メディア露出とリード獲得を連携する方法
BtoB企業でPR・広報を担当しているシミズと申します。
広報歴は10年ほどです。
たびたび、「広報って意味あるの?」「広報ってKPIがユルそう」という意見を聞くことがあります。
そんな意見に対して、自分なりに出した答えが「広報がリード獲得の責任も負ってみる」でした。
このnoteにこれまでに私が取り組んだPR・広報側から見たリードジェネレーションについて忘備録をまとめたいと思います。
単価400円以下で数千件のリード獲得に成功
結論を先に書くと、PR・広報とリードジェネレーションを一貫して取り組むことでスムーズに新規のお客様と接点を持てるようになりました。
リード獲得単価(CPA)は400円以下で数千件のリードを獲得することができました。
ドメイン特性が高い事例なので、再現性や汎用性があるのかは不明です。
ですが、BtoB広報に携わる方、PR・広報部とマーケティング部の連携をはかりたい方などの参考になればと思います。
200件のメディア露出が問い合わせに繋がらない
私がリード獲得に携わる前は、広報業務でいわゆるプロダクト広報を中心にプレスリリースの執筆や記者会見の実施などを行っていました。
業界紙さんにプレスリリースを毎回取り上げてもらう(機能更新やセミナー告知など)
NHKのニュースでコロナに関連したサービスとしてOAしてもらう
日経新聞や日経ビジネスに会社について記事にしてもらう
NewsPicksの番組に代表のインタビューを取り上げてもらう
年間のメディア掲載数は約200件(転載除く)だったので、量に関しては一定の成果は出ていたと思います。
しかし、ホームページのアクセスは微増しますが、サービスの問い合わせが増えるなどの効果はありませんでした。
当然、メディアに取り上げてもらうことは目に見える数値とは異なる意義があります。採用面では番組を見て応募した、という方もいました。
ただ、できればサービスの問い合わせに繋がってほしいと思っていました。
メディア露出が問い合わせに繋がらない理由は主に3つありました。
1.BtoBはBtoCとは顧客の購買プロセスが異なる
BtoBは複数人での検討や費用対効果の検証が必要であるなど、購買プロセスが複雑です。よってBtoBではTVや雑誌、ニュースで認知して即問い合せが入るほどの衝動買いは起こりません。
メディア露出からの問い合わせは難しいのだということを身をもって実感していました。
2.メディア露出に一貫性がない
200件のメディア掲載があってもそこに「一貫性」がありませんでした。
どう200件を達成したかというと
・メディアが好む旬なネタや瞬間的な話題に便乗した露出になっていた
・メディアの枠に合わせてどう攻略するかを考えていた(社長のインタビュー枠、スタートアップを紹介する枠など)
これではメディアの特性に合わせて掲載数が増えただけで、一貫したストーリーがありません。
情報を見た人にとって何の会社で何のサービスを提供しているかは伝わっていなかったと思います。
3.階段設計ができていない
当時在籍していた企業は(リード獲得という意味での)マーケティング部が存在せず、階段設計が十分にされていませんでした。
リード獲得はセールスが兼任し、オフライン展示会とBDRが中心。
サービスホームページは存在しますが、導線はウェビナー申込か、問い合わせフォームのみ。当時のウェビナーは製品紹介中心。
メディア露出の内容とウェビナーの内容に関連性はありませんでした。フォームに問い合わせをしてくれるほどホットなお客様がいませんでした。
いわゆる、ユーザー目線での商談までのなめらかな階段が設計できていなかったのだと思います。
PR・広報とリードジェネレーションの連携のポイント
ポイントは以下2点でした。
①広報視点のコンペリングイベントを見つける
PR・広報では「パーセプションチェンジ」といわれる、世の中の認識(パーセプション)を変え、商品購買の行動変容につなげることが重要だと言われています。
事例として挙がりやすいのが、TV番組やインフルエンサー/専門家などの第3者推奨や、ファクトデータを用いて課題を顕在化する方法だったりします。
しかし、私が最も推したいのが「コンペリングイベント」に注目することです。
コンペリングイベントとは「企業が変化せざるを得ない差し迫った状況のこと」です。
例えば以下のようなものです。
これを解決する企業として想起され、見込み客のロングリスト(解決策を持っている企業のリスト)に入れるか否かが重要だと思います。
そこで、私は2021年当時に「2024年問題」に注目しました。
「2024年問題」とは、2024年4月1日から働き方改革関連法の施行によって物流、建設、医療などの業界で時間外労働時間が制限されることに起因する様々な問題のことです。
2024年問題の解決のために企業投資が加速すると予想
自社サービスが2024年問題の解決の一手段として当てはまる
2021年当時は多くは報じられていなかったが、社会に与える影響の大きさから今後大きな話題になることが予見される
上記から広報が活用する最適なコンペリングイベントだと判断しました。
2024年問題が大きく注目される前に、それを解決する企業のリーダーとなり、問い合わせを増やそうと考えました。
