まさ せいこう

富士山の麓で創作の森を彷徨うカエル(筆者)。小説・エッセイ・写真などの創作活動をしてい…

まさ せいこう

富士山の麓で創作の森を彷徨うカエル(筆者)。小説・エッセイ・写真などの創作活動をしています。Kindleで6冊の「超ショート・ショート」を出版していますが、更に活動の場を広げ、創作活動をされている方々と繋がりたいと願っています。

記事一覧

人生は洗濯の連続

むかしむかし、おじいさんとおばあさんが住んでいました。 おじいさんは山に芝刈りに、おばあさんは川に洗濯に。 絵本を開きながら、私は母親から聞かされた昔話を、わが…

錬成は電卓の親族

なんでぇ、今回のお題は「錬成は電卓の親族」だってぇ?  またやっかいなお題を出しやがるじゃねぇか。 おいらにそんなん分るかぁっての。 そんなことより商売商売! 商売…

宇宙人ジョーンズのビジネス観察記録「日本の工場長という生き物」

はじめに私は工場業務の効率化を支援するコンサルタントとして活動していますが、ある日、不思議な出来事が起こりました。 まるで第三者の意識が私の脳内に入り込んでき…

100〜
割引あり

激辛の鏡

味覚を視覚化する「味覚を映す鏡」は、開発者たちの期待通り、食べる前に味を確かめる安全な方法として注目を集めていた。 酸っぱい梅干しを映せばしっとりとした雨の景色…

夜からの手紙

寝苦しい夏の夜、ヒロシは枕元に見慣れない封筒を見つけた。 差出人は 夜(幽霊代筆) と書かれている。 そこには涼しげな文字でこう書かれていた。 拝啓 ヒロシ様。私は…

インドを編む山荘

編み物で世界を表現する芸術家として有名な老人のもとに ある日特別な依頼が舞い込んだ インドを編んでほしいという依頼だ デザインは大変細かく 網目単位に指示がなされて…

5

バンドを組む残像

久し振りに親子三人で囲む週末の食卓 お父さんが娘に 母さんからおまえがバンドを始めたって聞いたぞ 面倒くさそうに頷く娘 お父さんはお構いなしに喋りだす 実は、俺も…

6

残り物には懺悔がある

やれやれ 神は、ため息をついて地球を見る かつては美しい青い星だった 今では、その輝きはどこか鈍く曇って見える 急速に文明を進歩させた人類 それはそれで正解だと思う…

3

可愛い子には変化をさせよ

神様は日本の親子を見て嘆いた 子離れできない親 親離れできない子 過保護すぎて、このままじゃ自立できないな 昔はよく 可愛い子には旅をさせよ といったものだが 危ない…

5

「ときめきビザ」

地球上の争いごとや 憎しみ妬みといった負の感情を 遂に制御される時代が訪れた すべての生き物が穏やかな日々を過ごせるようになり 青い地球は穏やかな表情を取り戻した …

5

「ひらめき膝(未知との遭遇)」

やっちまった 自動車事故 と思ったが 何ともなかった 体にも車にも傷ひとつない 俺は高速道路を走行中 正面から突っ込んできた巨大な光に 避ける間もなく衝突した はずなの…

5

「タンバリン湿原」

ある日 原生林の奥地に隕石が落ちた その場所は湿原となったことが衛星写真で確認された 何組もの調査隊が現地に向かったが 誰一人戻らない 物好きな自称探検家のヒロシが…

6

「モンブラン失言」

秋 今年もモンブランを作る季節 モンブランは甘いと思われがちだが 俺の作るモンブランは 形も 甘さと渋さのバランスも 完璧なんだ いつもの通り 20年前に モンブランの…

6

秘密警察を宣伝してみる

求人難である 優秀な人材が全く集まらない 今、我が国の秘密警察は存亡の危機に直面している その理由は 組織が一般には知られていないからだ 知られていても ブラックとい…

半笑いのポッキーゲーム

我が家の愛犬ポッキー 九歳雄のチワワだ 妻と娘にはいつも愛想よく振る舞う 喜んでキスもする しかし この俺には懐かない 男同士だからか 俺だって愛らしいポッキーとキ…

「金持ち教習所」x「壁待ち強襲女」

金持ちのお坊ちゃま達が資産形成を学ぶサークルがある 有名な投資家たちが指導し高い評判を得ている もちろんお坊ちゃま達親の評判である 庶民からは 金持ち教習所 と妬ま…

人生は洗濯の連続

人生は洗濯の連続

むかしむかし、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
おじいさんは山に芝刈りに、おばあさんは川に洗濯に。

