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卒業生が語る声優専門学校の実態と闇の体験談|メリットとデメリット

声優の専門学校について興味のある若者は今どれくらいいるのでしょうか。13歳のハローワークによると、2020年7月1日~7月31日の人気職業ランキングで声優は17位にランクインしています。

ちょうど「涼宮ハルヒの憂鬱」や「らきすた」や「とらドラ」の全盛期、田舎のオタク高校生だった私は学校では友人に趣味を隠し、家に帰ると撮り溜めしたアニメを見ながらネトゲに没頭していました。

留年しない程度に高校には通っていたものの、基本的に高校は友達と遊ぶか寝る場所という認識で勉強もせず、部活もせず、3年の12月になっても進路が決まっていない状態。深夜アニメを見ているときに流れていたCMを見てなんとなく進学を決めたのが、東京にある声優の専門学校でした。

進学を決めた理由は「声優になる夢を追いかけてる」と自分に言い聞かせつつ他人に宣言しながら、深層心理的には「勉強も仕事もしたく無いし、普通のサラリーマンとか無しでしょwアニメ好きだしワンチャン声優になったら一発逆転じゃねw」てな感じでした。ちなみに大袈裟な話ではなく、声優の専門学校に通っている同期はほんの一部を除いてこんな感じです

この記事は、10年前に私が実際に東京にある声優専門学校で体験した内容と、その後の同期メンバーの進路についてを体験談として書き綴ったものです。高校卒業後の進路に声優専門学校を考えている学生や保護者の方は参考にしてみてください。

ちなみに「声優学校 おすすめ」などで検索して出てくるサイトは警戒してください。大体1位が同じ専門学校になっているのですが、その専門学校の送客単価が高いため、意図的におすすめしているサイトが多数です。URLにマウスカーソルを合わせた時に「xmax」とか「valuecommerce」と書かれていると思いますが、それはaspの......本筋と外れるのでこの辺にしておきましょう。

注1)この記事は声優専門学校のリアルな体験談を主観的に書くので、一部の人にとっては気分が悪くなることかもしれません
注2)クラス・学年を跨いで交流をしていたので、比較的周りを知っている方だと自負していますが、あくまで私が知りうる範囲での話だという事を念頭に置いていただけると幸いです

声優専門学校卒業後の進路について

卒業生全員の進路を完璧に把握しているわけでは無いので、参考程度に。私の同期150人の中で声優専門学校を卒業後、単体で名前が知られる声優になった人は私の知る限り1人もいません。上の学年にも下の学年にもいません。卒業後数年経った今、正規雇用として働いている人も片手で数えられる程度です。

私の声優専門学校を卒業した学生の進路は大きく分けて4パターンで、

1. 劇団員(大きいところから小さいところまで)
2. 進路不明
3. 一般就職
4. 大学や専門学校に入り直す

です。少なくとも声優の専門学校に入学する前に想像していた未来を歩んでいる人間は1人もいませんでした。

1. 劇団員

声優専門学校を卒業したあとは劇団員になる人がもっとも多いです。特に進路が決まらなかったメンバーは、俳優コースの演劇指導担当教諭が個人で運営する劇団に入団するのが基本で、役者の道を続けようと思えば進路にあぶれることはありませんでした。

注意が必要なのですが、劇団員になった場合の主な収入はアルバイトなので、劇団員は仕事であっても就職と言えるかは保護者様の持つ常識によって分かれるでしょう

ほとんどの子は卒業後2~3年で演劇・声優の世界から足を洗い、就職活動をします。バイト先の居酒屋やコンビニにそのまま就職したり、IT系企業に中途入社したり、就職・転職市場はここ数年売り手市場だったので、働き先が無くて飢えている人は私の知る限りいませんでした。

真面目に専門学校に通っていた子の中には劇団員になって今でも舞台に立っている子も数名います。たまに私も舞台を見に行きますが、10年近く真面目に稽古をしている友人は富や名声を持っていなくても、役者として舞台に立つ姿は輝いて見えるものです。

2. 進路不明

残念な話ですが、声優の専門学校に通っている子の1/4くらいは途中で不真面目な大学生のようになり、声優の専門学校ですら真面目に授業を受けられなくなります。

そんな彼らは、専門学校に進路を告げずに2~3年の間連絡が取れなくなります。そして、1. 劇団員 を進路として選んだ子達の就職ラッシュと同じようなタイミングで同窓会に顔を出し、「実家に帰って何もしてなかったw」と言います。