リードジェネレーションのコンテンツは顧客の声、受注に近いところから用意していくケースが多いと後に学んだのですが、このときは認知側から考えてコンテンツを用意しました。
メディアを巻き込む
そこでまず2021年当時、3年後に迫った2024年問題への注目度を高めるために大手新聞やビジネスメディアに「2024年問題」を報じてもらおうと考えました。
各種メディアで報じてもらうことで、顧客が2024年問題を課題だと認識し、「対策をしなければ!」と意識づけしてもらおうと思ったわけです。
具体的には「企画書/ニュースレター」を作成し、面会の打診をしたり、勉強会を開催します。自社サービスのことはほぼ紹介せず、2024年問題が社会に与える影響の大きさを数字を交えて詳細に語ることに注力しました。
新聞、大手ビジネス誌の記者の方々はほぼ皆さんに興味をもっていただきました。実際に日経新聞や日経ビジネスに掲載してもらいました。
私が会社を離れた後にも所属会社は2024年問題に関連してYahoo!ニュースのTOPやテレビ東京の「ワールドビジネスサテライト」にも取り上げられています。
行政を巻き込む
また、行政の力を借りて2024年問題への注目度を高めようとしました。
具体的には地方自治体に自社サービスを使った2024年問題に備えた実証実験を打診しました。
複数の自治体に打診をした中で、東北地方の県に興味をもっていただき、関連した実証実験に外部コンサルタントとして有償で参画させてもらうことに成功しました。(この時、自社の役員、営業、CSにはかなり協力をしてもらいました)
当該プロジェクトには省庁、地方行政、業界団体、地元企業が参画し、多くのステークホルダーとの関係構築ができました。
結果、実証実験を行うことで様々な効果がありました。
官庁から「2024年問題の解決方法」の実例として紹介される
当該自治体と3年間に及ぶ実証のパートナーとなる
実証の様子が当該地方のTVや新聞、業界紙で都度報じられる
実証の内容を自社ウェビナーのコンテンツとして利用可能に
経済産業省の「行政との連携実績のあるスタートアップ100選」に掲載される
こうして、「2024年問題」を報じる際に弊社への取材が入りやすい環境を整えました。
②階段のためのコンテンツを用意する
リード獲得、及びナーチャリングに使えるコンテンツの内容を「2024年問題」に関連させ、一貫性を持たせた階段づくりを行いました。
導入事例
BtoBでは導入成果事例が顧客の検討材料の最重要コンテンツです。
そこで、2024年問題に関連した導入顧客の事例を作成していきました。
2021年当時はまだ明確に2024年問題解決のためにサービス導入をしたお客様はいませんでしたが、「2024年問題の備えになるか?」を聞くようにし、事例に盛り込むようにしました。
業界紙さんには事例の情報を提供して記事にしてもらう、という活用もしていました。
お役立ち資料(ホワイトペーパー)
2024年問題に関連した事例が複数作成できた後に、「2024年問題」の基本事項を業界の方々に知っていただこうと、ホワイトペーパー「2024年問題 影響と対策事例」を作成しました。
結果、このホワイトペーパーが大当たりし、1つの資料で約1,000件のダウンロードがされました。自身で作成したので、かかったコストは業界紙のメルマガ広告でホワイトペーパーを告知した20万円のみでした。
ホワイトペーパーは8つほど作成しましたが、他はダウンロードが200~300件だったので、2024年問題への興味が高まっていることを感じました。
ホワイトペーパーはWeb広告よりも、業界特化メディアのメルマガ広告で告知する方が効率的にダウンロードされたのでお勧めです。
オウンドメディア
オウンドメディアでも「2024年問題」のキーワードで接点になるよう記事を作成しました。(ただし、上位表示になる記事にすることができず、効果を出すまでに至りませんでした。。。無念)
ウェビナー
ウェビナーも自社製品を紹介するものだけではなく「2024年問題」に関連したものを用意し、ナーチャリング用のコンテンツとしました。
こうして「2024年問題」の解決コンテンツ、お役立ち情報を各チャネルで発信し、リード獲得をスムーズに行えるようになりました。
出来なかったこと
認知施策ではYouTubeチャンネルを運営しても良かったかもしれませんし、書籍の発刊もしてみたかったですし、カンファレンスの開催もしてみたかったですが、力及ばずでした。
また、リード獲得の精度をより高めたかったと思います。具体的にはターゲットの条件を具体的に定め、獲得したリードの中のターゲット含有率を精微にみていくなどが出来れば良かったと思います。
コンペリングイベントがあったという幸運
ここまで原稿を書いてきて、「2024年問題」というコンペリングイベントが存在した幸運があっただけで、特別なことは何もしていなかったということです。
コンテンツづくりは基本に忠実が最適なのかもしれません。
ドメイン特性が非常に大きい私の経験ですが、どなたかの参考になれば幸いです。
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