小説: 『だって今日は日曜日だよ』 #1
今週の週末は何も迷うことがない。
土曜の午前はシーツを洗って掃除機をかける。午後は気になってた映画を観に行って、帰りに最近ハマってるパン屋に寄るつもりだ。
日曜には朝からおでんを仕込んで、ビールを飲みながら本でも読もうと決めている。
もしかしたら雨が降るかもしれないし、スーパーで餅巾着が見つからないかもしれない。
ちょっとした予定外はありえるけれど、概ね穏やかで充実した週末を僕は信じて疑わなかった。
だから、こんな事態は全く想定していなかった。
「よう、高島!海行こうぜ!」
金曜の22:45に僕のアパートの玄関にやってきた彼は、眩しい笑顔でそう言い放った。
一旦ドアを閉めたくなったが、すでに体を半分以上玄関に入れていたコイツを追い返すエネルギーを、寝る準備中だった僕は持っていなかった。
「なんで急に海なんだ。僕は絶対に行かないよ。」
一旦拒否だけはしておく。
「えー行こうよ!お前も海好きだろ。」
そういう問題ではない。
「海は好きだけど今週は絶対に行かない。」
「いいじゃん行こうよ!なんで嫌なの?」
なんでってそりゃ、
「だって今は12月だよ。」
こうして、今週の週末は男2人で極寒の海に行くことが決まった。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?