絵本を開きながら、私は母親から聞かされた昔話を、わが子にも読み聞かせていた。
桃太郎である。

私の母親は、祖母から聞かされたという。
祖母はさらにその母から。

そして私の娘も、いつか生まれてくるであろう娘に、絵本を開き同じ話を繰り返すのだろう。

だけど、昔話に出てくるおばあさんたちは

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錬成は電卓の親族

錬成は電卓の親族

なんでぇ、今回のお題は「錬成は電卓の親族」だってぇ? 
またやっかいなお題を出しやがるじゃねぇか。
おいらにそんなん分るかぁっての。
そんなことより商売商売!
商売ってのは、やらなきゃなんねぇことが山ほどあるんだよ。
金勘定だってきっちりしねぇと、またカミさんにお小言食らっちまう。
え、計算の手が早いってか?
そりゃそうさ!
毎日毎日、カミさんに怒られないように必死で鍛えてんだからよ。
俺みたいな

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宇宙人ジョーンズのビジネス観察記録「日本の工場長という生き物」

宇宙人ジョーンズのビジネス観察記録「日本の工場長という生き物」


はじめに私は工場業務の効率化を支援するコンサルタントとして活動していますが、ある日、不思議な出来事が起こりました。

まるで第三者の意識が私の脳内に入り込んできたのです。

その意識の主は、「宇宙人ジョーンズ」と名乗り、遥か遠くの高度文明社会から地球を観察しにやって来たと言います。

ジョーンズは、私が仕事中に突然話しかけ、鋭い指摘や奇妙な質問をぶつけてきます。

そのやり取りが面白すぎて、つい

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激辛の鏡

激辛の鏡

味覚を視覚化する「味覚を映す鏡」は、開発者たちの期待通り、食べる前に味を確かめる安全な方法として注目を集めていた。
酸っぱい梅干しを映せばしっとりとした雨の景色が、苦いコーヒーを映せば深い森の映像が浮かび上がる。
こうして人々は、事前に食べ物の味を見て選ぶことができるようになった。

ある日、レストランのオーナーがその鏡に「激辛カレー」を映してみたところ、鏡が突然、異常な反応を示した。真っ赤なカレ

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夜からの手紙

夜からの手紙

寝苦しい夏の夜、ヒロシは枕元に見慣れない封筒を見つけた。
差出人は
夜(幽霊代筆)
と書かれている。
そこには涼しげな文字でこう書かれていた。

拝啓 ヒロシ様。私は夜の代理を務める幽霊です。貴方が暑さで寝苦しい思いをされているかと思い、涼しさをお届けしようと現れました。私がそばにいるだけでひんやりするはずですから。

その瞬間、ヒロシの部屋にひんやりとした風が流れ、汗ばんでいた肌が少し涼しくなっ

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インドを編む山荘

インドを編む山荘

編み物で世界を表現する芸術家として有名な老人のもとに
ある日特別な依頼が舞い込んだ
インドを編んでほしいという依頼だ
デザインは大変細かく
網目単位に指示がなされていた
このような依頼は彼にしかできないであろう
高齢である老人は
これが最後の仕事に相応しいと感じ引き受けた

そして彼は静かな山荘に一人引きこもり
黙々と編み物を続けた
サリーの鮮やかさやインドの神秘性を象徴する複雑な柄が
次々と編み

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バンドを組む残像

バンドを組む残像

久し振りに親子三人で囲む週末の食卓

お父さんが娘に
母さんからおまえがバンドを始めたって聞いたぞ

面倒くさそうに頷く娘

お父さんはお構いなしに喋りだす
実は、俺も昔バンドやってたんだよ

娘はまた始まったと思いながらも
へぇ
とだけ答えた

お父さんはすっかり自分の世界に
俺たちのバンド、あの頃はマジですごかったんだ
地元じゃかなり有名でライブはいつも満員
ギターを持ってステージに立つとファ

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残り物には懺悔がある

残り物には懺悔がある

やれやれ

神は、ため息をついて地球を見る
かつては美しい青い星だった
今では、その輝きはどこか鈍く曇って見える
急速に文明を進歩させた人類
それはそれで正解だと思う
しかし
森は削り取られ、動物たちの嘆きの声が響いている
海も空も大地さえも汚れている
今の地球に残されたものは
環境破壊

何億年もかけて築いた自然を
人間はわずか数世代で破壊した
君たちは自分が何をしているのか分かっているのか?