一応フェイスブックやLINEのグループではつながっていますが、彼らの多くは過去のコミュニティを捨てて新しい環境で何をやっているのか不明です。

3. 一般就職

少数派ですが、一般就職をする子もいます。声優専門学校ではあるものの、学校自体に企業からの求人はそこそこあり、進路相談室へ行けばキャリアアドバイザーとして相談に乗ってくれる先生もいます。

ただ、私の卒業したタイミングは現在より有効求人倍率が大幅に低かったので、正社員就職が難しかったようです(求人倍率だけが原因かは......なんとも言えませんが)。現在は劇団員→転職 派閥の子の方が正規雇用で働けている印象があります。

4. 大学や専門学校に入り直す

専門入学時は考えていなかった「キャリア」について考え直し、大学や資格を取れる系の専門学校に入学し直す子も少なからず存在します。ちなみに私はこの選択をしました。詳しくは以下の記事からご覧ください。

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以上が卒業生の主な進路です。まだ私たちはアラサーなので、「末路」と言うほどひどいことになってはいませんね。

この記事の趣旨とはブレるので、データは自身で確認していただきたいのですが、この記事を読んでいる親御さんは「有名声優 プロフィール」などと検索をして、有名声優の学歴や職歴を調べてみてください。

また、全国の声優専門学校卒業生の人数と、毎年デビューしている有名声優の人数を比較すると、声優に本気でなりたい人が進むべき進路は「声優専門学校」かどうかが見えてくるかもしれません。

余計なお世話かもしれませんが、お子さんの進路や夢を本気で応援したいのなら、声優になる方法・その難しさを真面目に調べてどうすれば声優になれるのかを一緒に考えてあげて欲しいです。

その辺りのデータに関しては別のnoteでまとめようと思っているので、その時は参考にしてみてください。

声優専門学校に通ってよかった事(メリット)

卒業生の進路で話した通り、声優専門学校はキャリアベースで話すと、18歳~20歳を過ごすのに最悪な場所でした。求人に「大卒以上」が無い会社でも、私の卒業した専門学校の名前を見たらマイナス方面に警戒するくらい、質の悪い卒業生も多いです。

ただし、声優専門学校に通ってよかったと思う事はいくつもあります。

1. 講師の質が非常に高かった
2. 他人との関わり方を学べた
3. 演劇がとても楽しかった
4. 第一印象を引きずらなくなった

その後のキャリアを考えると遠回りでしたが、専門学校での生活がなければ、そのまま実家で引きこもりを続けていたかもしれません。声優にはなれませんでしたが、私も家族も高校卒業後の進路として声優の専門学校を選んだ事は満足しています。

1. 講師の質が非常に高かった

声優専門学校では「演劇ワークショップ」「声楽」「歌」「ダンス」「日本舞踊」などの授業があり、それぞれの分野で活躍する一流の講師が指導してくれます。

小・中・高と田舎で過ごしてきた私は尊敬できる教師とそれまで巡り合う事はできずに過ごしてきましたが、専門学校の講師陣はそれぞれの分野のプロフェッショナルであり、専門分野の指導はもちろん、本気で何かに打ち込んできた人間でなければ語れない人生哲学には大きな影響を受けました。

それこそ「体力があれば大体どうにでもなる」「(演劇が)うまくなりたいなら、下手なヤツとは仲良くするな」「舞台袖にいるときに気を抜いてる奴は観客にすぐバレる」「学校でやる稽古ってのは、自分のしてきた役作りを見せつけ合うもの」といった指導は、学業においても、仕事においても役に立っています。

ただし、何度も繰り返し恐縮ですが、まだまだ精神的に未成熟な生徒も多く、真っ当な指導に対してヘイトを溜める生徒や保護者からクレームが入ることもしばしばあったようです。そのため、講師に対する感覚は私と違う意見の卒業生も少なくは無いでしょう。

今考えても講師の質は非常に高かったと思います。

2. 他人との関わり方を学べた

私のように高校生時代まで、友達は多くても付かず離れずで、真剣に人と関わろうとしてこなかった人間にとって、他人との関わり方を学べたのは貴重でした。

舞台やアニメというのは基本的に大人数で協力して作り上げるもの。そのため体力作りや発生を除いた授業のほとんどは他人との掛け合いです。私の演劇担当講師は、現代っ子は人との肉体的な関わりを知らない子が多いと言い、準備運動代わりに

