オンブレ

書影

【著書紹介文】
アリゾナの荒野を行く七人を乗せた駅馬車――御者メンデスとその部下アレン、十七歳の娘マクラレン、インディアン管理官フェイヴァー夫妻、無頼漢のブレイデン、そして「男(オンブレ)」の異名を持つジョン・ラッセル。浅黒い顔に淡いブルーの瞳、幼少期をアパッチに育てられた伝説の男と悪党たちが灼熱の荒野で息詰まる死闘を繰り広げる。レナードの初期傑作二作品を、村上春樹が痛快無比に翻訳!

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まず「オンブレ」を調べるとombre、これはフランス語で、「陰影をつける」という意味で、いわゆるヘアカラーみたいな画像がたくさん出てくる。本書ではスペイン語のhombreで「男」という意味で使われる。

久々に「無口な」主人公に出会った。とてもいい。それがジョン・ラッセル。読後感としては「グレート・ギャツビー」のようなところもある。ギャツビーでいうところの語り手ニック・キャラウェイが、本書では語り手アレンとなる。ジェイ・ギャツビーがジョン・ラッセルと相なるわけだがラッセルはどうやら汗をかかない。

冷徹にも見受けられるが始終ラッセルは黙考しているようで、無私の精神のまま最後のシーンに至る。

語り手アレンは回想してこれを3か月で書き上げたというが、随所に「人をそう簡単に判断することはできない」といったことを綴る。この、ラッセルを「信頼」している感じがとてもいい。

いちばん最後のシーンがとてもよかった。目頭が熱くなった。

本書原作の映画は1967年の「太陽の中の対決」だがこれはAmazonPrimeでも観られなかったので中古DVDを注文した。またこのnoteに加筆すると思います。

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さて本作には30ページほどの短篇「三時十分発ユマ行き(Three-Ten to Yuma)」も収録されていて、こちらは先に映画を観てみた(1957年の方の「決断の3時10分」)。

30ページの小説が90分の映画になったため、特に前半の肉づけが大きかったが、モノクロながらなかなか良い映画だった。映画の方がよかったかもしれない。映画と原作では登場人物の名前が変わっているが、映画の主演俳優グレン・フォードより、原作でいう臨時保安官スキャレン(映画では貧乏牧場主のダン)えーっと演じたのはヴァン・ヘフリンという人だけど、この人に味があった。
映画の方の筋でいうと、雨が降らずに困っている平凡な貧乏牧場主のダンが、報奨金200ドルを目当てに慣れないピストルを握ってがんばっているという話で、とにかく「だいじょうぶかいな?」、さまになっていない、という感じで話が進んでいくが、妻と子どもたちのためにお父ちゃんはがんばる、勇気を見せる。
最後は意外な結末となるが、ダンの微笑みがとてもよかった。はでさはないけれど、よかったラスト。ちょっとうるっときました。

(書影と著書紹介文は https://www.shinchosha.co.jp より拝借いたしました)

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