「妊娠した子が通える高校」は【各論】にとどめるべきではない。

こんにちは!
お久しぶりです。新橋みゆです。
21年10月から22年3月頃まで政策提言の場でお話する機会をいただいて活動しておりました。
その中で妊娠した子が通える高校について言及したとき、「妊娠した子が通える高校は各論になってしまう」と言われてしまって割と悲しかったのですが、なぜ悲しいのか頭の中でもやもやしていたのでこの記事でテーマとして扱って整理していきたいと思います。

なお、章立てをしております。
1トピックごとにでも、お時間がある時に読み進めていただけたら幸いです。
その読み方でも理解しやすいように文章構成してあります☺️

また、読者の皆さんが読みながらつっこみたくなったらぜひそれを教えてほしいので、全ての章の最後に、匿名で(ご連絡先もお書きいただけます。必須ではありません。)私になんでも送れるフォームをご用意しております
もし良ければ、質問2で【3】を選んだうえで思ったことを送っていただけると嬉しいです!
なんでも喜びます!(笑)


はじめに 「高校生が妊娠するのはおかしい!」と言いたい方へ

序論です。
「妊娠した子が通える高校」の話をする前に、まず高校生が妊娠するな!とおっしゃる方もいると思います。

日本の避妊は、避妊成功率が決して高くないコンドームが主流となっています。
(コンドームのみを使用してセックスをしたカップルのうち、1年間でおよそ7人に1人が妊娠するというデータがあります。)
それ以外の避妊の方法は基本的に医療機関に行かないと手に入れられず、高価であることや保険証を保護者が管理しているなどの理由で避妊効果の高い方法を取れない高校生は多くいます。

また、そもそも性教育が不十分で、避妊具を使うことの必要性を正しく理解出来ていない人もいます
後述しますが、妊娠に対して「責任」をとれない大の大人もいますので、「中高生だけ」が「セックスするな!」というのもおかしな主張です。

避妊具へのアクセスの悪さや、不十分な性教育のせいで、高校在学中の妊娠は通っている学校が進学校であろうとそうでなかろうと「他人事」ではない子が多いのです。
(進学校なら妊娠する生徒なんていないだろう!となぜか思われがちなのですが、進学率が高い学校だろうとそうでなかろうと、高い避妊法を取れる高校生は多くないです。私も進学率が高い私立の中高一貫卒で現在国立大学に通っていますが、これらの理由で高校生の頃妊娠しました。)

これらの問題を解決するためにユースクリニックを設置し、保険証がなくても安価に避妊効果の高いピルやミレーナ(子宮内に挿入すると高い避妊効果を得られるもの)を中高生が選択できるようにする必要があると思います。
(詳しくはこちらの政策提言での発言をご覧下さい。)
しかし、ユースクリニックを設置しても、どれだけ避妊をしても妊娠をする可能性は排除しきれるものではありません

だから「妊娠しても学び続けられる環境作り」は私たち大人が考えていくべきテーマになるのです。
ここから先は、既にある高校に妊娠した子が通えるようにする、というよりかは「妊娠した子が通える」独立した高校を想定していきます。


1.妊娠した子が通える高校が必要な理由

大きく、2つあります。
1つ目は、「産むか産まないか決められる権利」が「権利」であり続けるためには、「産める」環境整備が必要であるということ、2つ目は妊娠しても高校生活を楽しむ権利があるという理由です。
それぞれ説明します。

(1)「産むか産まないか決められる権利」が「権利」であり続けるためには、「産める」環境整備が必要であるということ

妊娠してから、「産む・産まない」を決めるのは本当に難しいことです。
日々生活する中で知覚でき、そのままにしていたら産まれてくる存在をどうするか、なんて難しすぎます。
私は産まない選択をしましたが、それが完璧に正しかったかなんて、未だにはっきりとした「答え」はわかりません。
「正解だ」と思えるように、
そして今後の生活を考え、生きていくために中絶を選んだ、
と無理にでも考えてとにかく生きていくことしかできません。

