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【ハーブ天然ものがたり】月見草(加筆再掲)



神秘的な光を放つ花


日本で月見草とよばれる種は、アカバナ科マツヨイグサ属のハーブたち。
アメリカ大陸原産で、ネイティブアメリカンの歴史文献によく登場します。根も葉も茎も食用となり、それ以外にも蜂蜜で煮こんで鎮痛効果のあるシロップをつくったり、葉のパック剤を打撲や痔にあてたりと、民間薬草としてふるくから活用されてきました。

江戸から明治のころ日本にはいり、いまでは都会の道ばたから田舎の野っぱら、海岸沿いなどでもよくみかけるハーブとして帰化しています。

日本の国土に野草としていっとうなじんだのは雌待宵草めまつよいぐさ・学名 Oenothera biennis で、黄色い花を咲かせます。
月見草といえばこの花を想像する人もおおいのではないかと思います。

 私は、どてら着て山を歩きまはつて、月見草の種を両の手のひらに一ぱいとつて来て、それを茶店の背戸に播いてやつて、
「いいかい、これは僕の月見草だからね、来年また来て見るのだからね、ここへお洗濯の水なんか捨てちやいけないよ。」娘さんは、うなづいた。
 ことさらに、月見草を選んだわけは、富士には月見草がよく似合ふと、思ひ込んだ事情があつたからである。



「おや、月見草。」

 さう言つて、細い指でもつて、路傍の一箇所をゆびさした。さつと、バスは過ぎてゆき、私の目には、いま、ちらとひとめ見た黄金色の月見草の花ひとつ、花弁もあざやかに消えず残つた。

 三七七八米の富士の山と、立派に相対峙し、みぢんもゆるがず、なんと言ふのか、金剛力草とでも言ひたいくらゐ、けなげにすつくと立つてゐたあの月見草は、よかつた。
富士には、月見草がよく似合ふ。

「富嶽百景」太宰治-青空文庫


雌待宵草めまつよいぐさ(月見草)は英語表記で evening primeroseイブニング プリムリーズ
芳香のある透きとおった黄色い花は、夏のはじめから秋ころまで咲いています。

マツヨイグサ属には白、紫、ピンクの花を咲かせるものもあり、標準的には黄花を咲かせる系譜を和名で待宵草まつよいぐさと定め、白い花を月見草つきみそう、赤い花は夕化粧ゆうげしょうと区別していたそうですが、現代にはほとんどつたわっていません。

月見、待宵の名のとおり、夕方開花して朝には枯れてしまうのが特徴の月見草は、季節が進むごとに一日中ひらくようになりますが、イブニングプリムローズという名をもつだけあって、夏のあいだは夜だけ花ひらきます。

マツヨイグサ属の写真、ウィキからお借りします。

メマツヨイグサ(イブニング・プリムローズ)
コマツヨイグサ
ヒルザキツキミソウ
マツヨイグサ
ユウゲショウ


雌待宵草めまつよいぐさの種子から得られるオイルには、皮膚の健康に欠かせない γリノレン酸がふくまれることや、脂質を酸化からまもるビタミンEが豊富なため、近代の健康産業市場にとりあげられ、サプリメントも数おおく出まわるようになりました。

「ハーブの写真図鑑」レスリー・ブレムネス 日本ヴォーグ社


街なかの荒れ地や道ばたで、黄昏どきに開花する月見草は、せわしない都会の空気のなかで、そこだけ神秘的な光をはなち、幻想的な気配をただよわせます。

太陽が沈むのをまって、夕ぐれどきから開花する花は、日中の暑さをさけて夜に活動をはじめる虫たちに花粉を媒介してもらうために、月光のもとで花を咲かせるといいます。
月の光だけでは暗すぎて、花の色で虫たちをさそうことはできないので、つよい芳香をはなっておさそいします。

夜ひらく濃厚な花の香。

南国のエキゾチックな芳香空間をつくるジャスミンやイランイランしかり、香りには即座に空間を支配し、場の雰囲気を変化させる力があります。
南国では日がおちてから開花する植物がいくつかありますが、おなじ場所でも昼と夜とでは周囲にただよう匂いがガラリと変わるんだな、というのはバリ島を旅したときにおどろきとともに体験しました。
匂いが変わるとこれまたフシギなことに、おなじ景色でも別世界になってしまう印象がありました。


静謐でふかい場所


ちょっとした田舎にいくと、暗くなってから活動する虫や小動物、爬虫類などをよく見かけます。
田舎の虫はおおきくて、はじめはぎょっとしますが、と同時にふだんすっかり忘れている脳機能の一部分を刺激されます。
「ぎょっ」とするほどびっくりしないと、起動しない脳機能がある、ということでしょうか。

周囲が暗闇で、見えないけれどそこに在る、うごめく気配を感じることで、いつもはみえていない世界との接点を思いだすことができます。

夜に開花する花たちの濃厚な香りや草いきれが漂いはじめると、太陽のかがやきのなかでは決して聞こえることのない、いろんな生きものの声や、空気のうごく音が充満してきて、ふと知らない場所にきてしまったかのような、ここちよい孤独感にひたれるんだな、と感じています。

知らない場所に立っている感覚は、ここ(地球)ではないどこか、これ(自分のからだ)ではないナニモノカの、遠い記憶がざわりとうごめくトリガーになることがよくあり、ことばにならない郷愁のきもちに圧倒されて、われを忘れる(文字通りに)瞬間がおとずれることがよくあります。

