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1.7 UNISON SQUARE GARDEN TOUR 2021-2022「Patrick Vegee」@日本特殊陶業市民会館フォレストホールには"いつも"があった

2020年9月にリリースされた8thアルバム『Patrick Vegee』のツアー。リリースからおよそ1年半、ツアーとしても佳境の熟しきった状態でこのアルバムを味わえる喜び。個人的には1年前の着席ライブ以来だったので立って動けるようになったこともとてもアがるし、何といっても2022年ライブ始めだ。めでたすぎる。初めて行ったフォレストホールは4階建ての巨大な会場で、このキャパをコントロールするユニゾンをワンマンで観るというのも新鮮な気分。

SEのイズミカワソラ「絵の具」が流れている途中でアルバムのラスト2曲目を飾る「Simple Simple Anecdote」のサビを斎藤宏介(Vo/Gt)が歌い始めた。これはかなりの不意打ちだった。しかしうららかな曲調の中、しっかりと空気を温めていくし、<今日は何とかなるぜモードでいいや/僕の言葉がまた生まれる」という締め方はライブの幕開けにぴったりだ。そしてすぐに田淵智也(Ba)が不穏なベースラインを轟かせてアルバム1曲目の「Hatch I need」が始まる。体をぐわぐわ揺らすラウドな演奏、ユニゾンのライブが還ってきたという実感!そのまま曲順通りに「マーメイドスキャンダラス」が唸りを上げる。ライブの場で聴くのを待ち望んでいた曲!爽快さに気を取られているとアクロバティックすぎる演奏にいつの間にかノせらていて、ずっと聴いていたい曲だった。また間髪入れずに「Invisible Sensation」が炸裂し、ひとときも休む間のない序盤。<生きて欲しい!>という祈りは今まさに光るべき歌詞であり、紛れもなくこの瞬間に鳴るべき歌だった。

「あけましておめでとうございます」という挨拶から、ユニゾンもライブ始めであることを告げられた。1年に1度のこの日をともにできる喜び!アルバム曲披露への期待を煽る短いMCの後、アルバム曲たちの猛攻が、、と思うと「フライデイノベルス」が始まる。ここからは暫くアルバム外からの曲ばかりという裏切りブロックだった。金曜日の高揚感を歌うポップな本曲から、1stアルバムのオープニングナンバー「カラクリカルカレ」が。毎度のことだが一切古びないし、強烈な爆発力を伴って迫ってくる。呆気に取られているうちに「新曲!」とだけ告げて9月リリースの「Nihil Pip Viper」に。ジャジーなリズムと躍動的なグルーヴが胸踊らせる1曲で早速のキラーチューンっぷりを発揮していた。最古の曲と最新曲が相乗効果で熱狂をもたらす、つくづく愛されたバンドだ。そしてそんな<みんなが大好きな物語の中じゃ呼吸がしづらい>僕らを撃ち抜く「Dizzy Trickster」が前半のピークポイントを飾る。リリース当時から感じていたが今この局面でこそ気取らない信用の歌として響く。

ここから空気は一変する。斎藤のギターが静かに忍び寄る「摂食ビジランテ」。アルバムの中でも特に異彩を放つ奇曲だがライブだとおぞましく響き渡るノイジーなナンバーに化け果てていた。息つく間もなく斎藤が叫び、2ndアルバムから「夜が揺れている」。ユニゾンには珍しい拍子で進むロックバラッドで、シリアスな空気を保ったままドラマチックに空間が仕上がっていく。その壮大に膨らんだムードをいい意味できゅっと小さな物語へと収める「夏影テールライト」は名演出だった。着席ツアーで聴いた時は染み入る印象が強かったが、立って動くとそのダンサンブルなリズムワークにも聴き惚れてしまう。ここからアルバムの流れに戻るかな?と思いきや、厳かなオーケストレーションが響き渡り「オーケストラを観にいこう」が幕を開ける。きゅんとなる恋の始まりから徐々に関係性が進んでいくストーリーを踏まえると、夏を舞台にしたこの2曲の呼応性はばっちりだ。こういう曲がフェスで鳴るとどうなるんだろう、なんてことを考えてしまうような圧巻の1曲だった。

甘美なムードを打ち砕くように「Phantom Joke」が妖しく鳴る。アルバムでもユニゾン史上でも屈指の怪奇的な演奏構築を持つ曲で、バックのスクリーンもおどろおどろしく蠢いていた。じりじりと高揚を焚きつけていった結果、演奏の終わりには大きな拍手が止まらなかった。メンバーも達成した、というような清々しいしてやったり顔をしていたように見えた。そしてここで一区切りされ、鈴木貴雄(Dr)ドラムソロが始まる。正確な技巧と野生味が混在する緊張感溢れる時間。そこから斎藤と田淵も加わってセッションへと移行。カウントを繰り返し、「世界はファンシー」へとトップスピードで繋げる。これこそまさに着席で聴いてる時にムズムズして堪らなかった曲。アウトロから間を空けずにちょっと脱力したフレーズが鳴り始めて「スロウカーヴは打てない(that made me crazy)」が。これもすっかりライブで必殺の1曲に仕上がりつつあるように思えた。ユニークなフレーズの連発と多幸的に花開くサビのメロディはこれぞユニゾンの今一層に評価されつつある側面だ。

ここから怒涛の終盤。5thアルバム『Catcher In The Spy』をエッジーさを象徴する「天国と地獄」だ。もう既に7年前の曲というのは驚きだが、様々なワンマンやフェスで切れ味鋭くクライマックスを彩ってきたその歴史を感じさせる1曲だった。2階席で観ていたのだが、会場の揺れが心配になるくらいの熱狂が巻き起こっていた。そして「シュガーソングとビターステップ」が大祝祭をもたらしていく。リリース当初はこの曲の扱いも何手先も読んだようなものだったが、今はすっかりその曲調と歌詞が望むべき場所に辿り着いたように思える。そして最後の1曲はアルバム通り「101回目のプロローグ」だ。長尺でいくつもの展開を用意した楽曲だが、その想いは一点の曇りもない、何度でも始まり続けていくバンドシップを歌ったものだ。バンドそのものが永久でないことは明白な事実であり、変え難い事実であるが、バンドがあり続ける限りは音楽は止まらないことも変えようのない事実。その当たり前をいつだってフルエネルギーで解らせてくれるユニゾンは最高なのだ。

アンコールでは「声を出さなくてもライブはこれだけ楽しいことは分かってる」と斎藤が頼もしい一言。そこから飛び切りのお祭り感をくれる「crazy birthday」と「オトノバ中間試験」が最高潮の気分をくれる。声があろうとなかろうと変わらないことはユニゾンがこの状況下で強くあり続けた何よりの理由だろう。ラストはまるで未来を願うかのように「春が来てぼくら」が美しく鳴った。先の見えない道の途中でも強く在りたいと思えるライブだった。

<setlist>
1.Simple Simple Anecdote
2.Hatch I need
3.マーメイドスキャンダラス
4.Invisible Sensation
5.フライデイノベルス
6.カラクリカルカレ
7.Nihil Pip Viper
8.Dizzy Trickster
9.摂食ビジランテ
10.夜が揺れている
11.夏影テールライト
12.オーケストラを観にいこう
13.Phantom Joke
14.ドラムソロ~セッション~世界はファンシー
15.スロウカーヴは打てない(that made me crazy)
16.天国と地獄
17.シュガーソングとビターステップ
18.101回目のプロローグ
-encore-
19.crazy birthday
20.オトノバ中間試験
21.春が来てぼくら

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