自分が「正解だ」と思えるようになるためには、自分が生き続け、そしてそれを他人に「認めてもらう」ことが必要だと私は感じています。
だって「答え」なんか私自身はわからないから。
本当は、中絶が権利であるという認識が広がって、頑張らなくても「とった選択を認めてもらえる」「罪悪感を持たなくて済む」のが理想です。
でも、現状の高校の保健の教科書では「中絶は命の芽を摘む行為である」と記載がなされ、中絶は悪であると認識させられているような状況にあります
だから、私たちは頑張って生きて「認めてもらう」ことでしか自分がした選択を守ることができないのです。
何が言いたいかと言うと、中絶という選択に対して、自らが自らの選択に対して「正しかった」と自分では言えなくなってしまうほどの社会の雰囲気があります。
その雰囲気のなかで「産むか産まないか」という妊娠した子にとって今後20年を左右する、大人でも難しく感じることがある判断を、【妊娠したら高校に通い続けられないから】という社会の構造の問題を理由として、高校生にさせて良いのでしょうか。
産むか産まないかの選択は権利です。自ら進んで選び取るべきものです。
社会の雰囲気を変えるのは、教育全体の改革からしなくてはいけないでしょう。しかも、それが効果を発揮するのは新たな教育を受けた世代が大人になった頃、つまり下手すると数十年後という可能性があります。
しかし、社会の構造は変えられます。妊娠した子が通える高校を作れば、
【自らの意思とはかけ離れた、または、自らの意思なんて関係なく中絶を選ばざるを得ないような状況―つまり中絶を強制されているような状況
を減らすことができるのです

【産むか産まないか決められる権利がある】と言うためには、妊娠した人が「産むことができる」という社会の仕組みや構造が必要なのです。
現状の妊娠した高校生は、「産むか産まないか決められる権利がある」とは言い難いです。
妊娠するとそれを「懲罰」のように扱われ、産まない選択をしたとしても退学させられる可能性があります。
また、認可外の保育園であると保育料が高いため、妊娠した子が通い続けられる高校があっても、預けられる見込みがなければ「産む」選択をとることは難しくなります。
そのため、妊娠した子が通える高校には連携する保育園も必要です。

妊娠した子は、学校に通い続けるために、そして産んだ場合のことを考えたときに育児と学生生活を両立できないために、「そうせざるを得ない」中絶をしている子が多くいます。
自分の身体のことを、自分の人生を自分で決めるという最低限の権利のための制度さえ日本にはほぼないということです。

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(2)妊娠しても高校生活を楽しむ権利があるということ

私がメディアに出ると、〈高校生なんかで妊娠したから高校生活楽しむなんて贅沢言うな〉〈そもそも高校生でセックスしたのが悪い〉というコメントが絶対につきます。
……そんなに高校生のセックスや妊娠に対して懲罰的な認識を持つ必要って、あるのでしょうか。
大人は避妊について教えてくれないし、そもそも避妊をどれだけしても妊娠の可能性はある。
セックスだって悪事ではない。
中高生は妊娠したとしても自分で責任を取れないのだから、と言われることもありますが、そんなの年齢は関係ありません。
大の大人でも、養育費支払いを拒むなど妊娠後の責任を取れない人はいます。
それなのに、高校生が妊娠すると突然先行きが不透明になります。
「退学になるかもしれない」という不安を持つことになる
のです。
中高生が「責任をとれない」というのは、金銭面での不安があるというのがその言葉の意味だと思います。
その「不安」があるとわかっているならば、妊娠しても「高校生」でいられるように―高卒の資格を取れるようにして将来の経済的な安定をはかれるようにするという施策や、若年妊婦への子育て助成金の拡充をするなどの施策を取るべきです。

また、退学させたくないけど、生徒同士の事故が起きた時のことを考えると退学させざるを得ないという苦渋の判断を下す学校もあると聞いたこともあります。
平成29年度に文科省は妊娠した生徒について、安易に退学させないよう通知を出しました。
そのため、公立高校では退学させることは減っているようですが、私立高校だと依然として退学という処分となることが多くあります。
退学となってしまうと、妊娠した子は高校生らしい、文化祭や日々の学校での日常生活をあまり経験できなくなってしまいます。
私自身も、それが理由の1つとなって中絶を選択しました。
でも、高校生は高校生です。学校という場でしか経験できないことがある以上、妊娠したり、子どもがいたりすることに配慮しつつも、高校生らしい生活を送ることができる体制が必要です。

私が想定しているのは全日制の高校です。
通信制や定時制など、他にも高校の形はありますが、できるだけ短い期間で高校を卒業して安定した収入を得ることが必要であることを考えると、全日制である方が望ましいと考えています。
(もちろん自分に合う形の学校に通うのが1番です。「選択肢」を増やして妊娠した子自身が選べるようにすることが大事だと思います。)

