エッセイ: 水たまりの中の僕ら

240204

なんとなく停滞感を感じる、そんな時期がある。
その停滞が袋小路的な意味じゃなくて、ただ苦痛も変化も少ない日々であるのならば、僕らはそれに満足するべきだ。
でも僕は水たまりのような停滞の中で幸福を感じることがなかなかできない。
不幸を感じないこともどうやら難しい。

僕に転職の相談をしてきた人がいた。
要約するとこんな感じだ。

「今の職場は辞めたい。職種も変えたい。」
「でもやりたいことは分からない。」
「自分にしかできない仕事がしたい。」
「そもそも自分がどんな人間か分からない。」

僕はこう言いたかった。

「自分にしかできない仕事なんてあるわけねぇだろ、バーカ。」
「そもそも、仕事と自己実現を分けてから出直せ。」

もちろんこのまま伝えると僕の貴重な友達の数が1つ減ってしまうので、なるべく遠回しに、それでいて我慢ができるわけでもないのでちゃんと伝わるように話した。
彼女にはしっかりと僕の真意が伝わったようで、その場は楽しく真剣に会話をした。
その日以降彼女からの連絡はない。
きっととても忙しいのだろう。

それ以降、たまに彼女との会話を思い出すのだが、最近やっと僕の中で結論が出てきた。

彼女は夢を見たかったのだ。
現実の毎日は思っていたよりも美しくなくて、その中の自分も好きになれないから。
きっと輝かしい環境はどこかにあって、自分の知らないかっこいい自分はどこかに隠れているはずだと信じていたかったのだ。

そして、その気持ちは僕の中でも、どこかの臓器に根付いているものだった。
きっと僕が彼女を否定したくなったのは、ありきたりな自己嫌悪だったのだとと思う。
彼女には少し申し訳ないことをしたかもしれない。
けれど、僕の伝えたかったことはあながち間違いじゃないと思う。

結局のところ彼女は仕事を辞めたいだけで、その理由は現状を放置してこのまま未来を迎えた場合、今よりも明るくなっていると思えていないからだ。

僕らは夢を食べないと、幸せに生きていくのが難しい。
なんだか人間って大変だね

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