サーカスの「平らな目線」が私を救った理由。(その④)
宗教ってなんだろう?(冷静に考える)
日本人は、家が代々どこかのお寺の檀家になっていて、形のうえでは「仏教徒」のひとが多いのではないかと思うが、実際、仏教とはなにか、かつ、自分の家の宗派の特徴をしっかり語れるひとは、とても少ないのではないか?と思う。
自分もその一人です。
ですが、24歳でフランスに留学して、移民としてのイスラム教徒のことを考え、美術史を学ぶうえでキリスト教を徐々に知ることになり、
かつ、個人的な理由で25歳でユダヤ教にも出会うことになり、相当に頭は混乱し始めます。
一神教の不思議。
私は宗教の研究者ではなく、専門家でもなく、単純に、ごくごくパーソナルな範囲で、いくつかの宗教のことをある程度深く考える出会いがあり、結果、より多様な宗教についてもっと知るべきだと思い、個人的に本を読んだり、それぞれの宗教の信者である人たちの話を聞くなどして、自分なりに考えようとしたまでです。
まず最初に出会ったのは、一神教の不思議です。
前の記事でも書いたように、イスラム教徒である、北アフリカの人々と交流し、その文化に徐々に惹かれ、学ぶようになりますが、
その前後に、とても近しい人がユダヤ教徒であるとわかり、そのときに、その人たちから言われた言葉に、ハンマーで殴られた、というのでは足りない衝撃を受けます。
「とても申し訳ないことだけど、僕たちは神に選ばれた唯一の民であって、きみはそうではない。」
その言葉が意味するのは、要するに、同じ人間ではない、ということに等しい。
言われた瞬間には、頭が混乱して
「僕たちは人間だけど、きみたちは虫みたいなものって意味か?」
「僕たちは生きる価値があるけど(天国に行ける)、君たちは生きる価値がない(地獄に落ちる?)っていう意味か?」
…とにかく、どうやら、私は価値がないか、ある意味では汚らわしいもの?というふうに、思われているのだ、と理解する。
そして、一神教。
神は唯一無二である、とする宗教がいくつかあるので、唯一無二が2つあるわけではないので、唯一神であるとするユダヤ教やイスラム教、キリスト教の神様は「同一」なのか?
そうであれば、皆が、神様をそれぞれの形で尊敬し、絶対神としているという理解ができる。
それが「違う」となったら?
宗教の違いが、争いを生むなんて。
僕たちは選ばれた民だけど、残念ながら君たちは違うー。
とにかく、その言葉は、ただただ、悲しさとなって残る。
何が悲しいかというと、それが真実であってもなくても、
「自分たちは救われるが、君たちは救われない」
という言葉を、他者に伝えることは、いったいなんなのか?
私は、実際のところ、真実を知ることはできないから、何も否定したくない。
ただただ、宗教ってなんなんだろう?
という思いだけが、心に沈み込んだ。
そのあたりから、自国の宗教も知らなければと、仏教や神道、それより前の信仰などについて、本を読み始めるー。
そんな中で、少なくとも、自分のなかにあるのは仏教ではないな、
素朴な石が置かれている、そんな、古の信仰が、とてもしっくりくる、と感じるようになる。
それは信仰であって、宗教ではない。
なになに教、という宗教ではない。
自分の小ささを感じて、謙虚になること。
それは、特定の宗教に当てはめなくても、すべてに当てはまる、という気がしている。
何かを憎いと思うことは、自分を攻撃し続けるから。
30歳代前半、会社員だったし、表面的には普通に生産的生活をしながら、ずっと探し続け、けど、上記のような状態から、未だ「人種差別」についての恨みのようなものに苛まれていたし、
自分自身が何者かがわからなくて、とにかく、いろんなことを「理解」したくて、本を読んだりしながら、フランス語の勉強だけは続けていた。
2003年ごろ、チュニジアへの留学を考えていた。
じっさい、アラブ、イスラムの文化の奥深さや、
出逢って知り合って、チュニジアやモロッコの人たちの温かさ、奥ゆかしさが、むしろ日本人と近いように感じたし、
無理をしない、自然と近い、
そんな人々と文化に、本当に惹かれ始めていた。
ただひとつ問題は、それが「フランスの人種差別が憎い」という思い込みと表裏一体になっていたこと。
憎い、と思う気持ちは、(「差別」に対してと)同じだけか、あるいはそれ以上に、自分も攻撃してしまいます。
何かを憎む、ということが良いはずがなく、そうなっている自分自身をどこかで嫌悪し続けているー。
そんな35歳で、サーカスに出逢うのです。
(⑤に続く)
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