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可愛い子には変化をさせよ

可愛い子には変化をさせよ

神様は日本の親子を見て嘆いた
子離れできない親
親離れできない子
過保護すぎて、このままじゃ自立できないな

昔はよく
可愛い子には旅をさせよ
といったものだが
危ないからやめなさい
もしものことがあったらどうするの
親たちは
愛ゆえに子供たちを囲い込み危険から遠ざけている

このままで、日本の未来は大丈夫だろうか
そして神様は考え決断した

そうだ、可愛い子には変化をさせよ!

神様はある日、若

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「ときめきビザ」

「ときめきビザ」

地球上の争いごとや
憎しみ妬みといった負の感情を
遂に制御される時代が訪れた
すべての生き物が穏やかな日々を過ごせるようになり
青い地球は穏やかな表情を取り戻した

だが
人間という生き物は
ただ穏やかでいるだけでは満足しない
予想外の出来事に対する反応や感情の起伏がなければ
幸福感が得られないのだ

どうすればよいのだ
名案を思い付いた
ときめきビザ
である
このビザを持つことで
人間は日常生活

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「ひらめき膝(未知との遭遇)」

「ひらめき膝(未知との遭遇)」

やっちまった
自動車事故
と思ったが
何ともなかった
体にも車にも傷ひとつない
俺は高速道路を走行中
正面から突っ込んできた巨大な光に
避ける間もなく衝突した
はずなのに
気づいた時にはパーキングエリアに車を停めていた
何事もなかったように
それからだ
俺の体が
いや膝が変わったのは

俺は日本人メジャーリーガー
現在
空前絶後の盗塁記録を更新中
投手のモーションを完璧に読み
盗塁を成功させる

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「タンバリン湿原」

「タンバリン湿原」

ある日
原生林の奥地に隕石が落ちた
その場所は湿原となったことが衛星写真で確認された
何組もの調査隊が現地に向かったが
誰一人戻らない

物好きな自称探検家のヒロシが
単身その原生林に分け入ると
湿原に近づくにつれて
タン、タン、タタン
まるでタンバリンでも叩いているような
妙な音が風に乗って聞こえてきた
湿原には
周囲に探検隊の衣服が散乱し
中央では数人が
無表情でリズムに合わせて踊っていた

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「モンブラン失言」

「モンブラン失言」


今年もモンブランを作る季節

モンブランは甘いと思われがちだが
俺の作るモンブランは
形も
甘さと渋さのバランスも
完璧なんだ

いつもの通り
20年前に
モンブランのブルーブラックのインクで書いたレシピノートを広げ
作業に取り掛かる
もちろん見なくても作れるが
これは儀式だ

このレシピが完成した時には興奮した
最高のパティシエになれると舞い上がった
そして当時の彼女に言ったものだ
甘いもの

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秘密警察を宣伝してみる

秘密警察を宣伝してみる

求人難である
優秀な人材が全く集まらない
今、我が国の秘密警察は存亡の危機に直面している
その理由は
組織が一般には知られていないからだ
知られていても
ブラックというイメージが強すぎるのだ
至急対策を立てなければ
この事態は国家存亡の危機に繋がる

この際
タブーを犯しても
組織を広く宣伝しよう
我が国の秘密警察は
ホワイトで働きやすい組織だと
子育て支援も充実し
残業もない
楽しい組織

よし

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半笑いのポッキーゲーム

半笑いのポッキーゲーム

我が家の愛犬ポッキー
九歳雄のチワワだ
妻と娘にはいつも愛想よく振る舞う
喜んでキスもする

しかし
この俺には懐かない
男同士だからか

俺だって愛らしいポッキーとキスがしたい
だが彼が俺に興味を示すのは
何かを食べている時だけ

ある日
チョコ菓子ポッキーをつまみに
酒を飲んでいたら
彼は菓子に興味を示し寄ってきて
よこせとワンと吠えた

ポッキーを口にし
ポッキーに顔を近づけたら
ポッキーは

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「金持ち教習所」x「壁待ち強襲女」

「金持ち教習所」x「壁待ち強襲女」

金持ちのお坊ちゃま達が資産形成を学ぶサークルがある
有名な投資家たちが指導し高い評判を得ている
もちろんお坊ちゃま達親の評判である

庶民からは
金持ち教習所
と妬まれている

多額の資金を惜しげもなく投入し
勝率5割越で十分と考えれば
誰だって儲けることができる
金は金を生み
金のあるところに金は集まるものなのだ

しかし庶民には
一回の負けが致命傷
とても真似なんかできない

悔しい
金は欲し

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