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四つを打ち、ロックで踊るということ~2022.02.15 Base Ball Bear × the telephones@ Zepp Nagoya

2年の延期を経て再開催されたBase Ball Bearの対バンツアー「LIVE IN LIVE〜I HUB YOU (Take) 2〜」。名古屋公演はかつてのレーベルメイトであり、同年代のthe telephonesとの対バン。"速い四つ打ち"をキャッチーで爽快感ある楽曲に導入してゼロ年代フェスの成長期の中心にいたベボベ、"速い四つ打ち"をハードでパワフルな楽曲に取り込んでテン年代フェスの黎明期に多大な影響をもたらしたテレフォンズ。言うなればブームの前から踊れるロックを志してきたオリジネーターたる2組の共演はあまりにも意義深く、感慨深い。個人的にこの2組を連続して観るのが広島MUSIC CUBE12以来10年ぶりだ。



先攻はthe telephones。2019年に活動を本格的に再開してからコロナ禍も精力的にライブハウスを沸かせ続けている現役っぷりは1曲目の「Monkey Discoooooo」からビシビシ感じ取れる。揉みくちゃになることも一興だったテレフォンズだが、座席と観客同士の空間が保たれた会場でこそ思うままに踊るという本来の魅力を味わえるように思う。続く「A.B.C.DISCO」の乱反射する多幸感、「Don't Stop The Move,Keep On Dancing」での岡本伸明(Syn)がベースボールベアーにちなんでボールを投げるそぶりをし、こちらがバットを振るポーズで返す謎のくだりなど、相変わらずの楽しさが充満してくる。

活動再開後は新曲リリースも活発。「Yellow Panda」は高揚感たっぷりのエレクトロポップで、会場限定販売中の「Get Stupid」は太いシンセのフレーズが煌めくニューウェイブ。かつて以上に、ジャンル的な意味でのDISCOを独自に解釈し続けているのがよく分かる。一方で、テン年代のフロアを熱狂させてきた「Baby,Baby,Baby」のような前のめりなダンスチューンや、腰にクるベースラインと縦のビートが交差する妖艶な「electric girl」など、多彩なリズムワークでこちらを踊らせてくる。どんな瞬間もひたすらに多様な四つ打ちが持つ可能性とダンス快楽を追求してきたバンドの本領発揮だった。

石毛輝(Vo/Gt)がベボベ小出祐介(Vo/Gt)と出会いを曖昧な記憶で語る中でステージ上にギターとアンプがセッティングされた後、小出が登場。2人が出会ったのがVer21.1(telephones、サカナクション、OGRE YOU ASSHOLEで廻っていたツアー)の公演できっと山口一郎が招待したんだろうな、とかお互い感じがあまりよくなったというのも当時の2人の雰囲気から何となく分かるなぁとか、リスナーとしても懐かしいエピソードが語られる。2組を知ったのも時間差だったし、陰と陽という感じで混じり合うイメージがなかった分、こうして交友を深めていたのは改めて驚きだったし、知らない記憶が補完された。

そして小出が印象的なイントロを掻き弾いて始まったのは「urban disco」!岡本伸明の珍妙な動きに戸惑い微笑みながらギタリストに徹する姿、そしてテレフォンズの中でも最も理解を越えた所にある歌詞<I am DISCO!>を口ずさむ小出の姿は新鮮かつとてもクールだった。3,4日練習しまくり、この瞬間に初めて合わせたとこの後のMCで語っていたが、そうは思えない程にリズムがビシッと定まった素晴らしいセッションだった。その熱気を引き連れ、シメの定番「Love&Disco」がもうほとんど大団円のムードを演出してエンド。テン年代のフェスを席巻したアンセムと新曲群が見事溶け合った50分。




15分の転換を経て、Base Ball Bearが登場。オープナーとして「17才」を選び、すぐさまベボベの空気へと仕上げていく。2曲目「DIARY KEY」はアルバムツアーの中で聴いた時はシリアスさの方が強く印象づいたが、その位置付けを解体して聴くとその突き抜けるアッパーさで身体を動かしてくる。今年初ライブとは思えない程、演奏はビタリと合いまくっている。MCでは、小出がテレフォンズのライブを観て、ギターも弾いた結果「明るいっていいな」という感想に至ったという。あの関根史織(Ba)も「陰キャとかもうダサい」とまで言ってのけた。小出曰く、ディスコとは全てを肯定する言葉。強い。

