ひつじ

文章を書く人です。根が暗いのであんまり明るいお話は書きません。寝言みたいなもんです。音楽が好きです。

ひつじ

文章を書く人です。根が暗いのであんまり明るいお話は書きません。寝言みたいなもんです。音楽が好きです。

    マガジン

    • 知らない人

      長編の「知らない人」というお話を連載しています。

    • 世界に色がつくとき

      • 9本

      藤野ゆくえとひつじによるリレー小説です。どうなるかわかりません。

    • 【不定期連載】給湯器ちゃんと私

      気難しい給湯器ちゃんと私の攻防を不定期に書き付けていきます。

      • 知らない人

      • 世界に色がつくとき

        • 9本
      • 【不定期連載】給湯器ちゃんと私

    最近の記事

    固定された記事

    【固定記事】短編集の通販について

    固定用の記事です。 私は実は今年、縁あってキノコファクトリーさん(Twitter:@kinoco_factory)の展示「遊星歯車機構」に参加させていただいていまして、短編集を作って置かせていただきました。 なにしろだいぶ前になったようなならないようなでして、もうお手に取ってくださった方もありがたいことにいらっしゃいますが、このたびキノコファクトリーさんのシェアアトリエ&ギャラリー「キノコファクトリーのねじろ」にて短編集を図書スペースに置かせていただく運びとなりました。

      • 知らない人 5

        22歳の大晦日は、一人ではない。その事実だけで、一年の最後の最後まで働かなければいけない現実も乗り越えることができた。いつにも増して鬼のようなスピードで、しかし鬼の形相になってはいけないレジ打ちから解放され、私服に着替えてただの人に戻った私の心は、重く疲弊する身体に反してふわふわと軽かった。 18歳までの大晦日は、祖母と二人だった。19歳の大晦日も、朝からこの家に帰ってきて祖母と過ごした。20歳の大晦日は、当時の職場の仲間に誘われた飲み会に出て、賑やかに過ごした。21歳の大晦

        • 世界に色がつくとき #9

          映画の撮影の続きを約束した日の前の晩。日付ももうすぐ変わろうとする時間帯のことだった。私はせっかくの撮影の日を寝不足で迎えてはいけないと、早めにベッドへ潜り込んでいた。睡魔にほとんど意識を持っていかれかけていたその時、スマートフォンが鳴った。 「ありゃ」 自分の口から、自覚している以上に寝ぼけた声が出た。眠りに落ちかかった意識の中でスマートフォンを操作したせいで、かかってきた電話を間違えて切ってしまったのだ。のろのろと身体を起こして自分の頬を両手で軽く叩き、改めてスマートフォ

          • 世界に色がつくとき #7

            季節は駆け足だ。衣替えもとうに済んで、私をはじめ同じ高校の女子生徒は半袖のセーラー服、男子生徒も半袖のワイシャツだ。ここ最近の気温の上がり具合は急激で、初夏を通り越して夏のさなかにいるような感覚に陥る。自転車で学校へ向かっていると、風が私の少し伸びた髪を後ろへと流していく。前髪に絡む風が額の汗を乾かしてくれるのがありがたい。 駐輪場に自転車を停めて、朝からさんさんと照りつける太陽の下を歩いて校舎へ向かう。夏の空はコントラストがはっきりしていて、透明度の高い青空と混じり気のない

