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実は足りてないのは“IT人材”じゃない!

各所各社で、「IT人材、デジタル人材が採れない」という話が持ち上がっている。確かにそんな要素はあるけど、本質は違うのではないか?という疑念が生じてきたので、書いてみる。

企業の中途採用で、IT人材・デジタル人材が欲しい!っていったいどんなヒトのことだろうか。
GAFAとかと熾烈な開発競争へとシフトしてる自動車業界大手やデジタルプラットフォーマーとかなら、AIエンジニアなどの高度IT技術者が必要かもしれない。
しかし、IT系や基盤技術系ではない普通の大企業や中堅企業ではプライマリーの人材ニーズはそれではないだろう。
恐らくではあるが、ITが分かっていてIT組織の中心になれる人材。とか、ITサービスの立上げを仕切れる人材、しくみを考えて推進できる人材ということではないだろうか?

で、あるとすると、IT人材という言い方が、ちょっと誤解を生んでいる気がするのだ。IT人材というと、ITができる専門性の高い(深い)人材のイメージ。しかし、実は求められているのは、
①新しい技術・枠組み・知識に抵抗がなく、
②初めての分野や知識への学習意欲と学習能力が高く、
③色々な分野の専門家の言葉を理解して横断的にコミュニケーションできて、
④新しいサービスや変革を企画して前に進めるのが好き
⑤調整能力と意思決定力が強い

そんな人材……ということになる。

これって別にIT人材の特性じゃない。今の時代の普通に優れたビジネスマンの特性だ。マーケティング畑出身のヒトでも、編集畑出身のヒトでも、商品企画畑出身のヒトでも、クリエイターでも、こんなヒトは居ると思う。

筆者は日本の大企業を客先にして、オフショアのベトナムの開発拠点を使ってAIやクラウドツールを開発していたりする。そのプロセスの中で感じるのは、今の日本の大企業が直接優秀なベトナムの開発エンジニア集団に発注したら、何一つ良いサービス…そもそも動くサービスができないだろうな……ということだ。
それは大企業側に優秀なITエンジニアが居ないからじゃない。しくみを見抜く力だったり、合意形成力、ビジョン提示力、しつこく改善して何としても実現しようとする仕事への情熱が弱いからだ。そして、そもそもどっちに向かえば良いかを具体的に指し示せないからだ。

ではなぜ『IT人材が居ない』等の集中した言い方になっているかというと、僕は今の経営陣やミドルマネジメント層以上のある種のコンプレックスだと思っている。
『自分たちが持っていない何か特殊な知識』という言い方で逃げたいのだ。
本来は自分たちが上記の条件に当てはまらなければならないはずなのだが、自分たちはそのスキルやマインドセットを会得してこなかった。なので、特殊化して『ゼネラリストとは違う人種』と定義したいんじゃないだろうか?