見出し画像

ヤクルトの小澤投手。無死満塁の絶体絶命のピンチを切り抜けた。地獄からはい上がった男が勝利につなげた

ヤクルトに移籍後初めての1軍マウンドが、無死満塁といきなりの大ピンチ。しかしヤクルトの小澤怜史投手(24)は慌てなかった。地獄からはい上がった男の意地。アウトを3つ重ねて切り抜けた。ヤクルトの勝利へといざなう好リリーフだった。

26日に神宮で行われた巨人戦。このカードの3戦目だった。先の2試合は勝ったチームが二けた得点。波に乗ったチームが、一気に試合をもっていく。投手陣にとっては緊張感が漂う3戦目となった。

その分水嶺が3回表だった。ヤクルトは1-3とリードされた場面で、この回の守備につく。しかし先発のスアレス投手が安定せず、2点を追加され、なお無死満塁のままマウンドを下りた。

「火消し」に送り込まれたのが小澤投手だった。巨人はイケイケ状態。その中で、ヤクルト移籍後、初の1軍マウンドとなったのだから、かなり酷なシチュエーションだった。

この日に育成選手から支配下登録となり、いきなり1軍戦となった。あまりに急な話に、1軍用の背番号70のユニホームも間に合わない。2軍時代の「014」の背番号をつけたままで投げることに。

それでも小澤投手は落ちついていた。8番吉川選手相手にカウント2-2からの6球目。低めの147キロストレートでサードライナーに打ち取る。

続く打者は、9番の戸郷投手。初球をファールにして打ち気がありそうに見えた。カウント1-1からの3球目。バッターはスクイズの構えに切り替えた。小澤投手はワンバウンドになる143キロ直球を投げる。スクイズを試みたバットは空を切り、飛び出した三塁走者の坂本選手をタッチアウトにした。

ツーアウト。カウントは1-2と追い込んだ。小澤投手は113キロのカーブでタイミングを外し、空振り三振に斬って取った。大ピンチを計10球で切り抜けた。この好投で、流れはヤクルトに。直後の攻撃で、ヤクルトはビッグイニングとなる6点を奪って逆転した。

小澤投手は、この日、4回2失点と上々の結果で、ヤクルトでの1軍デビューを果たした。もしも三回の大ピンチで、得点を許していたら。流れは完全に巨人に行っていただろう。
試合はヤクルトが11-10と打ち勝った。決勝打は村上宗隆選手の3ラン。お立ち台に立ったのは村上選手だけだった。ただ、私は、この試合の影のMVPは小澤投手だと思った。

プロ7年目の小澤投手。高校卒業後、ソフトバンクに入団したが、1軍マウンドは2017年の2試合だけ。その後、育成選手となり、2020年に戦力外通告を受けた。

そこから小澤投手の復活劇が始まる。合同トライアウトを受けて好投。ヤクルトから育成選手としての契約を勝ち取ったのだ。昨季は2軍での登板だけだったが、サイドスローに転向し生き残りを賭けた。地獄からはい上がるため、プライドをかなぐり捨てての挑戦だった。

そして、今季2軍で24試合に登板し、防御率1.30と好投を続けて、1軍キップをつかんだのだ。

地獄からはい上がってきた男だけに、無死満塁の大ピンチなど、怖くも何ともなかったのだろう。

一度地獄を経験した人間は強い。小澤投手も間違いなく、その一人だ。首位を独走するツバメ軍団に、貴重な戦力が加わった。小澤投手の今後の活躍が楽しみだ。

この記事が参加している募集

スキしてみて

スポーツ観戦記

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?