            スキ
            3

          マガジン

          マガジンをすべて見る すべて見る
          • 知らない人

            • 5本

            長編の「知らない人」というお話を連載しています。

          • 世界に色がつくとき

            • 9本

            藤野ゆくえとひつじによるリレー小説です。どうなるかわかりません。

          • 【不定期連載】給湯器ちゃんと私

            • 4本

            気難しい給湯器ちゃんと私の攻防を不定期に書き付けていきます。

          • 知らない人

            • 5本

            長編の「知らない人」というお話を連載しています。

          • 世界に色がつくとき

            • 9本

            藤野ゆくえとひつじによるリレー小説です。どうなるかわかりません。

          • 【不定期連載】給湯器ちゃんと私

            • 4本

            気難しい給湯器ちゃんと私の攻防を不定期に書き付けていきます。

          記事

          記事をすべて見る すべて見る
            • 【不定期連載】給湯器ちゃんと私#3

              6月29日、水曜日。雨。夕方まで蒸し暑かったが夜は寒い。 北海道も初夏と言っていい季節。このごろは、水を使う場面であえて給湯器ちゃんにお湯をねだる必要もないような気候だ。むしろ、冷たい水の方がひんやり気持ちいい。人間はわがままな生き物である。ただし、入浴時だけは別だ。いくら暑い季節とはいえ、私も人間だから冷水でシャワーを浴びて平気ではいられない。給湯器ちゃんにはどうにか頑張ってもらいたいところである。 ところで、先日夫の実家を訪ねた時、ちらりと給湯器ちゃんの不調の話になっ

              スキ
              1
              • 蝦夷梅雨の夜

                六月の頭。北海道はリラ冷えの真っただ中。その上昨日からのすっきりしない雨天で、せっかく長い冬が明けたというのにまだ長袖の出番だ。ただ、朝晩に暖房を焚かなくなったのはさすが六月といったところだ。 今日は朝から雨が降り続いて、昨日乾かさらなかった洗濯物と今日の洗濯物が物干しにびっしりと並んでいる。いい加減除湿器でも買わないダメなんでないか、と思ったが、去年も同じことを思っているうちに夏がやってきたような気がする。 「ただいまー。ひえー、びっしょびしょ」 日も落ちかかった頃、同居し

                スキ
                6
                • 世界に色がつくとき #5

                  特になんの用事もない日曜日を挟んで、月曜日。朝から雲ひとつない快晴だった。いつものように自転車で学校へ向かう。せっかくこんなに晴れているのに、高くまで澄み渡っているであろう青空もモノクロになってしまうのが少し寂しい。 「彩、おはよ」 「おはよ」 教室に入るなり、扉のすぐそばの席に座っている友人の前田乃梨子に声をかけられる。新学期最初の席替え以来毎日のことで、もはや驚かない。乃梨子は写真部に所属していて、授業中と食事中以外はいつ見てもカメラをいじっている。それなのに、登校

                  スキ
                  2
                  • 世界に色がつくとき #3

                    いろいろなことをぐるぐると一生懸命考えていたつもりだったが、約束の時間はあっという間に迫っていた。今日は晴れていたから、駅前まではバスを使わずに自転車でやってきた。駐輪場に自転車を停めて、この駅前で待ち合わせをする時の定番である少女の像の前に立った。スマートフォンに表示された時刻は十三時半を過ぎたところだ。 「ちょっと早かったな」 独り言を口の中で転がした。約束よりも三十分近く早いこの時間に、加川の姿は当然まだない。暇を持て余して、特に意味もなく少女像を眺めてみる。何を表して

                    スキ
                    4
                    • 【不定期連載】給湯器ちゃんと私#2

                      6月11日、土曜日。曇りのち雨。ちょいひんやり。 ここ数日、給湯器ちゃんはなんだかご機嫌だった。朝一番でコンタクトを装着する段階からいい感じのお湯をくれるし、食器洗いでも気を利かせていい感じのお湯をくれる。なんといっても、入浴の段階で最初からお湯をくれる日が続いていた。だから、私はすっかり油断してしまっていた。 5月の下旬に左目の手術を受けて以降、目に石鹸やシャンプーが入ってはいけないため洗顔も入浴もドキドキで、給湯器ちゃんのご機嫌を窺っている心の余裕が私にはなかった。特

                      スキ
                      2
                      • 世界に色がつくとき #1

                        「スイッチが入る時」というのが、私にはある。 帰りのホームルームを終えるやいなや、高校から自転車で十数分の距離にある自宅へ真っ直ぐ帰る。ペダルに力を込めて、住宅街、国道、古びた商店街をすり抜けていく。スイッチが入っていない私に、それらの景色は何を訴えてくることもない。何に心を動かすこともないまま家に到着して、手洗いや着替えを済ませて、自室の机の上に置いてあるヘッドホンを手に取る。そして、両耳にそのヘッドホンをそっと装着すると、私のスイッチが瞬時にオンに切り替わる。 洪水のよう

