抗議活動が暴走…。マンチェスター・ユナイテッドのサポーター。一部が競技場に乱入し、試合が延期に。サッカーの話
イングランドのサッカー場で暴動が発生。マンチェスター・ユナイテッドのサポーター数千人がスタジアム外で抗議活動を行っていたが、一部がスタジアムに乱入して、2日に予定されていた試合が延期となる事態となった。
この事件で、警官が2人けがしたという。うち1人は、割れた瓶を持った男に襲われて、顔面に切り傷を負ったという。
事の発端は、欧州スーパーリーグ構想を巡るオーナーの行動を疑問視してのもの。ユナイテッドは、一度はスーパーリーグに参加の意向を示したが、サポーターや国などの反対を受けて、撤回している。
しかし、サポーターの怒りは収まらない。アメリカ出身のオーナー、グレーザー家のサポーター無視の姿勢に批判は高まり、オーナーの退陣を要求している。伝統あるクラブが外国のオーナーの手に渡ったことへの長年の不満が爆発した形だ。
サポーターの思いは分かるけれど、何点か問題点を指摘したい。
① 抗議の方法が「アメリカ的」では?
ファンの怒りをスタジアム外で平和的に意見表明するのは、「表現の自由」として認められるだろう。しかし、今回、競技場外で警官を襲い、競技場にまで乱入して、ビール瓶や赤く燃えた発煙筒を投げるなどした行為は許されないのでは。
アメリカ資本によるサッカーのビジネス化に異論を表明したいのだろう。しかし、競技場への乱入となると、今年1月の米国議会議事堂襲撃事件を彷彿させる。
アメリカ的なビジネス手法を批判しているのに、その抗議活動が施設内への乱入と言う「アメリカ的」手法を取っているのでは、「同じ穴のムジナ」ではないだろうか?
それとも、この乱入は、1960年代から90年代に猛威を振るった「フーリガン」行為なのだろうか。それならそれで時代錯誤といえよう。今や、女性も子供も安心してスタジアムで観戦できる時代となったのに、「男性中心主義」の具体化と言える「フーリガン」行為は時代遅れで、その考えすら受け入れられない。
② ユナイテッドの「国際主義」と真逆の方向性
スーパーリーグの是非は人それぞれだろうが、ユナイテッドのサポーターが「アメリカ的」なものに拒否反応を示すことに、違和感を覚える。
マンチェスターには、「ユナイテッド」のほかに、マンチェスター・シティがある。同じ町にある2クラブだけに、お互いのライバル意識は相当なものだ。
しかし、以前は「ユナイテッドは世界中からファンがいて、シティには地元ファンが多い」という解説を耳にすることがあった。
シティは地元のファンから愛されて、かつて実質3部リーグに落ちても、スタジアムに大勢のファンが応援に行っていたと聞く。そのため、クラブはそのクラブ愛にあぐらをかいて、クラブ改革を怠ってきたという。もちろん、今では、海外資本がオーナーとなっているのだが。
以前より世界中からファンのいるユナイテッドは「国際主義」といえる。それなのに、海外オーナーへの不満を出すこと自体が不思議である。
今シーズンは、ライバルのシティが優勝目前。延期となったユナイテッド対リバプールの試合で、ユナイテッドが負ければ、宿敵が優勝するだけに、フラストレーションはかなりのものだったのだろう。
ユナイテッドは国内のリーグ戦の優勝20回。クラブで最多だ。しかしリーグの優勝は2012-13シーズンを最後に遠ざかっている。そのイライラも、今回の爆発の遠因ではないか。
かつてのユナイテッドは光り輝いていた。アレックス・ファーガソン監督の下、1998ー99年には、プレミアリーグ、FAカップ、そして欧州チャンピオンズリーグを制し、「トレブル(3冠)」を達成。ファーガソン監督がユース時代から育ててきたベッカム、ギッグス、スコールズ選手らが躍動しての偉業だけに、当時を知るサポーターとしては、まばゆいばかりの記憶として残っているのだろう。
ユナイテッドのサッカースタジアム「オールドトラッフォード」は別名「シアター・オブ・ドリームス(夢の劇場)」と言われる。そこで披露されるのは、サッカーの好ゲームであるべきで、暴徒の惨劇ではない。
ユナイテッドのサポーターよ、サッカーの応援のために「ユナイテッド!(団結せよ!)」
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