一瞬つかみかけて、また記憶は朧になり、思いだせそうで、思いだせない。
静謐な暗闇のなかだけにあらわれるその刹那は、いまここに存在する自分のからだや思考の壁から解放される、起爆剤になることもあるんだなぁ、と。

夜開く花は夜行性の虫たちとともに生きる道をえらび、それゆえ濃厚な香りを身のうちにもつようになりました。
その香りはきっと、人にとっても静謐さやふかみのある高揚感をもたらし、いのちが誕生した瞬間の、純化された記憶がしまってある古代脳をゆすぶり、忘れてしまった記憶への道先案内をしてくれているのかもしれないな、と。


思考(人)・感情(哺乳動物)・本能(虫)


脳は三構造でできており、いちばん外側の大脳新皮質は最後に発達した部分です。
また最大に発達した部分でもありますから、最新の最大脳ってことで、どんなことも合理的にスパスパ処理するのが好きなんだと思います。

処理しきれないものがあったら、ノイズか雑音、無駄情報、誤情報、もしくは認識不可情報として自動的にカットしてしまいます。
生真面目一徹、遊び心のない通訳者って感じもしますが、現代社会の常識人としてサイバイブするときには助けられることもあります。

最新脳の奥にある大脳辺縁系は古い脳で、哺乳動物が本能的に生きて活動するための機能を司ります。

「からだの地図帳」講談社編

くるみのようなシワシワが大脳新皮質
まんなかに色付きで表示されているのが大脳辺縁系


大脳辺縁系は動物脳とも呼ばれ、たくましい生命力やバイタリティーのうけもちです。
海馬や偏桃体など、嗅覚と密接にかかわる機能もここにあります。

感情、情感、気合や気力、理屈だけではどうにもうごかしようのないことを発動させ、視床下部/下垂体もここにあるので、ホルモンバランスと免疫機能、神経系のバランスなど、心身にとって重要な三つ巴のヒーリングシステムをつかさどっています。

昭和のころはめずらしくなかった「浪花節だよ人生は!」という生きざまは、動物脳全開時代だったのかな、とも。
情に厚く、情にほだされやすく、なにもかも情一本で判断し、つなぎとめてしまうような御仁は、わたしの身内にも身のまわりにもたくさんいて、こどものころはそれが「ふつうの人間」のあり方なのだと感じていました。

さらにその奥にある虫脳と呼ばれる脳幹/脊髄系は、意志とは無関係にふるまう神経で、虫や爬虫類的な反射行動をうけもっています。
訓練によって反射は強化されるので、からだで覚える芸事や、くりかえしつづけることで無意識にクセになっているからだの使いかた、顔にでてしまう表情筋の収縮など、本能センターといえる場所です。

虫脳は純粋な命のはじまり、生命の根源的意識体とつながる扉がかくされた、秘密の場所なんだろうな、と考えることがあります。

現代社会で生きるためには、無駄情報としてカットしなければならないものはたくさんあります。
それは秘密情報として虫脳に蓄積される。
人類なりにがんばって順応してきたシステムがあるのだろうな、と。

都会の片すみでひっそりと、夜に開花する月見草をみつけると、どきりとして、ざわりとして、最終的にほんわかします。

夜行性の虫たちと共生する月見草には、虫脳を刺激するなにかがあり、目にしたとたん、秘密情報の閲覧が可能になるのを、最新最大脳が阻止してくるから、「どきり」とか「ざわり」とか、不安や恐怖心のようなものが浮上してくるのかな?なんて考えたりもします。

月見草オイルが健康や美容産業界で注目されるようになった昨今、月見草はとても身近に存在するハーブだよとお伝えしても、なかなかピンとこない方もいらして、逆にフシギだなぁと感じています。

日本に帰化した月見草は生命力たくましく、開花期がながいこともあって日本全国どこにいっても、あちこちの道端でよく見かけます。

もしかすると現代社会のサバイブを優先している最大最新脳にとっては、月見草は古の記憶につながってしまう、処理不可能な厄介情報のひとつなのかもしれません。
だから「見てるけど、見なかったことに」しているのかもしれないなぁ、と。

月見草/イブニングプリムローズは水はけのよい砂質土壌でよくそだち、開放的で日あたりのいい環境であれば干ばつに耐えることもできます。
根も葉も種子も食べたり飲んだり塗ったりと、人に役立つ効能をたくさんもっているハタラキモノ。
欧米では庭師のハムとかロバ草、ロバハーブなど、地道にはたらく存在たちの別名をもっているのもうなづけます。

当社製品、Shield72°しっとりホワイトクレンジングオイルは、鉱物油(ミネラルオイル)をいっさい使用せず、月見草油(エモリエント作用)のほかに植物・ハーブオイルだけを配合した、オーガニックアロマ100%の香りのスキンケアシリーズです。

ローズマリー、レモン、カモミールローマンのふんわりここちよい香りと、お肌に必要な成分をのこしつつ毛穴の汚れをさっぱり洗い流す、肌あたりやさしいつかい心地で、おかげさまをもちましてたいへんご好評いただいております。

左・クレンジングオイル、右・クレイパック洗顔

*当ブログで紹介している植物の一般的な性質は化粧品の効能を示したものではありません。

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お読みくださりありがとうございました。
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ハーブのちから、自然のめぐみ
ローズマリーから生まれたナチュラル・スキンケア
Shield72°公式ホームページ

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