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御茶ノ水で願う人・好きなことをしてる人

夏の初めの千代田区・御茶ノ水。駅に直結するビルの中に、七夕の笹が飾られていた。

七夕の願い事の由来は、中国で裁縫の上達を織姫(こと座のベガ)に祈ったこと。

わが国の幼子おさなごの多くが、保育園や幼稚園で、たどたどしい線を一生懸命つなげてお願いごとを文字にする。

それが根付くのか、大人になっても、それまでの人生でどれくらい七夕の短冊が効果的かを振り返ることなく、「笹だ!短冊も置いてある!何か書いておこう!」と色めき立つ。


わたしも通勤していた頃は、職場の最寄り駅に飾られていた笹に短冊をぶらさげた。

………仕事がもっと楽になってほしい、 とか…………
………宝くじが当たってほしい、
とか…………
…………疲れたから辞めたい、
とか…………


通りがかりの人たちの
願いが揺れる
短冊の色と同じくらい彩とりどりの願い事
……なんて書いたけど、
よく見ると短冊の色の種類たいしたことない……
そして、ビールに目が行く




短冊を遠目で眺めながら、今のわたしは書くのを控えた。

本当にどうにかしたい願い事は、心身の不調の改善と、マンション工事の騒音、異臭からの快適な逃避。
ここで短冊に書いたところでどうにもならない。ちょっと虚しくなったのだ。


スマホのカメラを笹に向けていると、通りすがりの推定50代の女性が笹の前で足を止めた。
下の方にぶら下がっている一枚の短冊を手にとり、じっっっ……っくりと眺め、なんと、その短冊をご自分のスマホでがっつり写真に納めた。


───── え、それはどうなの?
知り合いの人の短冊なの?
なんなの?


その様子を逆に写真に撮って、noteに乗せちゃおうかと思った。


と、おばさまの所業はさておき、ぶら下げた短冊を数だけ、叶えたい願いがあるということ。
想いを抱えて生きる市井の人々に健気さと愛おしさを感じつつ、短冊たちに別れを告げる。





この日御茶ノ水までやってきたのは、神田明神へお参りするため。
ここにお祭りされている平将門様は、厄除けで有名。

休憩処の屋根にぶらさがり、参拝客を迎える風鈴たち。

……が、ガラスの外身(がいしん)に当たって
音を出す舌(ぜつ)がない。
鳴らない作りの風鈴。
それは鈴と言えるのか?




そう書いておきながら、神社のこまかいことはここでは省略。

境内のカフェ『MASU MASU』にお邪魔しました。

本日のオーダーは、ホットの甘酒と塩むすび。

糖質でしかない
(大きな声で言えないけど、
これで850円くらいした)





おにぎりをもそもそ食べながら、実は近くのおひとりさま席のおじさまを横目でひっそりガン見。

その理由は、テーブルにずしりと置かれた、立派な(=高そうな)Canonの一眼。
──── おお~!
絶対カメラマンさんですよね!
と、もうひたすら尊敬。

しかも、そのおじさま、三種類の利き酒セットとボリューミーな唐揚げ定食を召し上がっている。
───── 昼間から飲んじゃったりして、イイじゃないですか!……フフフ……

と、わたしだってものすごく大人の齢なのだから、飲みたければ飲めばいいんだけど、この後他の用事があるためお酒は控えた。



このおじさまが、ちょいちょいコミカルで楽しい。
独り言やちょっとしたリアクションが可愛いのよ。

ノートパソコンを立ち上げたら、バッテリーがなかったのか、「……あぁ~、充電しておけばよかった……」と一人で哀しげな声を発したり。

店員さんに「お茶ください」と頼んで、「ごめんなさいね、お茶は有料なんです
」と断られ、ちょっとしょんぼりしてみたり。

スマホいじりながら、「え?あれ?あれ?うそ!なんで?」と謎のつぶやきを連発したり。


そうこうしてから、誰かに電話。


「あ、お疲れ様ですぅ。
ボク、今遠くにいてるんですけど」

───── あ、その喋り方、
関西から来られてはる?
(↑わたしも脳内なんとなく関西弁風)

喋りが絶対関東人じゃないですよね!

そして、「東京にいる」ではなく「遠くにいる」って……
東京って言ったらだめなの?何故?


何気ない会話なのに、わたしのいろんな琴線を弾きまくった。



なんかもう、いいなあ、このおじさま。
そして、おじさまの暮らしぶり。

京都かどうかわからないけど関西、カメラ(が仕事、たぶん)、昼間から神社とお酒。
わたしの「好き」の詰め合わせパックな方じゃないですかぁ……!!



ふと、通りすがりの新御茶ノ水駅のポスターを思い出した。

「もう好きなことしかしませんです。
わたしの時間を取り戻すのだ!」


好きなことしかしたくない。

このおじさま、好きなことしかしてないのだろうか。
すごく気になった。



とりあえず、今のわたしも、好きなことをしている。
仕事じゃないけど、平日の神社に行って、カフェでくつろいで。

げんなりしながら駅前で短冊を書いていた二年前のわたしと比べたら、仕事辞めてやる!と思って辞めるという願い事は叶っている。


何となく通りすがりの笹だって、いいじゃないか。
その時の自分の望みを自分に確認できる。笹に書いたら叶うかどうかより、『 自分はどうしたいのか、何がしたいのか 』と心の声を聞くのが大切なこと。



七夕の短冊は書かなかったけど、次なる願い事が頭にたくさん控えている。

もっと書くんだ、写真も撮るんだ。
好きな街の空の下を歩くんだ。

そうして、わたしがわたしらしく生きる時間を取り戻すのだ。



神田明神そばの、お酒が飲めるところ
今度はここにも行きたい
(これも願望のひとつ)




ここまで御覧くださった皆様、
貴重なお時間ありがとうございました!



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