そんな中、デビュー時からずっと明るい堀之内大介(Dr)のカウントから「ポラリス」を投下、その後久々の演奏となる「不思議な夜」がロマンチックに降り注いでゆく。2015年、the telephonesが活動休止を選んだ時期にリリースされたベボベの『C2』は意識的に四つ打ちと横ノリのグルーヴを選んでバンドを新たなフェイズの引き上げた1作だった。そこに収録されていた「不思議な夜」をテレフォンズのライブと並べて聴くとベボベ流のディスコティックなロックの解釈としてしっくり来る。四つ打ちを基軸としながら絶えず発展を続けようとした2組の交差点のように聴こえ、この選曲はグッときた。

「short hair」が瑞々しく響いた時間は踊り続けたこの公演の一服の清涼剤となった。ワンマンではないベボベを観るのは久々だったが、やはりセトリの構築力はズバ抜けている。昨年のワンマンツアーでは2曲目だった「プールサイダー」も中盤ブロックのピークポイントとして躍動していた。そして二度目のMCへ。2016年2月、急転直下で3ピースとなったベボベがサポートギターを石毛輝に頼んだ際の感謝を小出が述べる。7、8曲を2日間のリハまでに合わせてくれたことに加えライブ終了間際に石毛から「ありがとう」と告げられたというエピソードは彼の人柄が滲み出ているようで胸が熱くなった。

そういう姿勢で音楽に向き合う姿に感銘を受け、自分もまたそうせねばと思ったと語る小出。これほど深くまで影響を与えていたとは驚きだが確かに3ピースになってからの彼の物腰やスタンスには明らかに変化があったように思える。天を仰ぎながら「バンドやっててよかった〜」と言った後、ギターを鳴らし始めた「Tabibito In The Dark」は素晴らしかった。震災、祖父の死を経て音楽の意義を暗闇で自らに問い続ける1曲は、コロナ禍という逆境とテレフォンズと共演することで再確認したバンドをやる喜びを搭載し、また一段階上のエネルギーを放射していたように思う。間違いなくハイライトだ。

ここからライブは終盤を迎える。「十字架You and I 」は濃厚なファンクグルーヴと骨太な出音が大迫力だった。この曲はいつどこで配信でも生でも3ピースであるという事実がバグる、怖い1曲。そして一息つき、マイクを手に持った小出が韻を踏み始めて「The Cut」だ。関根と向き合いながら手振りもしながらラップを刻む姿は今まで観たことがない。テレフォンズに感化され、明らかに普段よりも明るいし演奏に攻撃力が乗っていた。選曲もここ数年のライブで育てあげてきた必殺のカードのみが揃えられている。対バン相手を迎えるべくして構築された隙のないセトリとパフォーマンスは鉄壁そのもの。

「ドラマチック」で本編を締めた後、アンコールでは石毛輝が約6年ぶりにベボベのサポートギターとして参加。演奏されたのは「changes」だった。彼が最後に参加した日比谷野外音楽堂のライブは製品化されており観たことはあったが、生で観るとその躍動的なプレイはこちらをやはり明るい気持ちにさせてくれる。弓木英梨乃参加ツアー以降、4人のベボベ を観るのも久々だったし、その上で聴く<変わったのは僕自身だ>というフレーズはここ数年の小出祐介およびベボベを象徴しているような気がして、特別さを感じてしまう。常に重要な1曲だが、ここにテレフォンズと新しい意味を刻みつけた。

ラストはこちらも定番の「祭りのあと」が体力を絞り取って終演。ロックで踊ること、その喜びを存分味わうことのできる対バンライブだった。ベボベが始め、テレフォンズが発展させた“速い四つ打ち”は瞬く間にテン年代のフェスを席巻することになった。2組はその波に大きく乗ることはせず、むしろ逆行を選びながら自分たちの美学として四つ打ちを愛し続けた。そのブレなさこそが、活動休止とメンバー脱退、それぞれの苦難を経てもなおバンドを続けた基盤なのだろう。10年前と比べて僕も様々な音楽を聴くようになったと思うが、この2組の前では無邪気に踊ることを止められない。受験生の頃にライブハウスでバンドを観ることに憧れた日を思い出し、懐かしくなると同時に、ずっと最前線にいてくれる頼もしさで胸いっぱいになる夜だった。



<setlist>
the telephones
1. Monkey Discooooooo
2.A.B.C.DISCO
3.Don’t Stop The Move,Keep On Dancing
4.Yellow Panda
5.Baby,Baby,Baby
6.electric girl
7.Get Stupid
8.urban disco(with 小出祐介)
9.Love&Disco

Base Ball Bear
1.17才
2.DIARY KEY
3.ポラリス
4.不思議な夜
5.short hair
6.プールサイダー
7.Tabibito In The Dark
8.十字架You and I
9.The Cut
10.ドラマチック
-encore-
11.changes(with 石毛輝)
12.祭りのあと


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