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母と「お漬け物・煮浸し」の思い出

今日は茄子の煮浸しを作ると決めていた。だから絶対に定時で帰ろうと意気込んでいたけど、中々厳しく結局残業をしてしまった。勿論気持ちは"トホホ"だけど、キッチンが私を待っている。そう思うと憂鬱な気持ちを少しだけ吹き飛ばすことができちゃうから、料理って不思議だ。

きっかけは母とのLINEでのやり取り。実家の味を恋しく思い、よくメニューを教わっている。先日夏野菜を大量に手にし、無水鍋の作り方を聞いた時に、母がリアルタイムで作っていたのが茄子の煮浸しだった。

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子供の頃は「お漬け物、煮浸し」とにかく地味な色味の料理は見ていてもつまらなく、しょっぱいだけで嫌いだった。手につけないなんてこともあった。でもそういう決してパッとしない物の美味しさをある瞬間から突然感じるようになった。それは紛れもなく実家を出ると決めたその日からだったと思う。

母は毎日料理をする人で、私が「家を出る」と言った日からは私にたくさんのレシピをたたき込んだ。実家で使っていたほとんどの調理器具を持たせてくれた。私の母は昔からそういう人だった。側から見れば厳しいように見られがちだけどそれは相手を心配するあまり、過度に手取り足取りを自然としてしまうお節介な優しさ溢れる人だった。

私はそれを少しだけ鬱陶しくも、それでも絶対に邪険にはできなかった。それはそうやって愛されてきたから自分がいるということを十分に理解していたからだ。こうやって多くのことから守られてきたことを知っていたからだ。

今も昔も母のお漬物や煮浸しはパッと見て色がない。でも時間をかけてゆっくり向き合い作り出してきた物だということを、誰よりもそばで見てきた。だから母と離れて暮らすと決心した瞬間、急にその料理達を愛おしく思い、食べて見たら何よりも心に染みる、母のようだと思ったのだ。

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実家を出て約4年。料理もアレンジができるようになり、最近は大根おろしと生姜をたっぷり追加することにハマっている。一人で食べるアお浸しも、家族のことを思い浮かべれば何も寂しくはない。今度実家に帰った時、母に作って食べさせてあげようと思う。4年前よりもうまく作れるようになったと思うから。




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