また、10代で妊娠した経験のある人に話を聞くと、地域の育児サークルにいるのは高齢出産した人が多く、行きにくいという意見がとても多いです。
妊娠した子が通える全日制の高校を作れば、同世代で妊娠した子との繋がりもできやすくなるし、毎日会う仲間で境遇が似ている仲間同士だからこそ生徒にとって身近な学校関係者などに育児などの相談をしやすくこともあるでしょう
そのため、高校生で妊娠した子の孤立化を防げるし、必要な支援を提供するなど問題の早期発見が可能となります。
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2.妊娠した子が通える高校を「各論」に留めておくべきではない理由

2つ理由があります。
1つ目は、妊娠した子に対する教育は【特別支援教育】として捉えられるということ、2つ目は妊娠した子の家族やパートナーとの関係の調整が必要であることです。

(1)特別支援教育として捉えられるということ

文科省では「特別支援教育」を、

〈障害のある幼児児童生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという視点に立ち、幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズを把握し、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善又は克服するため、適切な指導及び必要な支援を行うものである〉

と定義しています。
つまり子どもの特性に合わせた教育をする、そのための設備などのハード面、また教育内容などのソフト面の特別な対応をしつつ行われるのが特別支援教育です。
妊娠した子が通い続けるためには、学校施設の段差を減らして事故を未然に防ぐなどのハード面での配慮、また妊娠による体型変化に対応した服装規定、つわりがある場合の調理実習への配慮やオンライン授業を整備することでの教育機会の保障、体育実技への配慮などソフト面への配慮が必要です。

また、日本では特別な配慮が必要があるとされる子ども(=特別支援教育の対象となる子ども)は「障害のある幼児児童生徒」と限定していますが、このように特別な配慮が必要で、現状妊娠した子が退学になってしまうような状況なのであれば妊娠した子達も「特別支援教育の対象」であると思います
障害がある子どもを対象とした特別支援教育では、必要に応じて医療機関や教育委員会との連携が行われていると思いますが、妊娠した子が通える高校でも医療機関や学校にいる間子どもを預ける保育園、(後述しますが)児童相談所など外部機関と連携する必要があります。
このような点においても、妊娠した子が通える高校は特別支援教育の対象であると考えられます。

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(2)人間関係の調整が必要であることが多いこと

私は、妊娠した子とその家族との人間関係の調整、また父親となるパートナーとの関係の調整をすることで、妊娠した子や産まれてくる子どもを守ることができると考えています。
それについて説明します。

(2-1)高校生で妊娠する背景には、その子の家族関係が複雑であることが多くあること

妊娠をしても、自分も家族が誰も気づかず、または自分は気付いているけれども親に言えず、
妊娠に気づいた時には既に中絶できる期限間近であったり、既にその期間を過ぎてしまっていることがあります。
このことからわかることは、妊娠がある程度まで継続されている状況の中には、
・ポジティブなもの
(本人が産む意思を持ち、その上で家族や、パートナーとその家族などと適切に連携がとれているもの)
・家族とのコミュニケーションがうまくいっていないことが原因で妊娠が継続されているもの
・家族からの性暴力
の3つがあることがわかります。
後の2つの場合、保護者と子どもの家族関係の調整をすることで、子どもが抱える家族関係の悩みをなくしたり、場合によっては今後必要な時に育児の協力者となれる人を増やしたりできます。
この「保護者と子どもの家族関係の調整」について、「他所の家に口出すのは良くない、自分の家のことなら自分の家で解決するのが筋」と言う人もいるでしょう。
しかし、私はその子と信頼関係を築くことができる第三者の介入が必要であると考えます。
なぜなら、家族からの性暴力である場合、それは紛れもなく虐待にあたるからです。この場合、前述のとおり学校関係者と児童相談所が連携をとったり、また必要に応じて警察へ通報したりする必要があります。

また、高校生で妊娠して、保護者から縁を切られるという話もあります。しかし、高校生は家を契約することはできず、経済的にも安定しません。
そのため、このような悩みを聞きだすことのできる第三者が介入して、必要な場合は家族関係を調整することが、妊娠した子にとっても、これから産まれてくる子を守るためにも大事となります。
この「第三者の介入」は、妊娠した子にとって居場所である学校に常駐する、子どもを取り巻く環境に注目して問題解決をするという役割を持つスクールソーシャルワーカーなどが行うことが望ましいのではないかと私は考えています。
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(2-2)パートナーとの関係調整の必要性

