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リアルすぎて引くって…ノンフィクションを超越するフィクション「女神の継承」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(482日目)

「女神の継承」(2021)
バンジョン・ピサンタナクーン監督

◆あらすじ
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タイ東北部の村で脈々と受け継がれてきた祈祷師一族美しき後継者を襲う不可解な現象の数々…
小さな村で暮らす若く美しい女性ミンが、原因不明の体調不良に見舞われ、まるで人格が変わったように凶暴な言動を繰り返す。途方に暮れた母親は、祈祷師である妹のニムに助けを求める。もしやミンは一族の新たな後継者として選ばれて憑依され、その影響でもがき苦しんでいるのではないかー。やがてニムはミンを救うために祈祷を行うが、彼女に取り憑いている何者かの正体は、ニムの想像をはるかに超えるほど強大な存在だった……。(公式より引用)
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公式サイト↓

私は今までに600〜700作くらいのホラー映画を見てきたのでそれなりに怖さに対する耐性はついているつもりでした。なもんでホラー映画を見る時は“怖いか怖くないか”というより“好みかどうか”や“どこが面白いか”に注目して視聴していました。

しかし今作はそのどれにも当てはまらないかもしれません…

◇ドキュメンタリー番組の撮影班がタイの東北部にある村の土着信仰や霊媒について取材をする

という設定なんですけど、原案とプロデュースが「哭声/コクソン」のナ・ホンジン氏なので見る前からすでにトラウマ確定の超絶濃厚な展開になることは予想できますが余裕でそれを超えてきます。

もちろん怖いし、見応えがありすぎるんですけどそれ以上にリアル過ぎるんですよね。

POV形式のモキュメンタリー映画なんですけど、もう完全にドキュメンタリーです。取材をしていただけなのに、気づいたらもう引き返せないところまで激ヤバ案件にどっぷり浸かっていた…

という感じでしょうか。
頼むからフィクションであってくれ!ってなります。

田舎の風景や森林の映像が差し込まれることでよりリアリティ度が増します。
晴れてないのがまた良いですね。

これの何が怖いかって、自然過ぎて我々視聴者もいつからヤバくなったのかに気づかないところかもしれません。

最初は「はいはい、そういう感じね」、「で、ミンがエラい目に遭って、それをニムが何とかすると」みたいな感じで悠長に構えていました。しかし、気づいた頃には近親相姦、自傷行為、挙げ句の果てにはミンが犬を生きたまま茹でて食ったりととんでもないことになっています。

『臨場感がすごい』ってこういう時に使う言葉なんだなと思いました。

エグすぎて引きました。

このジャケ写がこの作品の全てを物語っています。

とてつもないエグい描写に目が行きがちですが、そもそもの設定がしっかりしているので何でもない会話や展開にも惹きつけられます。

土着信仰、悪魔祓い、宗教、物語性のあるその土地の民間伝承、人間だけではなく自然界全てのものに魂があるというイーサーン地方のシャーマニズム等

そのひとつひとつの要素がめちゃくちゃ濃いし、それらがタイの片田舎の独自の文化と絶妙にマッチしています。だからこそクライマックスの壮絶な儀式のシーンは手に汗握るし、目が離せなくなります。

あのデカい牛はもしかしてと思っていたら案の定生贄になってました。
儀式のシーンって具体的に何がどうなってるのはまったくわかりませんが、そこがまた良いですよね。

そして物語のストーリー性を出すために足した“先祖の業”や“呪い”というものが上記の要素と相性がとても良かったです。

祈祷師のニム
ぱっと見は本当に普通のおばちゃんです。
華がないただのおばちゃんっぽいニムだからこそ儀式や祈祷のシーンがリアルに見えます。

『先祖の行いは子孫へ呪いとして返ってくる』

『全ての悪はどんな形であれ必ず現れる』

これは宗教だとか信仰とか関係なしに本当にそうなのではないかと思えてきました。

なぜかは分かりませんが不安を煽られます。

久々にえげつない作品を見てしまいました。
少々長いですし(約130分)、気軽には勧めづらい内容ではありますが見て損はないと思います。

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もしよかったら覗いてやってください。

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