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エッセイ

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記事一覧

ひどくさびしい夏のこと

ひどくさびしい夏のこと

これは1年前のはなし。

5月末に知り合いが失恋をして、なぜかわたしに連絡がきて、とりあえず飲もうよと言われた。
何でわたしなんだろうかと思ったけど、傷心してる人って話を聞いてほしい、何となく思いついた少し遠い人でも呼ぶから、それなんだろうなと思っていった。
自分が失恋した時すごいたくさんの人がたくさんの時間を使ってわたしと過ごしてくれていたことがうれしかったから、そういう気持ちだった。

久しぶ

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その名前を所持しているかについて

1年くらい前に、恋人に「あなたは愛があるひとだから」と言われた。
その時のわたしの反応は、「怒る」だった。

彼からしたら、褒めたのに、いいところを伝えたのに、「そんなもの持っていない」と怒るなんて想像もしていなかったと思う。実際にとても困っていた。

わたしは自分のことを、つめたくて、大切にされたり好意を向けられることにひどく鈍感で、もし気付けたとしてもその分嫌な気持ちを返してしまうような人間だ

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それは朝だった

それは朝だった

長い夢を見た。起きるたびに話は変わって、なんの疑問もなくただ見ていた。朝思い出そうと思っても断片的にしかわからず湯船にはったお湯に肩まで浸かった。

電車に揺られている。久しぶりに馴染みのないところを移動している。
仕事が終わったのが15時、次の待ち合わせは18:30。
ぐるっと一周電車に乗って写真展を見て回る。
意外と移動に時間がかかって小走りで乗り換えた。
今日は朝にベーグルをひとかけらと昼に

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燃え殻であいた穴をなでた

今年はどうでしたか。わたしはひとつ仕事を辞めました。とても短い間だったけれど、自分の欠点を理解するには充分過ぎました。あまりにも向いていなくて、存在していることが辛くなりました。すべての責任を投げ出したいと思いました。これ以上何も知りたくないし教えられても困ると思いました。休憩の1時間にご飯を考えるのも億劫になってずっと同じものを食べていたら途中で食べれなくなって残りの時間はトイレにいました。もう

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眠れない夜の覚え書き

眠れない夜の覚え書き

少し長い休みをもらって、また眠れなくなった。明後日は朝の7時から仕事だから少し焦る。夜が朝に近づくのを目の前で見ていると不安になる。眠ろうと思えば思うほど、起きた時に夢の中からなかなか出られず、ずっと起きていたように思う。今は、窓辺が白み始めているのをただ眺めている。

小学生のころから変わらない学習机の上に、飲まれないままのビールが3本と、読み途中の本が何冊か、昔の日記と、書き終えていない手紙。

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飛行機は鳥のまねをする

飛行機は鳥のまねをする

今は深夜の2時前で、湯船につかって、さっき届いた本の半分を読んで閉じた。

お風呂に入るまでは、映画の劇場を見ていて、あと30分のところでパソコンを閉じた。その前は、転職サイトをあらかた見たり職務経歴書を書いたりして、あとひとつの書類を残してサイトを移動した。さらにその前は20分のヨガをし終えたところで、お母さんがなんで中途半端にサラダを残してるのと言ってきた。忘れてた。

悪いくせだ。
漫画も最

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雨の帰りみちからの手紙

雨の帰りみちからの手紙

あの人は、元気だろうか。
疎遠になってしまった人がずいぶんといる。
親友だよね、と言われて、そうなの?と返して傷つけてしまったあの子も、わたしだけ先に受験が終わって帰りみちに誘ってもらえなかったあの子たちも。
毎日のようにくだらないメールや電話をしていたあの子も、深夜にはじめて一緒に流星郡を見たあの子も。
連絡先もわからなくなってしまって、今どうしているかもわからない。
わたしは今25歳で、きっと

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物質と記憶と忘却と

物質と記憶と忘却と

部屋のものが多い。
実家暮らし、6畳、ロフトベッドの下に衣装ボックス。
本棚が3つと小学生の頃から変わらない学習机。
大きなプリンターとスキャナーもある。
秘密基地みたいなぎゅうぎゅうしたところに暮らしている。
好きなものに囲まれた生活。
これはこれで気に入ってはいる。

わたしが断捨離を始めた理由は、仕事を辞めたことと、長いステイホームもあるのだけど、1番の理由は「実家を出る」という可能性が大き

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