                        スキ
                        8
                        • カーテンの向こう

                          またやってしまった。それも、今回はとびっきり悪い。 私は小さな頃から呼吸器が弱く、頻繁に風邪をひいてはこじらせていた。学校も、どんなに身体に気を付けていても年に一度は必ず欠席してしまう。そんな中でも、中学三年生になった今年は珍しく無欠席を続けていて、やっと人並みの健康体に近づけたかと思いかけていた。 それなのに、九月に入ってぐっと涼しくなった気候にやられて、またしても風邪をひいてしまった。しかも悪いことに、ここまで伸ばした無欠席の記録を途絶えさせてしまうのを惜しく思うあま

                          スキ
                          4
                          • 【不定期連載】給湯器ちゃんと私#1

                            5月22日、日曜日。曇り、一時雨。ちょい寒め。 今日の給湯器ちゃんの機嫌はいつも通りだった。朝一のコンタクトレンズの水洗いに始まり、食事の支度は水を使いたいからいいが、食べ終わった後の食器を洗う時まで、基本的に一貫してお湯は出してくれない。春になって水が温かくなってきたから、最近はお湯のつもりで出している水が冷たくてもいちいち気にしていない。ただ、歯磨きの時は給湯器ちゃんに譲歩を求めて、ぬるま湯でうがいをさせてもらっている。反抗期を迎えている右下の親不知ちゃんを無駄に刺激し

                            スキ
                            6
                            • 【不定期連載】給湯器ちゃんと私#0 まえがき

                              ひょんなことから20年ほど住んだ実家を離れ、現在の自宅に越してきて、だいたい7ヶ月が経った。北海道の内陸部に位置する片田舎の、駅近だけど何もない側。築30年くらい、鉄筋ブロック造、2LDKのアパートの2階。一戸建ての実家以外には父親の会社の社宅住まいしか経験していない私には初めてのことだらけの7ヶ月だったように思う。なんとか無事に冬を越せてなによりである。 実家とは何かと勝手の違うアパート暮らし。慣れない生活ながらも、基本的にあまり細かいことは気にしない性格のため、だいたい

                              スキ
                              8
                              • 曇り模様の、愛しき日々

                                最近、歩道橋の夢を毎日見る。徒歩で高校に行った時に通る、なんの変哲もない歩道橋。それも、夢といっても目を覚ます直前の短い時間でインサートのように断片的に浮かぶだけの、夢とも言えないような短いものだ。ただそれだけだからなんと言うこともないが、毎日寝起きに歩道橋の光景が差し込まれるから、少し気になってしまう。 そんな夢を見るようになってから、なんだか私の人生はうまくいかない。いや、うまくいかなくなってから夢を見るようになったのか。どちらだったか思い出せないが、どちらでもいい。と

                                スキ
                                9
                                • 今日も雨

                                  そうだ、あの日も雨だった。 私が三年間通った中学校は、私の卒業と同時に閉校となった。集落にたった一人の中学生だった私。寂しいというよりは、最後の一人の私を卒業させるまで、よくぞ中学校が存続してくれたという気持ちだ。 今の私は、そこらによくいる普通の大学生として都会の喧騒の中をゆらゆらと漂うように生きている。あの集落にはもう帰らないのだろうな、となんとなく思っていた。つい先週までは。 ファストフード店でのアルバイトを終え、時刻は夜の八時。一人暮らしのアパートまでは、地下鉄

                                  スキ
                                  10
                                  • 年が明ける

                                    大晦日の夜、アパートには私ともう一人。幼稚園から高校まで同じだった幼馴染の明美だ。小学校の高学年の時に同じクラスだったのを最後に、高校卒業まで同じクラスにはならなかったが、同じ部活に入っていて、実家が隣同士であるおかげで、ずいぶんと長い時間を一緒に過ごした。私も明美も同じ国立大学を受験したが、彼女は前期試験で合格し、私は後期試験でも落ちた。「申し訳ないが、私立に行かせたり浪人させたりするお金はない。諦めてくれ」と両親に言われてしまった私は、慌てて就職先を探し、同じ高校の就職組

                                    スキ
                                    10