・二人で背中合わせになって座り、手を使わずに立ち上がる
・数人で腕を組んだところにダイブする
・二人で一人を持ち上げる

などのレクリエーションを開催していました。人と人が接触した際の痛みや温かみから他者との物理的な関わり方をまず学びます。そして同級生と喧嘩と仲直りを繰り返しながら1つの舞台を作り上げる経験は、これまで本気で何かに取り組んだ事のなかった私にとって刺激的でした。

演劇の経験がなければ、今私は社会人として真っ当に生活できていなかったかも知れませんね。

3. 演劇がとても楽しかった

「2. 他人との関わり方を学べた」と内容が似ているかも知れませんが、単純に演劇がとても楽しかったんですよね。感覚としては「指導者もいて、設備も整っているサークル活動」を毎日しているような感じ。

年に数回ある舞台で稽古の成果を友人や家族を含むお客様に見てもらいます。舞台に立った時の高揚感やカーテンコールの時の誇らしさは、あの特殊な空間ならではのものです。

私の父は非常にお堅いタイプで、私が声優の専門学校に通う事を強く反対していたものの、最終的にシブシブ進学させてくれました(今となっては父の気持ちを痛いほど理解しています)。

そんな父が母と一緒に私の舞台をなんだかんだ毎回見にきてくれて、最後の卒業制作の舞台を見た後に「お前が楽しそうに演劇できていたから進学させて良かったよ」と言ってくれた時は周りにいる同級生の目もはばからずに泣いてしまいましたね。

4. 第一印象を引きずらなくなった

この項目は、18歳の頃の自分の感情をトレースして書くので、人を見下しているような表現に感じて気分を悪くする方もいるかも知れません。心配な方は飛ばして読んでください。ただ、声優の専門学校で私が学んだ一番大切な事はこの項目かなと思っています。

私の通っていた専門学校の同級生は冒頭でも説明しましたが、

「勉強も仕事もしたく無いし、普通のサラリーマンとか無しでしょwアニメ好きだしワンチャン声優になったら一発逆転じゃねw」

という理由を裏に持ち、「声優になる夢がある」と大義名分を抱えてモラトリアムを楽しみに進学してきた者がほとんどでした。勉強も運動もできず、容姿にも気を使わない。声優になるための要素が全くない。

日本中のスクールカースト最底辺から選抜されたような人間がほとんどで、入学オリエンテーションでは絶望しました。この後すぐに打ち解けるのですが。

ちなみにこのメンバーで卒業まで一緒に過ごす中、たびたび笑い話になるのですが、みんな最初は「おいおい、やべー奴しかいねーじゃん、俺もだけど」と同じ絶望を感じていたようです......(笑)

おそらく私と同じように声優専門学校の話をしているブログ「声優専門学校の入学を止めろ!入学した僕の経験と末路を下に闇を語る」でも、


また、入学者の90%ほどは、中学や高校時代にクラスに一人は居たコミュ障・キモい人、そして問題児と思われる方々だった。これを暴言と捉える方が居るかと思われるが、昨今の声優業界は「顔・私生活」も含め商売道具となる世界だ。特別声に特徴がある方でないなら、顔・私生活も生き残る術の一つだという事を理解してほしい。

と語られており、

暴露大学様のnote「キャバクラ としてのワナビー系専門学校(声優・アニメ・漫画・eスポーツ)」においては


高校を卒業して専門学校に進学する学生は、まあ端的に言って情弱か低能が大半である。そもそも選抜をあまりしない時点で残りカスが進学することは想像に難くない。足は遅く、運動会では万年ビリ、当然公立の小中学校時代から落ちこぼれ気味、音痴、基本いじめの対象。ばい菌扱い。ドッジボールでは最初に当てられる役。グループ分けでは必ず余り。要らないといわれじゃんけんに負けたチームがしらけている中に申し訳なさそうに入れてもらうのがスタンダード。

とあるので、ひょっとしたらどこでも同じような感じなのかもしれませんね。

これで声優専門学校にはどのような学生が集まるかを理解していただけたと思います。私がここでしか学べないなと思っている事は「第一印象を引きずるのはもったいない」という体験です。

