僕の思い出の味

私が小学生のころ、母は病気で入院していた。父は仕事で忙しく、家にはほとんど帰らなかった。私は一人で食事を作って食べていた。冷蔵庫にあるもので適当に作るので、味はいつもイマイチだった。でも、文句を言う人もなく、感謝する人もなかった。私は食事をすることが嫌いになっていた。

そんなある日、学校から帰ると、玄関に大きな段ボール箱が置いてあった。送り主は祖父だった。祖父は母の実父で、北海道に住んでいた。私は祖父に会ったことがなかった。母は祖父と仲が悪くて、結婚してから一度も連絡を取っていなかった。でも、母が入院したことを知って、祖父は心配して荷物を送ってくれたのだ。

段ボール箱を開けると、中には北海道の特産品がたくさん入っていた。ジャガイモやニンジンや玉ねぎやカボチャやトウモロコシなどの野菜や、牛乳やバターやチーズなどの乳製品や、サーモンやタラやイクラなどの魚介類や、お菓子やジャムやワインなどの加工品などだった。それらの品物には、それぞれに手書きのメモが貼ってあった。メモには品物の名前や産地や保存方法や調理方法などが書かれていた。メモの最後には「元気になってね」という一言が添えられていた。

私は祖父からの荷物に驚いた。こんなに沢山の食べ物を送ってくれるなんて、祖父は優しい人なのだろうか。母と祖父はどうして仲が悪くなったのだろうか。私は祖父に会ってみたいと思った。

私は祖父から送られてきた食べ物で食事を作ってみることにした。メモに書かれている調理方法を参考にして、ジャガイモとニンジンと玉ねぎでポタージュを作り、サーモンとイクラでお寿司を作り、カボチャでプリンを作った。それらをテーブルに並べると、色とりどりで美味しそうだった。

一口目を食べると、驚いた。ポタージュはクリーミーで甘くて滑らかだった。お寿司は酢飯とサーモンとイクラが絶妙に合っていて、口の中でとろけた。プリンはカボチャの風味が効いていて、ふわふわとした食感だった。私はこんなに美味しい食事を食べたことがなかった。食べるたびに、幸せな気持ちになった。

私は祖父に感謝した。祖父が送ってくれた食べ物は、ただの食べ物ではなかった。祖父の愛情が詰まっていた。祖父は私を気にかけてくれていた。私は祖父に手紙を書いた。祖父からの荷物について、食事について、学校について、母について、色々なことを書いた。手紙の最後には「会ってみたいです」と書いた。

ここから先は

1,068字

¥ 1,000

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?