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被災地に送る男性用パンツは、清潔なら何でもいい? #ワコールがnoteでコンテスト開催中

これは、ワコール下着価値向上委員会『#下着でプチハッピー』の応募ストーリーです。

「今、いちばん必要としている物はなんですか。」

東日本大震災から1ヶ月経ち、飲食物、オムツ、生理用品、毛布、衣服など、生きていくのに最低限の物は揃いつつあると報道されていた。

「女性にはわからない感覚かもしれないけれど。」

そう前置きしつつ、被災地支援から帰ってきたばかりの会社の男性上司は続けた。

「男性は、色の濃いパンツが欲しいんだ。」

「色の濃いパンツですか。下着が無いってことですか。」

「いいや、パンツは届いたんだ、大量に。でも、ほとんど白ブリーフだった。」

「白ブリーフですか。すいません。なにがダメなのかよくわかりません。」

「男って、白ブリーフを履くのは大抵小さい頃だけで、小学生の途中くらいから、色の濃いパンツを好むようになるんだ。それどころか、今までお世話になっていた白ブリーフを履くこと自体が、とてつもなく恥ずかしく感じるようになるんだ。」

「へえ~、そういうものなんですね。知らなかったです。」

「被災者は、全国から送られてきた救援物資に、文句を言えない空気があるんだよ。それが善意からくるものなら尚更だ。」

「確かに、『このデザインがイヤ』とか言いにくいですね。『この非常事態に選んでる場合じゃない』とか言われそうですもんね。」

「そうなんだ。中には『清潔ならデザインなんて何でもいいでしょ?』だとか。」

「それはさすがに言いすぎですよね?」

「そう、彼らには当然、人間としての尊厳がある。」

「たとえば、意に沿わないデザインの服を着させられて、街中を歩かされたら恥ずかしいですもんね。 それに男性は、非常事態のとき、着替えを女性の前でもせざるを得ないときもあるから。」

「そう、中には『惨めだ』って泣き出す人もいたよ。下着って普段、自分のお気に入りを当たり前のように毎日身につけているから、特に何とも思わないけれど、それが一瞬にしてすべて奪われた上に、いちばん自分が嫌いな下着しかなかったら、……。」

「震災でいろんなものが一瞬で奪われた上にそんなことをされたら、『辛い』なんて言葉だけじゃ表現できませんね。わかりました。色の濃いパンツを買いますね。みんなにも呼び掛けてみます。」

「また被災地に行く予定があるから、そのとき持って行って渡すよ。」

「是非、お願いします。」

それから、2週間後、被災地支援から再び戻ってきた男性上司によると、色の濃いパンツを渡した男性たちは、歓声を挙げたり、泣き出したりして、

「頑張れそうな気がしてきました。」
「少し元気になりました。」
「生きられそうな気がします。」

と口々に言ったそうだ。自分の好きな下着を身につけることは、大袈裟でもなんでもなく、生命の活力となり、希望の光なのだ。

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