大晦日は、ネットもWi-FiもテレビもDVDも無く、ラジオのみで過ごした
母によると、わたしが年末年始を田舎で過ごすのは、実に15年ぶりだそうだ。
年末年始は仕事が忙しかったり、繁忙期の航空料金がべらぼうに高かったりしたのが原因だ。
どれくらい高いのかと言えば、その金額を聞いた人たちが一様に
「海外旅行に行くよりも高い!」
と騒ぎたてるくらいだ。マイナー国内航空路線のお盆や年末年始期間の往復料金は、例えば、韓国と日本を2~3往復できるくらいの金額に匹敵した。
だけど、今の職場は年末年始に長期の休みがとれたり、コロナの影響で航空券が例年より安いのが幸いした。
寒波や雪の天候や、デルタ株やオミクロン株の心配もあったけれど、田舎に着いてしまえば、特に問題はなかった。他人に会うことはほとんどなかったのだから。
しかし、人間は『娯楽』がなければ生きにくいと思う。それなのに、田舎の家には
『テレビがない』
『パソコンはインターネットに繋がっていない』
『フリーWi-Fiが入っていない』
これだけなら(これだけでもかなりのものだが)、関東某所の一人暮らしのボロアパートと対して変わりがなかったが、さらに、
『近くにネットカフェが一軒もない』
『スマホの月額ギガをすでに使い果たしている』
という、なにも無い環境だった。そこで、持ち運びできるWi-Fiを期間限定で借りようとしたが、年末最後の仕事がゴタゴタしている間にその機会を失ってしまった。変わりに、BOOKOFFに駆け込みDVD映画を破格の値段で7本購入した。
そのDVDを、田舎の家にあったパソコンに突っ込んでみたのだけれど、なにか様子がおかしい。
DVDの音声だけは聴こえるのだけれど、画像はまったく見えないのだ。
ああ、そうだ! このパソコンはもう20年近くも前に購入したのだった。
バージョンアップもできないし、12月31日にやってる電気店もこの辺りにはなかったから、DVDプレーヤーも買えなかった。
しかも、DVDはすべて洋画だから、英会話のみしか聴こえない。字幕もなく、吹き替えにクリックすることもできなかった。DVDは泣く泣く諦めた。
静かだった。どこまでも静かだった。外から喧騒はまったく聴こえてはこない。家の外にお店もなければ、人もほとんどいないのだから当たり前だ。
母と二人でこたつに入ると、どちらからともなく携帯ラジオを点けた。
『NHK紅白歌合戦』
美少年美少女アイドルのルックスも、絢爛豪華な衣装や演出も観られないのだから、歌の下手さや上手さだけが際立って聴こえてきた。
それは、残酷なくらいだった。
「このコたち、ほんとうは歌が上手いんだけど、喉の調子が悪いみたいだね」
アイドルをかばいつづけている自分がいた。母は特になにも歌の感想を言っていないのにもかかわらず。
演歌歌手の皆さんは歌が上手くて、普段はほとんど聴かないのになんだかとても救われた。
特に、三山ひろしは、毎年、けん玉のギネス記録が気になって歌に集中できなかったのが、今回初めて歌を聴いた。
氷川きよしは、歌の上手さはもちろんのこと、熱量もビシバシと伝わってきた。
CMが入らず、MCも短めで、ラジオで紅白歌合戦を聴くのは、歌好きには良い環境だと思われた。
しかし、ときどき入る、白組と紅組の点数の中間発表が明らかに水をさしていたと思う。
いらない。やっぱり、いらない。
白組と紅組の男女に分けること、競わせること、点数をつけること、勝ち負けを決めること、年々、不要論が高まっているにも関わらず、今年も行われていた。
でも、ラジオのみで紅白歌合戦、ラジオのみで大晦日は悪くないと思った。
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