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"歴史" 系 note まとめ

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2022年12月の記事一覧

80年代の音楽の楽しみ方〜地方在住の高校生の場合〜

こんなに立派なリビングではないにしろ、テレビやステレオは居間にでんっと鎮座し、家族全員が同じTV番組を見て同じ音楽を聴くのが普通だった70年代。 それが80年代に入ってラジカセやミニコンポが普及すると、音楽はリビングで聴くものから各自が自室で聴くものに変化していきます。 中でも可搬性に優れたラジカセは音楽の聴き方・スタイルを大きく変えたという点で、ウォークマンやiPodに匹敵するエポックメイキングな製品だったのではないでしょうか。 さらに進んで、私が青春時代を過ごした8

【新刊試し読み】『歴史学の作法』「あとがき」より抜粋

このところグローバル・ヒストリーや感情史、そして歴史叙述の問題をめぐって議論がかしましいし、歴史教育も大いに話題になっている。また大学でのテクスト用の著作もずいぶん出ている。とはいえ、歴史学が抱える多くの問題のすべてをまとめ、全体を関連づけた書物がないので、その穴を埋めよう、というのが本書執筆の動機である。 しかし、たんなる研究案内とか史学概論として総花的におとなしくまとまった書物――そうしたものが多いように見受けられるのだが――ではなく、全体史を射程に収めたこれからの歴史

ポークカツレツととんかつは何が違うのか(その1)

新刊『なぜアジはフライでとんかつはカツか?』、冒頭部分無料公開中です。 さて、とんかつの歴史に関する言説において、必ずといっていいほど話題に出されるのが、「ポークカツレツととんかつは何が違うのか?」です 箸で食べるとか、そのためにあらかじめ切ってあるとか、ご飯に合うとか、様々な説がありますが、ポークカツレツととんかつの違いについて最も多く言及されるのが、「厚さ」についてです。 "カツレツ""とんかつ""違い"で検索すると、ネット上では「ポークカツレツは薄く、とんかつは厚

【歴史の入口に!】歴史好きが紹介する中央アジアで活躍した女性たちのマンガ

今年ももうすぐ終わりですね。 今年最後の歴史の入口に!です。 12月に紹介するマンガは2つです。 たまたまどちらも中央アジアが舞台という共通点があったので、このタイトルにしました。 歴史の入口に!のタイトルが1番悩むんですよね。 できる限り共通点を入れたタイトルにしていますが、共通点を考えることを意識せずにマンガを読むので、あとで頭を抱えるという・・・ なぜ共通点を入れるかというと、つなげて読むとその共通点に対する理解が深まると考えているからです。 なかったときは苦肉

歴史好きな高校生の皆さん、あなたの知的好奇心を刺激する「世界史リブレット」(山川出版社)をぜひぜひ読み漁ってみてください。現代文や小論文対策にもなるよ。ただ、あまりに面白いので他の教科の勉強は忘れないようにね!(笑)

歴史の扉⑨ 広島・長崎のウラン鉱石は、コンゴからやってきた―ウランの世界史

スマホ(→歴史の扉⑦ スマホの世界史)の部品に使われているコバルトが、コンゴの過酷な採掘によって供給されている。そんな話を、スマホの画面を通して目にする機会も増えてきた。 写真家セバスチャン・サルガドの撮影した金鉱を彷彿とさせる光景だ。これが、21世紀のテクノロジーをささえている現実がある。 そもそもコンゴでコバルト開発が始まったのは1906年のことだ。UMHK(上カタンガ鉱山連合)は1925年までに25万人の現地住民を動員し、急増する世界の需要の90%を満たした。 だが

ローマ帝国とポルトガル(3)ローマ化する都市

00.はじめに ここでは、ポルトガルの歴史についてお話しした際のメモ書きを公開しています。今回はローマ時代を扱った部分です。なお、メモ書きは、アンソニー・ディズニー著『ポルトガルとポルトガル帝国の歴史』に基づいて作ってあります(ほぼ翻訳になってしまっていて、反省ですが)。関心のある方は、Anthony Disney, A History of Portugal and the Portuguese Empire(2009)をご覧ください。 前回までの記事 (1)、(2)で

