大工よ、屋根の梁を高く上げよ シーモア―序章―

書影

本作の感想を述べる前に…

今年よんだサリンジャー作品をよんだ順に挙げると

フラニーとズーイ(もしくはフラニーとゾーイ―)
https://note.com/seishinkoji/n/nbf9bc5024e7f

キャッチャー・イン・ザ・ライ(もしくはライ麦畑でつかまえて)
https://note.com/seishinkoji/n/nc68eddbaf5d1

ナイン・ストーリーズ
https://note.com/seishinkoji/n/nc2ca9a4dd097

他に関連するものとしては
翻訳夜話2 サリンジャー戦記
https://note.com/seishinkoji/n/nedb1b948fe04

ついでにサリンジャーの映画のレビューもあります
https://note.com/seishinkoji/n/nbc33d6c99ad8

と、こんなところ。

今おもい返しても、全部、めっちゃおもしろかった。

が今回の本作は、なかなか厳しいものがあった。

ジャック・ロンドンに続き、サリンジャーも落差が激しい。(一般的にはサリンジャーはそうで、ジャック・ロンドンはそれほど落差はないはず)

で、アメリカでは未単行本化だけれど日本で出ているのが
「このサンドイッチ、マヨネーズ忘れてる ハプワース16、1924年」というもの。これは日本での刊行にあたり9つの短篇~中篇が選びだされている。
(もうひとつのナイン・ストーリーズ、などと題して)

「キャッチャー・イン・ザ・ライ」(以下:キャッチャー)は、ホールデン君の物語で、ビフォアキャッチャー(キャッチャーの出る前)にホールデン君にまつわる短篇がいくつかある(これが、このサンドイッチ~に収められている)

で、アフターキャッチャーとしては「フラニーとズーイ」に代表される
「グラース・サーガ」、つまり、グラース家の7人きょうだいの一連物語
(いちおう上から&性別は、シーモア男、バディ男、ブーブー女、ウォルト男とウェイカー男は双子、ズーイ男、フラニー女)が中心となる。

いや、中心となる、というかキャッチャーが1951年で、フラニーが1955、ズーイが1957、これらをフラニーとズーイとして出したのが1961、本書の大工~が1955で、シーモア序章が1957で、同じように併せて出したのが1963。
ちなみにグラース家のシーモアが登場する代表的な物語「バナナフィッシュ日和(これは柴田元幸訳で、野崎孝訳では「バナナフィッシュにうってつけの日」)」で短篇としては1948。ナイン・ストーリーズとして出るのは1953。

さらにこのあと僕が読もうと思っている短篇集「このサンドイッチ~」の最後に入っている「ハプワース16、1924年」は1965の作品で、サリンジャー最後の作品と言われている。

このように見てみると、ビフォアキャッチャーのバナナフィッシュを除くと「アフターキャッチャーはグラース家の物語のみ」といえそう。

えっともっと細かいことを言っておくと、ナイン・ストーリーズに収録されている「コネチカットのアンクル・ウィギリー(これは柴田元幸訳で、野崎孝訳では「コネティカットのひょこひょこおじさん」)」等(小舟のほとりで、というのもあるそうだ)はグラース家の物語だがこの時点でネーミングは施されていないのでとりあえず除外。

さて前置きが長くなった…と言いたいところだが、今回紹介の本作(大工よ~)は、かなり難解で回りくどく、語り手バディ(シーモアの次の弟)も本文で言っているようにカッコが多すぎる!本文のままに書くとこんな感じ

(((((((((())))))))))

たぶんこれは読まなくていいと思う。説明がきつすぎる。でも僕は全部よむ。

ちょっとだけ言っておくと前半の「大工~」はバディが冷静。

ちなみにシーモアは「バナナフィッシュ~」で妻ミュリエルと海にいって、最後に自分のこめかみを撃ち抜いて死ぬ。これが「ナイン・ストーリーズ」のスタート。すごいインパクト。ナイン・ストーリーズはめっちゃおもしろい。

で、ミュリエルとの結婚式の顛末がこの「大工~」であるわけ。

ちなみに余談になるけれど、この大工~はバディ、ミュリエルのとりまき3人は感情的(まぁ新郎=シーモアの神経質ぐあいでは無理ないが)、で、そこにミュリエルのお父さんのおじさんと言ったかな、唖の人物が出てきてすごくいい味だしている。調和されている。しいていえばこの読後感はなかなかGood。

が、「シーモア序章」ですべてがもののみごとに破壊される。バディがまじで狂っている。ある意味ではおもしろい。上記によるとこの作品間には2年がある。

サリンジャーとしてこの続編が「ハプワース16、1924年」でありこれは1924年シーモア当時7歳がハプワースというキャンプ地での16日目の出来事を両親に宛てた手紙という形式をとっている。

僕はハプワースを読んでからこのnoteを書いてもよかったかもしれない。グラース・サーガとしてまとめて。

ところが僕はさらにそのあとにサリンジャーの伝記(600ページぐらいある。5000円もした)を読む。これでたぶん終わり。

つまりサリンジャーという人物に焦点をあてたときに、シーモア序章~ハプワースの間には8年もの間があり、読者はここで8年待つことになる。

ということで僕も8年後に読んでまたnoteに書きます。お楽しみに。

・・・とはならなくて、このあと読むけれど、とりあえず大工~シーモア序章としてセットで当時も出版されたわけだからこの感想として記しておく。

だがハプワースはかなり酷評されているようだ。どんな作品なんだろう。またたぶんnote書きます。

そして最後の最後には伝記を読破して、僕なりのサリンジャーをここで綴ろうと思います。いやぁサリンジャーってめっちゃおもしろいですね。もう、自由に書いてやるぞ。

お楽しみに☆

【著書紹介文】
個性的なグラース家七人兄妹の精神的支柱である長兄、シーモアの結婚の経緯と自殺の真因を、弟バディが愛と崇拝をこめて語る傑作。

(書影と著書紹介文は https://www.shinchosha.co.jp より拝借いたしました)

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