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ママは空を飛びたかったの #子どもに伝える私の”初めての”仕事 【企画参加】

この企画に参加したいと思ったきっかけは真面目なbutterさんのGSのお話です。同じフィールド出身で読んでいてすごく面白かったです。この企画に辿りつかせてくださった真面目なbutterさん、ありがとうございます。

↓彼女の記事はこちらから。

↓募集企画はこちら。 とっても面白い企画だなぁ。




未来の私の子どもたちへ

ママが人生で初めてした仕事の話をしよう。
あなた達は今、どの道に進むべきか分からない、本当にこの道を選んで良いのか分からない、そう思っているかもしれない。
少しでもママの話を読んで何かの刺激になれば嬉しいな。

*



ママは学校を卒業した後、東南アジアの暑い国に引っ越したの。
憧れていた仕事がどうしてもしたくて、日本を離れる決意をしたんだよ。

あと、空を飛びたくてね。
別に鳥になりたかったとかそんなんじゃなくて。
高度36000フィートに浮かぶ飛行機の中で仕事がしたかったの。

ママはずっとキャビンアテンダントという仕事に憧れていたんだ。
本当に自分がなれるなんて思ってなかったし、あなた達のおばあちゃんもママが飛行機の中で働くなんて思ってもみなかったそうよ。
だから仕事が決まったときには泣くほど嬉しかったの。

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キャビンアテンダントになってね、ママは色んな国や地域に行くことが出来たんだよ。
ある日はオーストラリアに、ある日はインドに、ある日はハワイに。
1か月の内に何か国行ったか分からないほどだった。
ママはこの生活が本当に大好きだった。
何もかもが新鮮で楽しかった。ママは旅が大好きなの。

だけど、早起きや一晩中起きていることが苦手でね。
朝早いフライトの前の日はいつもアラームを1分単位でセットして寝ていたの。遅刻すると飛行機が飛ばせないからね。
あと、深夜のフライトになると、どうしても目を開けていられなくてね。
寝てしまいそうな時はずっと飛行機の中を歩きまわっていた。
目を真っ赤にしながらね。

***


ママはね英語と日本語でお客さんと話するのも好きだったな。
飛行機には世界中から来たお客さんが乗っていてね、彼らのパスポートを見るのが密かな楽しみだったんだよ。
「フランスから来たんだ」「ブラジルの方なのね」「日本人だから日本語で接客しよう」みたいに、お客さんのことを少し知っておくの。そうすると、話すときに何語で話せばいいのか分かるでしょ。

実はママは日本にいるときは語学が得意だって思っていたの。
でも世界に出ると全くの勘違いだったと気が付いたんだよね。
英語が話せるのは当たり前で、その他に数か国語話せるのも当たり前だった。
あの時は悔しかったなぁ。
もっと語学を勉強したいと思って中国語のテキストブックを買ったけど、ステイ先のホテルに忘れてきて以来、勉強してないや。ダメだね。

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キャビンアテンダントは旅して飛行機でお客さんと話すだけではないの。
保安要員としても必要な存在なんだよ。
緊急着陸するときや機内でお客さんが病気になったときに対応するのも仕事。

ある日、台湾に緊急着陸したときはかなり不安だったよ。
飛行機はグラグラ揺れるしお客さんは叫ぶしで、ママだって怖かった。
だけど怖がっているところは見せないの。絶対に安全に着陸出来るようにパイロットや同僚とどうしたら良いのか話し合う。
結局、無事に台湾に着陸出来たからママは今ここにいるんだけどね。

あと、ハワイへ向かう機内で唇が真っ青なお客さんが泡を吹きながらママの目の前で倒れたときには本当に怖かった。
すぐに同僚を呼んで一緒に対処したんだけどね。
あのときは本当にお客さんが最悪の状況になったらどうしようと何度も思ったよ。
当時のパーサーから「不安になるのは勉強が足りないから。もっと緊急時の対処対応の仕方を学びなさい」と怒られたの。
今でもよく覚えている。

*****


キャビンアテンダントはね毎年、試験を受けないといけないの。飛行機で働くための免許を更新するためなんだけどね。

ママは毎年、その試験が嫌でイヤでね。
分厚いマニュアルを開いて目を通すんだけど、本当に勉強がイヤだった。
イヤイヤ言ってても試験の日は来るんだから、仕方なく毎日睡眠時間を削って机に向かっていたなぁ。
ページを捲るたびに新しいことや忘れていたことが出てきて本当に焦っていたよ。
でもあなた達も分かるはず。結局はなんとかして乗り越えれるってこと。

試験が終わるといつもありえないぐらい心も身体も軽かったなぁ。
試験終わりに同期とよく乾杯しに行ってた。

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飛行機に乗るとアナウンスが聞こえるでしょ?
ママは日本語のアナウンスを任されていたんだよ。
簡単そうに見えるけど、ママには難しかったなぁ。
ただ、書かれていることを読むだけなのに、なんでこんなに緊張しちゃうんだろうっていつも思ってた。
沢山の人に聞かれると思うと、そりゃ声も震えちゃうよね。

日本人の先輩と一緒に乗務するのフライトの日は、とってもアナウンスするのが嫌だったんだ。
ママには関西のアクセントがあるからね。
標準語で話すのが慣れないし、先輩に注意されるのが怖くて、初めは家でひとり練習したりもしたっけ。

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あなた達は仕事で旅行に行けてママはラッキーだねって思うかもしれない。

でもね、キャビンアテンダントは世界中を旅し、人と話すだけではない。
厳しい試験のための勉強や1人前の保安要員になれるよう訓練することも仕事なんだよ。

勉強や訓練がどれだけ辛くてもしんどくても乗り越えられたよ。

だって、これがママが一番したかったこと。
外国で生活をし日本の外を見てみること。
それが出来る環境を選べて良かった。

少しでもママの初めての仕事を知ってくれたかな。
キャビンアテンダントの仕事は本当に素晴らしい経験だったよ。

あなた達にも将来そう思える進路をどうか歩んで欲しいな。

                         ママより


あとがき


私は新卒で外資系のキャビンアテンダントになる夢を叶えました。

夢の仕事に就くことは楽しいことだけではなく、むしろ苦しいことの方が多かった気がします。

だけど、それでもキャビンアテンダントになれて良かったと思うのは、
自分の一番やりたいこと、好きなことを仕事に出来たから。

学生時代の私に、努力すれば夢は叶うと経験を通して学ばせてくれた。
私の初めての仕事がキャビンアテンダントで良かったと心から思うのです。

空を離れ数年が経ち、記憶もだんだん薄れて来たときに、このような企画に出会えて本当に良かったです。
昔の記憶をちょっとずつ棚卸する作業は、今の私には必要だったのかもしれません。

繰り返しになりますが、真面目なbutterさん、メディアパルさん、本当に本当にありがとうございます。

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