見出し画像

【保存版】高専生に送る、大学院進学のススメ。

「高専生(本科,専攻科のいずれも)は進学したほうが良いよ」

僕は大学で仕事をしている間、毎年,母校の高専で開催される進路セミナーにブースを出して,後輩に対してこの様な言葉をかけ続けてきました.

「大学院に進学したほうが良いよ」

これは当然ながら,全高専生に対して伝えたいメッセージなので,ここで理由を述べたいと思います.

誰に読んでほしいか?

進学か就職に悩む全ての高専生,そして現状では就職一択と考えている高専生にも一度立ち止まって考えてもらえればと思います.

また、ご子息が高専進学を考えていらっしゃる親御さんにも参考になる内容かと思います。

執筆者のプロフィール

この記事を執筆している私の来歴は以下の通りです。

  • 工業高等専門学校(通称高専)で機械工学を専攻し、本科および専攻科を修了

  • 旧帝大院に進学し、修士課程・博士課程を修了して工学博士を取得

  • 同大学に助教として勤務

  • 外資系半導体メーカーに転職して現在に至る

つまり、自分自身が高専出身のバックグラウンドを持っており、大学院進学を通じてキャリアを切り開いてきました。

手前みそですが、20代で1000万円を超える給料を貰えているのは、大学院に進学して半導体の世界で博士号を取ったからと言って間違いないと思います。

まず,そもそも「高専って何?」

ここでは、主に保護者の方向けに高専について説明したいと思います。既にご存じの方は次の章までスキップしてください。

国立高等専門学校(略して高専)機構のHPには以下のように述べられています.

高専は、大学の教育システムとは異なり、社会が必要とする技術者を養成するため、中学校の卒業生を受け入れ、5年間(商船高専は5年半)の一貫教育を行う高等教育機関として、現在、51の国立高専があります。

国立高専には、5年間の本科の後、2年間の専門教育を行う専攻科が設けられています。

あまり外部的には知られていないかもしれませんが、高専は5年の課程が基本です。そこを卒業すると、3年次編入と言って、大学の3年生に編入することができます。

あるいは、2年間専攻科に行けば、大学卒業の資格を得ることができますので、そのあとに大学院進学も可能になるのです。

高専では、幅広く豊かな人間教育を目指し、数学、英語、国語等の一般科目と専門科目をバランスよく学習しています。実験・実習を重視した専門教育を行い、大学とほぼ同程度の専門的な知識、技術が身につけられるよう工夫しているのが特徴です。

特に卒業研究では、エンジニアとして自立できるよう応用能力を養うことを目的としており、学会で発表できるような水準の高い研究も生まれています。

高専進学を考えているお子さんをお持ちの親御さん


高専の現状と問題

現在,高専という組織が改革を迫られつつあることは,学生・教員の間での共通の認識であると考えます.

実際に,学科の統廃合,入試制度の大幅な変更が多くの高専で行われています.学科の名前を決定するために先生方が苦労されたであろうことが伝わってきます.

さて,高専が改革に迫られていることは何に起因するか?皆さんは考えたことがあるでしょうか?僕は2つの理由があると考えています.

1つ目は「人口減少に伴う,学生数の減少」
2つ目は「従来の高専組織の役割と社会的需要の不一致」


1つ目は僕の影響力の及ぶ部分ではないので割愛いたします.
ここで大切なのは2点目です.

従来の高専は言わば「兵隊製造所」でした.兵隊とは文句を言わず,上から言われたことをひたすらこなし,1つの方向に向かって邁進する人間のことを意味します.高度経済成長期には,この高度な技術を持った兵隊が短期間で大量に必要になりました.

しかし,高校→大学では合計7年間を要するし,受験勉強をするための時間が長いことを考えると,高度な専門知識を教える時間が無い.では,高校と大学を一貫教育にして早いうちから専門知識を教え込もう.というのが高専設立の経緯であると理解しています.

極めてまともな意見だと思います.社会的な需要に良く一致しています.なぜならこの頃は,どちらに向かえばよいか明確であったため一致団結して一方向に突き進む原動力が必要だったからです.

しかし現在はどうでしょうか?
進むべき方向は誰が示してくれるのでしょう?

僕は思います.誰も分からないと.つまり方向が容易に変化するのです.そんな時,その方向に進むために採用された兵隊はどうなるのでしょう?

答えは「不要になる」です.たとえ組織にとって不要になったとしても,以前までは,終身雇用制度が残っていたため(楽しいか否かは置いておいて)組織に居場所が有りました.

しかしこれからは違います.欧州・米国に追従するように問答無用でクビが言い渡される日が近いうちに来るでしょう.

高専生が今後の世界で生き残る上で必要な能力とは

僕はそうなって欲しくはないのです.ただ現状の高専生は,組織の方向が大きく転換される際に真っ先に切られる対象者でしょう.

では,どうすれば切られないか?

答えの1つは「代替可能性の低い職能(スキル)を身につけること」ではないでしょうか.では,代替可能性の低い職能とは何か?

僕は「クリエイティブ能力・コミュニケーション能力を要する職能」と考えます.前者は幅広い専門知識,後者は幅広い対人関係で鍛えられます.

私は大学院に進学することが,これらを鍛える有望な選択肢になると考えます.大学院に進学すれば,研究を行う中で自分の専攻以外の専門知識を学ぶ機会が増えます.つまり高専在学中に比べて,幅広い知識が得られる可能性が高いです.

また,周囲の顔ぶれもバラエティー豊かになる.すなわち,幅広い対人関係が得られます.文学部,経済学部,教育学部という全く違う背景の人々と関わり合うことでその能力が高まることは必然と言えます.

なぜ進学しないのか?

進学をしないという決断をする学生の理由を聞くと,以下の様なものが散見されます.それぞれに対して私見を述べます.

・これ以上勉強したくない
→大丈夫です.就職したら今よりも勉強することになります.

・経済的な事情で学費が出せない
→(学校にもよりますが)奨学金など,探せば経済的な支援は豊富に存在します.自分も修士課程の2年間は毎月12万円の返済不要の奨学金を頂いていました(本当にありがたかった).諦めないで下さい.

・早く社会に出て実践的な職能を磨きたい
→これは,場合によっては「アリ」かもしれません.その会社が幅広い専門知識と幅広い対人関係を提供してくれるかどうかをしっかり見極めて下さい.

他にも「こんな理由があるよ」というのがあればお知らせ下さい.追記いたします.

最後に

いかがでしたでしょうか?もしかしたら痛いところを突かれて,白紙に戻されたような気分の高専生もいらっしゃるかもしれません.しかし,この選択は後の人生に大きな影響を及ぼします.

僕は本科卒業後,専攻科卒業後,修士課程修了後,という3度もの進路選択を繰り返してきました.自分も含めた各々の選択の結果を見守る中で,今この様な意見を持つに至っています.きっと皆さんにもお役に立てる部分があるのではないでしょうか?

将来有望な高専生の進路選択の一助となれば幸いです.
最後まで読んで頂きありがとうございました.

いくつかキャリア関連でおすすめの記事を載せておきますので、良ければ読んでみてください。


この記事が参加している募集

よろしければサポートもよろしくお願いいたします.頂いたサポートは主に今後の書評執筆用のために使わせていただきます!