専門学校入学当初はお互いに絶対に仲良くできないと思っていた子も、同じ空間で同じ時間を過ごせばいつの間にか真面目な話もくだらない話もできる仲になりました。

別にみんなが特別いい奴というわけではありません。それこそ、高校時代まで抑圧された欲望が爆発したかのように「突然金髪にしてタバコを吸い出す子」「初めてできた自分より弱い子を虐めだす子」「突如性に奔放になる子」が大量発生しましたが、変な暴走の仕方をする子は大体学校に来なくなるので、個人的にはさほど気になりませんでした。

当初は嫌悪の対象であった容姿に関しても、2~3日経過すれば慣れるもので、他人の容姿やステータスを友人選びの基準にすると言うのもくだらない話だと実感したのもこの頃です。

この価値観が矯正されないまま社会に出ていたらと考えるとゾッとしますね。専門学校以来、他者と関わる時に容姿やカタログスペックを全く気にしなくなりました。

声優専門学校に通ったことで無駄に肥大化したプライドが無くなった点は私の人生をプラス方面に大きく傾けたと思います。

声優専門学校の闇(デメリット)

個人的に声優専門学校に通ったこと自体は満足しているので、そんなに悪い事は無かったかなと思っています。ただ、一般的に闇が深いと言われる点は

1. 学生の質が低い
2. 声優として成功するのは0.01%くらい
3. 卒業後のキャリアは絶望的

です。これは事実。ちなみに少し闇を掘り下げますと、

-----汚い話注意-----

・猫背でメガネをかけていて眉の手入をしていない小太りの男が夏休み明けに、猫背でメガネをかけていて眉の手入れをしていないまま金髪になってタバコを吸いながら教室に入ってくるようになる
・比較的容姿の優れた女子は取り巻きを抱えながら、取り巻きとは何もせずに取り巻き以外の人間と蛸足配線のように繋がっていく
・そんなこんなで一部の周辺で兄弟姉妹が増える&病気が......
・虐められっこが集まるとその中でいじめが起こる
・男女関係のもつれで稽古中に泣き出したり稽古場を飛び出す
・放課後の稽古場でA君と付き合ってはずのB子ちゃんがC男と二人でなんかしてる

高校時代まで人と関わらなかった結果かな?倫理観がずれている人が一部いたようです。恋愛関係のもつれが凄かったですね。もちろん全員ではありませんよ。

-----汚い話終了-----

そんなわけで

・他者を見下すような下らないプライドを捨てられない人
・授業以外での努力を続けられない人
・キャリアについて自分で考えられない人

は声優の専門学校で「成功」を掴むのは難しいでしょう。

・同じ夢を目指す人間同士切磋琢磨したい人
・将来的にサラリーマンとして年収600万円以上稼ぎたい人
・学生生活で生涯のパートナーを見つけたい人

は進路選択で声優専門学校よりも良い場所があると思います。

ただ、「いじめられて高校時代は不登校だった」「友達がいなくて他者との関わり方がわからない」「このままだと社会不適合すぎて人生が詰む恐れがある」「ちょっと不思議な世界で青春を謳歌したい」といった高校生が社会と関われるメンタルを醸成する場として、声優専門学校は非常に優秀なコミュニティです。

また、18歳を超えて何一つ成し遂げていないのに「自分は勉強も運動もやろうと思えばできるし何か特別な才能を持っているはずだ」と思い込んでいる人間の伸びきった鼻をへし折るために2年間を投資することも悪くありませんね。

声優専門学校は私にとって「マイナスをゼロまで戻す場所」でした。

声優専門学校の実態

以上が「卒業生が語る声優専門学校の実態」でした。声優の専門学校自体は別に悪いところでは無いのですが、「声優を本気で目指したい人」の進路としては絶対におすすめしません。

職業声優として役を奪い合う相手は、芸能界で活躍してきた子役やアイドル出身の人間や、事務所直下の養成所で声優を目指して努力を続けている人間です。アニメが好きで素人からちょっと良い声と言われた人間がなんとなく目指して活躍できる世界では無いんですよね。

出遅れながらも本気で声優を目指したいのであれば「夢への最短距離を走れるのは声優専門学校なのか」を考えるところから努力した方が良いかもしれません。

7000字弱の長文をここまで読んでくださり、ありがとうございました

Twitter「@Shakasetsu」のDMは開放していますので、何か個別に質問のある学生や親御様は連絡ください(誹謗中傷や意図が読み取れない方のメッセージは返信できません)。

また、専門学校を卒業した後に大学に入学した話も掲載しましたので、よろしければご覧ください。


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