。 むしろ「俺は君を待ってやったんだぞ」という気分から

          エッセイ: 「遅刻魔」と「遅刻され魔」の依存関係

          歌詞:ふでばこ

          当たり前に思っていた 僕のためのえんぴつ 点と線で繋いでくれて どこへも行けた 気がつけば背負っていた 知らない誰かのものさし たまたま隣のアイツと 背比べをした 夢の中なら 君のもとへ飛べるのに 新品だったこのふでばこ あちこちくすんでしまったみたい 机の上には出せなくて 暗いかばんの中に入れた 君にだって見せれない 書い替え時かも 繰り返し握ってきた 使い慣れた消しゴム かっこ悪い点と線は 消してしまった とりあえず買ってきた 見せるためのふでばこ 苦手だった

          歌詞:ふでばこ

          徒然に道連れ(エッセイ?)

          20240128 儲かっている企業たちはこんな考え方をしていそうだ。 ① いかに消費者に時間を使わせるか ② いかに社員を雇わず人に働いてもらうか ① いかに消費者に時間を使わせるか 現代人は本当に忙しい。 9時-17時で働いている人は少数派だと感じるし、日本の大体の人は家に帰り着くのが19:00かそれ以降ではないかと考えている。 https://blog.benesse.ne.jp/bh/ja/news/20180801release.pdf (子供ありの父親が調査対象

          徒然に道連れ(エッセイ?)

          小説: 『だって今日は日曜日だよ』 #1

          今週の週末は何も迷うことがない。 土曜の午前はシーツを洗って掃除機をかける。午後は気になってた映画を観に行って、帰りに最近ハマってるパン屋に寄るつもりだ。 日曜には朝からおでんを仕込んで、ビールを飲みながら本でも読もうと決めている。 もしかしたら雨が降るかもしれないし、スーパーで餅巾着が見つからないかもしれない。 ちょっとした予定外はありえるけれど、概ね穏やかで充実した週末を僕は信じて疑わなかった。 だから、こんな事態は全く想定していなかった。 「よう、高島!海行こうぜ!

          小説: 『だって今日は日曜日だよ』 #1

          小説: 『2人で孤独を感じに行こうよ』

          ただ“歩く”ことに目的地は必要ないはずだ。 それでも、僕らは行くあてがないと玄関の扉を開けることも簡単にはできない。 顔を上げて、足に力を入れて、目を凝らして進むことに、それなりの理由と意味と何かしらのメリットを必要としてしまう。そのはずだ。 けれど、どうやら君にはそれが必要ない。 「 ”極相林” って知ってる?」 隣を歩く君は、よく急に質問してくる。 決してそれは、沈黙に耐えきれなくて、とか、僕を楽しませようと思って、とかそんな理由から始まる会話じゃないようで、ただ本当

          小説: 『2人で孤独を感じに行こうよ』

          日記: 『空鳴り(そらなり)』

          枕の上に乗っかった頭が落ち着かなくて、寝返りを繰り返す夜。 誰もいない窓の外から、ざわついた気配がする。 静かに始まったそれは、少しずつ、だけど力強く地面を、壁を、僕の部屋の窓を叩く。 部屋がぽつんと切り離されて夜に浮かび、僕の頭も落ち着きを取り戻す。 耳を傾けると、静かに弾ける無数の音が、群れとなって大きく波打つ様子が聞こえてくる。 刹那、閉じたカーテンの隙間から光が差した。 続く轟音と振動はあまたの粒の喧騒を少しだけ忘れさせる。 揺れの余韻は心地よく僕のからだを撫でてすぐ

          日記: 『空鳴り(そらなり)』

          日記: 『今日はなんでもない、ただの特別な1日』

          今日の帰り道は北欧の空みたいだった。 静かで鮮やかな青色をしていた。(#78bbff) 空につられて優しい色したビルの間から、細くても堂々とした三日月とゆっくり流れる飛行機が見えた。 交差点を渡る車のエンジンは、波みたいな音がした。 静かにさらっと消えていく音もあれば、力強くて体に響いてくる音もたまにあった。 近くの人が花束を持っていた。 その人の方向からは、柔らかな香りとちょっとだけの鼻歌が僕に届いた。 なんの花を持っているか見たかったけど、鼻歌が止まったら嫌だったので

          日記: 『今日はなんでもない、ただの特別な1日』

          小説: 『一言と横顔』

          「ねえ、別れてくれる?」 君が言ったのは唐突だった。 彼女がそう切り出す直前まで、僕らはテレビを見てゲラゲラ笑いながら、柔らかく手を繋いでいた。 握った手から伝わる温かさと、言葉のもつ冷たさの温度差に、僕の頭は追いつかず急に息苦しくなった。 口を開こうとして、閉じることを2回繰り返して3回目、少し詰まりながらも僕は質問をした。 「なんで、どうして今だったの。」 それしか言葉にならず、僕は押し黙ってしまった。 君はどんな顔をしているんだろうか。 こちらをじっと見据える2

          小説: 『一言と横顔』

          歌詞: 『Laid-back!!』

          足音響かせ朝が来た 今日もどこかで犬が喚く 何回も流れる不祥事は 美味しくもないからゴミ箱へ 扉を開けたらそこには憂鬱 モノクロで平坦な有象無象 その中に僕もいるのかな いやいるわきゃねえな このまま行くぞ ただ明日を夢見て歩きたい 気楽にやろうぜ 死にやしないよ 今日も揺れるこの街の真ん中で ぶれないまんまヘラヘラしたいな 待ちに待った開幕 これからも続く僕のソロパート 大声響かせ夜が来た 今日もどこかで猫は死ぬ 何回も聞かせた説教に 効果はないってわからん

          歌詞: 『Laid-back!!』

          小説: 『心を折りたたむ。タンスからはみ出さないように。』

          僕が覚えている一番古い記憶は、幼児が階段を登らないようにつけた柵を乗り越えて階段を上がり切る直前、足を踏み外して転がり落ちた時だ。 痛みだって、その後当然泣いたことだって忘れてしまったけれど、体が制御できなくてただ落ちることしかできない自分を覚えている。 長く、ゆっくり回り続ける風景をこの目は覚えている。 無謀な事故で死なずに済んだ僕はそれなりに大きくなって、それなりに生きていけるようになった。 今日も動く電車の中で、まだ起きたくないと訴える目をこすりながらゆらゆらとどこか

          小説: 『心を折りたたむ。タンスからはみ出さないように。』

          小説: 『ルビを振らなきゃ読めないのかい』

          「星座が嫌いなの」 彼女が唐突につぶやいた。 それまで長いこと言葉もなしに上を見続けていたから、話しかけられたのか独り言だったのか僕にはよく分からなかった。 「どういうこと?」 やや遅れて僕は尋ねた。 「だって意味が分かんない。  オリオン座なんてどっからどう見ても『砂時計座』じゃない?  手も足も顔も見えないし、そもそも力持ちの狩人にしては線が細すぎるよ。」 「”線が細すぎ”ってのは言えてるね」 僕らには星と星をつなぐ線しか見えない。 「でも昔の人が想像した話

          小説: 『ルビを振らなきゃ読めないのかい』