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EC化率やCVR(購入率)が上がらない“根源理由”を追求してみる【第二回】

第一回では
購買行動とモノを買う際の消費者のマインドに言及して、ECが実店舗に対して負けている部分の概要に触れました。
一言で言ってしまうと、ECは決まったモノ(単品)を買う(お届けする)のには便利だが、生活体験や購買体験、提案力では負けている…という話です。
しかし具体的に何が負けているのか?どうしたらそこを獲得できるのか?について言及してみましょう。

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上図の左がスマホのEC画面、右がリアル店舗での視野てす。決定的な違いは、売場に立ったときのそのショップ、ブランドの品揃えの「一覧性」「俯瞰構成」てす。「遠くの商品と近くの商品が同時に視野に収まっている」これがリアル空間の売場の特性です。

そしてもう一つ、実店舗のメリットは各商品のゾーンに近付けば商品が自然にズームアップされて、最後は手に取って多面的なチェックが可能なことです。

これ、実空間と実在庫なんだから当たり前と思うかも知れませんが、それは違うのです。実店舗では、「VMD担当」と言う専門スタッフが、ターゲット(男女、子供含む)の目線の高さに合わせて、最も売場が一望できて、アイキャッチも適正配置されるように、陳列設計とHeightコントロール(壁面と島什器とディスプレイの高さ調整)を実施しています。スマホ画面と大きく差が開くのは、顧客の視野角を見据えた空間配置のコントロールによるものです。また、商品陳列の並び順も、最も美しく購買意欲を盛り上げるように設計しています。
そのお陰で、実店舗では以下のように、売場のエントランスから「主導線」を経由して「陳列什器」の前に吸い寄せられ、単品を手に取るまで滑らかであり、迷うことは有りません。スマホのメニュー表示を頭で認識して探すよりも、視覚的・直観的に売場の中を“掘ってゆく”ような買い方になります。

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実店舗の来店客の脳の中では、この過程で色々な情報が自然にインプットされて、ショップのイメージが形成されます。

この店にはどんなテーマのどんなアイテムで構成されていて、自分が好きなのは、どのユニット(品揃えの塊、品群)であるか?

単品を細かくチェックする前の段階で、品揃えの魅力がインプットされるのです。

これに対して、スマホのECの購入プロセスはだいたい以下の様になります。

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論理的な買い方であり、検索もできるので買いたいものが明確であれば便利でしょう。プロセスは一見似ています。
何が実店舗と違うかというと
①商品群を視覚的に眺められない・店の中を俯瞰できない
➁『なんとなく歩き回る』ことができない
ということです。前に進むために必ず能動的なタップを要求されます。
これはそのブランドやショップに欲しいものがあることが分かっている(品揃えを掴んでいる)顧客を重視した売場だと言えましょう。
以下、実店舗(右)とEC(左)を相対で比較してみましょう。

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ここで最初のタイトルに記述した『CVR(購入率)が上がらない』という表現の真意を語りましょう。

筆者の支援したあるEC店舗では、検索エンジンからの訪問が多くて、月間12万セッションもの流入がありました。しかし、そのサイトのリピーター比率はなんとたったの20%。検索ワードを打ち込んてやってきたユーザーの大部分が再訪問しない状況でした。

なぜそんなことになるかというと、初回訪問ユーザーに、単品だけは見せるものの本来の魅力的な品揃えをPushする導線がなかったからです。そもそもメニュー上のカテゴリー階層が、品揃え構造にマッチしていませんでした。商品一覧のサムネイル画像も、一貫性が弱くて並んだときの見え方が「魅力的な陳列」に見えませんでした。

お客は機械的な検索ワードから単品にランディングして、その単品がおメガネに叶わず、直ぐに離脱するという行動で終わっていたのです。
このECのコンバージョンレートは0.5%を切っていました。
(優良サイトはCVR=2%を超える)

コンバージョンレート(買上率)を上げるということは、ただ単にUXを改善して離脱を減らす……というよりも、その売場の良さをわかっている顧客のセッションを増やす、すなわち、自店に期待値を持ったお客をリピート訪問させることです。
したがって、一度来たユーザーが離脱するにしても、何らかの品揃えの魅力を刷り込んでから帰す必要が有ります。

ではECサイトでは実店舗に肉薄するような“ショップパワーの提案は望めないのでしょうか?そんなことはありません。次回は、ECであってもショップとしての魅力を強烈に伝えて、顧客を惹き付ける最新のチャレンジのEC事例を複数紹介します。