男性は意識しないと身体の変化がない分、女性ほど子どもができたという認識を持ちにくいと思います。
女性が妊娠しても「妊娠させた」という自覚を持てないと、妊娠している人とそのパートナーに温度差が生まれ、コミュニケーションを円滑にとれなくなることがあります。
私は中絶を選択しましたが、身体に変化がなかったパートナーとは温度差がうまれ、コミュニケーションを円滑にとることができなくなったことがありましたし、他の中絶経験者もパートナーとの妊娠後の関係で悩む人は多いです。
また、高校生での妊娠をきっかけとした結婚の離婚率は高いという研究も目にしたことがあります。(リソースがどこだったか思い出せず…申し訳ないです。)
また、男性の側も高校生以下である場合、産まれたあと養育費を払うのは、収入を得られるようになるまでは男性の親でしょう。
そうすると、高校卒業後自分で養育費を払わなくてはいけないその重要性に気づきにくくなることも考えられます。
妊娠した子を孤立させないため、そして養育費がかかることなど子どもに対する考えを擦り合わせていくため、妊娠している子とそのパートナーとの温度感を同じにするための教育もあった方が良いです。
(どれだけプログラムを用意しても別れるカップルは別れるし、それもその子たちの選択の1つであることは言うまでもありません。)
海外の妊娠した子が通える高校では、ハロウィンなどイベントごとにパートナーも来れるようにし、家族の時間を意図的に作っているようです。
全てが座学の授業でなくて良いのです。
イベントを特別活動の科目として扱うなど、工夫をすることで、2人の関係性を良くし、育児へ向かわせる一助となると考えられます。

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(3)妊娠した子が通える高校は、各論で良いでしょうか?

もちろん、今あげたさまざまな特別な配慮や教育内容などへの対応をし、様々な外部機関と連携して、既存の学校で妊娠した子を受け入れることも出来ると思います。
妊娠したあと産む選択をする子が多い学校や、それに対応している学校ももちろんあると思います。

しかし、論点が多すぎると思いませんか。
妊娠した子が可能である・必要となる教育内容の構築や設備設計、人間関係の調整、児童相談所や生徒が学校生活を送っている間産まれた子どもを預けておくための保育園・医療機関など外部機関との連携…

これらに対応しきれない学校ももちろんあり、全国の高校生全員が妊娠後も高校に通い続けられる保障があるという状態ではないのです。
はじめにも説明した通り、妊娠しても通える学校があり、妊娠後も学び続けられる、それによって経済的に安定できるという見通しがもててはじめて「産むか産まないか決められる権利」があることとなるのです。

妊娠した子が通える高校を作ることで、学び続ける権利を保障でき、そしてそこでどのようなケースがあってどのように対応するのかというノウハウを集約させることもできます。
妊娠した子を孤立させないための対策ともなります。
妊娠した子が通える高校は必要で、論点が多すぎるため、【各論】にはとどめておけないのです。
そして、設置せずに既にある高校に妊娠した子を受け入れるよりもメリットが大きいのです。

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4.最後に

ここまで長々とお読みいただき、ありがとうございます。
妊娠した子が通える高校を「各論」と位置づけるのには無理があることがおわかりいただけたでしょうか。

「妊娠した子が通える高校」は中絶して数ヶ月経った2018年8月9日からずっと私の中で大きなテーマです。
他にも頭の中には性の正しい知識を多くの人に知ってもらうことや、避妊具等のアクセスを良くすることもあります。
しかし、1番大きいのは【妊娠した子が通える高校】です。

昨年くらいまでは自分で学校作っちゃおう!と思っていたのですが、私がやっとの思いで1校作っても、全国展開しなければやはり「産む選択」をできる高校生は増えないですし、何より私が作ったら果たして何年後に開校できるのか、という懸念があり、政策提言の形で公的機関に妊娠した子が通える高校の設置をしてもらいたいと考えるようになりました。

未だ資格受験生&大学に復学することもあり、9月くらいまで思うように活動できない日が続きそうなのですが、9月頃から政策提言として意見したいな…セーフアボーションデーあたりで何かでお話したいな…と思っています。

この記事は22年7月に書き始めたもので、22年9月頃には出したいなーと思っていたのですが、国試で忙しくなってしまい、年が明けてしまいました。
9月頃まではアクティビストとしての活動を活発化できないかなという感じではありますが、本年もよろしくお願いいたします。

この記事はほぼ1人で作成しており、論に抜けやご意見もあるかと思います。下記フォームより送って頂けますと幸いです。

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