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完璧な彼のダルダルでヨレヨレなパンツを見てホッとした話。#ワコールがnoteでコンテスト開催中

これは、ワコール下着価値向上委員会『#下着でプチハッピー』の応募ストーリーです。

オーストラリアの会社で働く彼のところに、わたしは日本から遊びに行った。彼がホームステイさせてもらっていた独身のオーストラリア人男性は、気を遣ってくれて彼女の家に行ってくれていて、ずっと留守だった。

遊びに行って数日後、彼の家で一人待つわたしの元に、日中、会社でバリバリに働いているはずの彼が突然帰ってきた。

「あれ? どうしたの?」

わたしは驚いて聞いた。すると、彼は、

「職場で何気なく、『今、日本から彼女が来てる』って言ったら、同僚から『何で働きに来てる⁉』って驚かれて、『すぐに家に帰れ』って。」

と苦笑しながら言った。

「それじゃあ、給料が出ないんじゃないの?」

わたしは本気で心配した。

「俺も同じことを思ったから、それを聞いたら、『はあ⁉ 給料出すに決まってるだろ⁉ 日本人は働きすぎでカローシするって聞いていたが、ほんとうなんだな‼』ってまた驚かれちゃって、職場中の人にその話が広まって、俺は立派な変人扱い。」

と大笑いした。わたしはホッとしながら、

「まあ、給料が出るなら、それでいいんじゃないの? それで、お休みはいつまで?」

と聞いた。

「マキさんが帰るまで。」

「2週間も⁉」

そんなこんなで、日本でも経験したことがない二人だけの大型ホリデーがスタートしたのである。

始まってみると、彼は意外と料理・炊事・家事を結構やるんだなと感心したり、ドライブは行き当たりばったりでハラハラしたり、日本では気づかなかった彼の素顔がいっぱいあった。

日本に帰る日、3週間近くお世話になった家を見渡した。オーストラリアにしては小さいのかもしれないけれど、庭や駐車場付きの平屋の一戸建てはまさに理想の家だった。

そのときだ。目の端に何かが映った。その何かが気になって空き部屋に行って見た。

彼のトランクスが、他の服や下着とともに室内に干してあった。

思わずクスッと笑ってしまった。仕事でもプライベートでも何でも完璧に見えた彼も、実は水面下で必死に水を掻いて頑張っているんだ。それを知って何だかホッとした。

それから、半年して、彼が日本に一時帰国した。日本で一人暮らししていたマンションはオーストラリアに行くとき引き払っていて、実家にもほとんど荷物がなかったから、オーストラリアのホームステイ先の荷物と今持っているトランクの荷物のみが、彼の全所有物である。

「はい、これ、プレゼント。」

「えっ⁉ なに⁉ 今、開けていい?」

「どうぞ。」

彼は紙袋を開けて、中を覗き込んだ。

「えっ⁉ なんで⁉ なんでわかったの?」

彼は驚きを隠そうとはしなかった。わたしは、

「半年前に遊びに行ったとき、干してあったトランクスのゴムはダルダル、生地はヨレヨレで、きっとそれから買い足していないだろうから、今頃、限界にきてるんじゃないかと思って。」

と説明した。彼は、

「そうなんだよ。オーストラリアは物価が高いから、極力節約していたし、それに俺って、日本人の中でも痩せている方だから、オーストラリアだと子ども用パンツしか合わなくて。それ買うのも何だか恥ずかしいから、ボロボロの下着で我慢してたけど、ちょっと情けなくなって、気分も落ちていた。だから、これはほんとうに嬉しい。」

と言って、他の人がいる前で、彼が紙袋からトランクスを出して広げて見せたので、わたしは慌てて紙袋に押し戻しながら二人で笑い転げた。

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