3-3-3-2. 主権国家体制の確立 新科目「世界史探究」をよむ

さてさて、16〜18世紀を通して、西ヨーロッパでは経済成長が進んでいった。 これは、軍事力と戦費調達能力を強化し、国内産業への投資により輸出を増やす政策(重商主義政策)がとられるようになった成果である。 これに対し、東ヨーロッパは、相対的に西ヨーロッパの穀物を調達する後背地に成り下がっていった。 工業製品をつくる西ヨーロッパと、その原料を調達する東ヨーロッパに、命運が分かれた。で、その影響が、いまもなお影を落とし続けているというわけだ。 *** オランダの覇権 とはいえ

『鎌倉殿の13人』を今更イッキ見する出遅れ勢のためのガイド【ネタバレ無し】

『鎌倉殿の13人』の最終回を12月25日の日曜日に見た。 放送日の1週間後だ。出遅れにもほどがある。 でも、違うのだ。 私が『鎌倉殿』の第1回を見たのは、最終回の放映後だった。 つまり、全48回の大河ドラマを1週間でイッキ見したのだ。 正確には6日間で見てしまった。 約34時間を1日6時間弱、8話ペースで見てしまった。 1日5カマクラの日もあれば、10カマクラを超えた日もあった。 起きたら1~2カマクラ。昼休みに1カマクラ。 移動時間に1カマクラ。夕食後に3カマクラ、睡眠時間

人、人、人。人しかいない映画:『ミスター・ランズベルギス』を観て

 とにかく人がたくさん出てくる。最初から最後までずっと画面が人で埋め尽くされている。  監督はセルゲイ・ロズニツァ。ベラルーシ出身、ウクライナ育ち。ロシアがウクライナを侵攻したあと、日本でも『ドンバス』や『国葬』が立て続けに劇場公開されたが、僕は見ていなかった。したがって、僕にとってはこれが初めてのロズニツァ作品となる。  パンフレットによれば、ロズニツァ監督はこれまでもずっと群衆に関心を持ってそれを映画に撮ってきたらしい。今回の作品も、群衆のパワーが画面から溢れ出てくるよう

鉄器時代のポルトガル(上)

00.はしがき ここでは、ポルトガルの歴史についてお話しした際のメモ書きを公開しています。今回は鉄器時代を扱った部分です。なお、メモ書きは、アンソニー・ディズニー著『ポルトガルとポルトガル帝国の歴史』に基づいて作ってあります。関心のある方は、Anthony Disney, A History of Portugal and the Portuguese Empire(2009)をご覧ください。 なお、「鉄器時代のポルトガル」はおおむね三回の投稿を計画しています。 01.紀

【技術教師旅】印刷博物館

今回は、東京都文京区にある「印刷博物館」に行ってきた。 半年ほど前、ラジオで印刷博物館というものがあると知り、印刷技術にはどのような歴史・文化があるのか気になっていた。 設立から20年の歴史ある印刷博物館、企業が運営する博物館は専門性が高く、とてもユニークなので見ていて楽しい。 入り口を入ると、壁一面に古代から現代までの、壁画、印鑑、木版、印刷物が展示されている。全てレプリカで作られており、ショーケースに入れずにダイナミックに展示されている。思わず一つ一つの作品に引き

元密輸人女性が語る 町と国際ネットワークの現代史

某土屋教授が映像出演したそうです。以下某K大ウェブサイトから転載。

新刊無料公開『なぜアジはフライでとんかつはカツか?』 その1「序」

新刊『なぜアジはフライでとんかつはカツか?』発売中です。 新刊ではカツレツ、とんかつ、魚のフライ、コロッケの様々な謎を解き明かすとともに、嘘・デタラメだらけの日本西洋料理近代史を、膨大な資料をもとにゼロから書き直します。 それでは『なぜアジはフライでとんかつはカツか?』、冒頭部分をお楽しみください。 1853年7月8日、黒船来航。1858年7月29日に日米修好通商条約が結ばれ、翌年横浜が開港することとなる。 外国人を迎えるにあたってまず日本人がしたこと。それは遊女街す