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2020.08.16 私立恵比寿中学オンライン学芸会〜all of our playlist〜

私立恵比寿中学、初のオンライン学芸会。春ツアーの中止を受け、ツアーコンセプトに即したセットリストを披露。昨年末の6thアルバム『playlist』の多彩な楽曲に寄り添うように過去曲もチョイスされた良い塩梅の構成で、相変わらずエビ中はその辺の需要と供給、定番と驚きの配合を分かってる!

石崎ひゅーい提供の「ジャンプ」の猛々しいサビをアカペラで合わせる形で始まった本公演。真っ黒な衣装に身を包み、凛々しい表情の6人。やついフェスでの復帰はあったものの、このライブは安本彩花復帰後の初ロングセット。彼女の<今だ!>の咆哮で絶頂へと向かうこの曲を1曲目に据えた意義は大きい。1曲目の切迫感から一転、「響」でようやくメンバーにも笑顔が見える。ぴかぴかの電飾が彩るステージはさながら豪華なTVショウのスタジオのよう。煌びやかな高揚感をもたらした後、エッジーで清廉な「春の嵐」が投下。感情を一瞬も同じ場所に置かせてくれない、エビ中らしい怒涛のライブ展開。進化の止まらないパフォーマンスと連動し、ひと時も目が離せない。

ポルカドットスティングレイによる「SHAKE!SHAKE!」の軽快なカッティングの中で小林歌穂のソフトな歌声が弾けた後、いつも通りの自己紹介が。安本の脱力した自己紹介ですら胸が熱い。当たり前が当たり前じゃなくなった今だからこそ、お馴染みのくだりは尊く見える。MC明け「制服"報連相"ファンク」の濃厚なファンクネスから少し大人なエビ中を見せる流れ。「禁断のカルマ」は2013年リリースのこの日、最古の曲だがこの曲の持つ艶は今だからこそ体現できる部分もあるはず。「藍色のMonday」のフラットなコケティッシュさ、「トレンディガール」のスマートなトラックを乗りこなす歌唱、どれも近年彼女たちが獲得してきた表現。圧倒的な振れ幅を見せつける。

カメラがステージを外れ、もう一度戻ると「オメカシフィーバー」のどキャッチーなツカミと共に、カラフルな衣装チェンジした6人が姿を現す。歌詞字幕もコールのようにポップアップされ、賑々しい楽曲を演出する。ビッケブランカのペンによる「ちがうの」では切なさと熱狂を織り交ぜながら空気をフツフツと沸かせた後、ラウドロック「PANDORA」へとパス。星名美玲のキンキンな歌声とグラフィック&歌詞字幕によって保持され続ける熱量はそのまま「イート・ザ・大目玉」へと。爆発力のある楽曲もエビ中の持ち味として現場で機能してきたが配信公演でも山場を作り出していた。そしてMCのあっさりさも健在。楽曲への確固たる自信が為せる見せ方だ。

ヤマタツサウンドのオマージュに徹する「シングルTONEでお願い」では更に斬新なエビ中が垣間見える。抑えた声色で音と溶け合い、フォーメーションはさながら往年の音楽番組のよう。柏木ひなたが1番を全て歌う斬新な歌割で彼女の歌唱力を存分に見せつけるiriプロデュースの「I'll be here」ではドープなダンスチューンをクールに体現。「曇天」では6分割された画面がメンバーをそれぞれ追い、演劇的なアプローチの振り付けをしっかりとできる。ライブ映像作品でもあまりない演出法だろう。椎名林檎のカバー「自由に道連れ」では手持ちカメラがステージ上のメンバーのハシャギっぷりを捉え続け、<大人にも子供にもなれる>彼女たちの在り方を示していた。

スタンドマイクがセッティングされた中で歌われるのはマカロニえんぴつが担当した「愛のレンタル」。さながらSMAPかのようなスマートで軽妙洒脱なステージング。真山りかの伸びやかな歌唱がファンクグルーヴを背負って開放的に響いていく。そんな今までにない一面を『playlist』からのラスト選曲は、10周年を振り返りメンバー自身が作詞をした「HISTORY」。「曇天」同様に6分割の画面だが、先ほどとは違い、6人の表情をありのままに映し続ける。そのシンプルさこそが最適解。ソングオリエンテッドなエビ中のスタンスが強く打ち出されている。ハーモニーをじっくりと堪能できる「星の数え方」の、素材そのままな見せ方はその最たるもの。

荘厳な静寂を引き裂くように「サドンデス」がばっつばつの音圧で投下される。いつものダンスサドンデスブロックでは楽屋裏でソーシャルディスタンスを確保するメンバーや、距離を保ったままステージへ移動する模様を映し出すなど、遊び心たっぷりにこのご時世をサンプリング。そして終曲は、8.21リリースの新作「FAMIEN’20 e.p.」にも収められた「COLOR」。ほんとほんと、色々ある世の中だからこそ、彼女たちの奏でる極上のポップスたちが漂わせる良い予感は頼り甲斐があるのだ。孤独だけど孤独じゃない箱、と真山りかは(恐らく)ブクガの配信ライブタイトルを引用してこの会場を称していた通り、6人の瞳の先には確かに我々がいたように思える。

-setlist-
1.ジャンプ
2.響
3.春の嵐
4.SHAKE!SHAKE!
-自己紹介-
5.制服"報連相"ファンク
6.禁断のカルマ
7.藍色のMonday
8.トレンディガール
9.オメカシフィーバー
10.ちがうの
11.PANDORA
12.イート・ザ・大目玉
-MC-
13.シングルTONEでお願い
14.I'll be here
15.曇天
16.自由へ道連れ
17.愛のレンタル
18.HISTORY
19.星の数え方
20.サドンデス
21.COLOR

https://music.apple.com/jp/playlist/%E7%A7%81%E7%AB%8B%E6%81%B5%E6%AF%94%E5%AF%BF%E4%B8%AD%E5%AD%A6%E3%82%AA%E3%83%B3%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%B3%E5%AD%A6%E8%8A%B8%E4%BC%9A-all-of-our-playlist/pl.bf2d429977b94c9d839a0a80e725151e

先述した8.21リリースの「FAMIEN’EP 20」、僕の平成&2010年代ベストトラック入りを果たしている超絶名曲「誘惑したいや」が再録されてるんですがこれがもう情動が暴れ出しちゃうタイプの代物で、、そもそも2016年のベスト盤で部分的に再録はされてたんだけど、完全に全員が今の歌声で録り直してて、、ものすごく今だからこそしっくりくるメロディだなぁと思う一方で、歌詞の永遠さも際立っちゃう、みたいな。思い入れ強すぎてマトモに判断できないな。

ネバヤンの「お別れの歌」ビデオのコンセプトをアイドルでやってしまうチャレンジをかましたMVが界隈をざわつかせている「23回目のサマーナイト」の後に収録されている、というのも「誘惑したいや」の破壊力を際立たせているように思う。ポップミュージックは時に、過剰なまでに鮮烈に届いてしまう。その好例。

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