マークの大冒険 フランス革命編 | もうひとつのフランス史 フェルセンとの共闘
1793年、ブリュッセル___。
「フェルセン様、お客様です」
フェルセンに仕える家臣が、お辞儀をしながらそう告げた。
「どちら様だい?」
「それが存じ上げず。ボクはかつての戦友だとか何とか申し上げておりまして。フランスから、マリー=アントワネット様の件で面会したいとのことで」
「王妃の件で?それは確かなのか?」
「はい」
「分かった。通してくれ」
フェルセンは、困惑と疑問が入り混じった複雑な表情を浮かべていた。だが、その案件に興味を惹かれ、客人を書斎に通すことを許可する。家臣によってフェルセンの書斎の扉が開かれた。
「マークなのか?」
「やあ、フェルセン」
「友よ、アメリカ独立戦争以来だな」
「あの日、キミが勝利を目前に突然失踪して。それで、てっきり......その......」
「戦死したかと思ったかい?」
「ああ、回収できなかった遺骸も多かったと聞いた」
「まさか、不死身のマーク様だぜ?たとえ東の風が吹こうとも、ボクの冒険は終わらない」
「とても懐かしい響きだ。口癖だったな。それで、キミが言っていたアメリカ大陸でのお宝ってやつは見つかったのかい?」
「フェルセン、久しぶりの再会で話したいことは山ほどあるが、王妃の件が急ぎだ。すぐに動かないと、全てが手遅れとなる」
「ああ、分かってる」
「キミも周知の通り、マリー=アントワネットが危険な状態にある。このままだと、おそらく形だけの裁判でロベスピエールら山岳派によって死刑宣告が下される。証拠不十分であっても、彼らは高等法院を牛耳って死刑判決を出すだろう」
「だが、彼女がいるタンプル塔にどうやって忍び込む?私も何度も救出計画を試みてはみたものの、見張りが多過ぎてやはり突破は不可能だ。そもそもヴァレンヌ逃亡事件が私の最大の過ちだった。本当に後悔している。あそこで判断さえ誤まらなければ、彼女は祖国のオーストリアで安寧を手にしていたはずなのに」
「起こってしまったことは仕方ないさ。キミは最善尽くしたのだろう?今は彼女をどう救出するか、それを一緒に考えて行動しよう。ボクは生前のルイから、彼女と子どもたちの救出を頼まれた。危険な救出作戦になるが、友との約束は必ず果たすつもりでいる」
「マーク、キミはアメリカ独立戦争の時から何も変わってないな。あの戦争では多くの仲間を失ったが、十三植民地の解放と独立は、ラファイエット将軍とワシントン、ハミルトン、そしてキミの功績が大きい。キミだけ今も表彰されていないのは、何だか不甲斐ない」
「あの時は、辞退したんだ。ボクは栄光や名誉には、あまり興味がない。人間にとって本当に大切なことは、そんなことではないと思うんだ。それよりも、友との約束を最後まで貫くような義理と人情、それこそが、ボクが求めるあるべき姿だから」
「やっぱりマークだな。本当に変わってない。あの時、私はマリー=アントワネットのことを忘れるために独立戦争に志願したんだ。戦争に明け暮れることで、手に入らない彼女のことを少しでも忘れたかった。どうして、私は国王の妃を愛してしまったのだろう......」
「そうか。それは辛い心境だったと思う。だが、断頭台に上る直前にルイは言っていた。マリー=アントワネットに対して何も不満はない。そして、フェルセン、キミとのことも自由にしていいと。キミら二人は、もう自由なんだ。負い目を感じる必要はない。タンプル塔からの脱出に成功したら、彼女の祖国オーストリアかキミの故郷スウェーデンに亡命して、ひっそり二人で暮らしたら良い」
「それは本当なのか?」
「ああ、もちろんだ。それがルイの遺言だ。まだ諦めちゃいけない」
「マーク、ありがとう。必ず成功させよう」
「もちろんだ。準備ができたら、パリに向かおう。残された時間は少ない」
「分かった。すぐに用意させる」
「それと、話は変わるんだが、キミの国のスウェーデンのコインが今手持ちであったら、少し分けて貰えないか?」
「はい?」
ボクは、神をも欺く。
眠るウェスタに悟られないように。
完璧な方法で王妃を救出し、歴史を変えてみせる。
To Be Continued...
Shelk 🦋
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