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ふと訪れた土地で、

 空がどこまでも青く遠く見えて、その山の頂まで登ってみたい衝動に駆られました。
 まだ時間に余裕はあります。古い舗装の坂道を、私はゆっくり登り始めました。

 木漏れ日は薄く道を照らし、落葉の隠す階段は人の気配の少なさを説明しているようでした。薄暗い木陰の岩には苔が緑の色彩を宿しています。風が木々を揺らす音のほかは静寂で、落葉を踏む足音が妙に大きく響きました。

 どれくらい登ったでしょうか。

 狭い階段の先に鳥居が見えてきました。そのあたりから綺麗な石畳が広がっていて、人の管理が行き届いている場所ということがわかります。
 私は一礼してから鳥居をくぐり、境内に足を踏み入れました。

 瞬間、彼女の気配を強く感じます。
 そういうことかと納得して奥に進むと、祀る神々のことが書かれていました。

 菊理媛神くくりひめのかみ

 氏神の土地を離れてから疎遠になっていたことを思い出して、小さく謝りながら丁寧に参拝を進めました。水に縁深い彼女の性質は、私の体質によく馴染みます。ふと、まだ先があることに思い至りました。ここはまだ中継地点に過ぎません。
 
 さらに山道を登り、頂を目指します。

 開けた場所に展望台があって、そこには誰もいませんでした。雲ひとつない空から降り注ぐ秋の日差しに目を細めて、眼下の街並みを眺めます。

 後ろに何か気配を感じて振り返ると、木々の奥に鳥居があることに気付きました。果たして私は何に呼ばれたのか確認しようと、警戒しながら近づきます。神木の貫く小さな祠の隣には、祀られる主の名前が記されていました。

 大山咋神おおやまくいのかみ

 木の属性を有する彼は、この山を治めているのでしょう。私が生来不足しやすい木行を補うために、必要な出逢いだったのかもしれません。
 「咋」は「杭」のことと云われています。杭を打ち、境界を定めて結界を張り、その土地を守護する神格といえましょう。もちろん結界に関する逸話は最澄による解釈で、僅か1200年ほどの歴史ですが、それなりに信憑性のあるものと思います。実際に彼の助けを借りながら結界を張ると、通常よりも強く耐久性の優れたものが仕上がります。

 陰陽五行は汎用性の高い思想です。

 万物に属性があるように、人にもそれぞれ属性のバランスが存在します。例えば私は土行を中心に水行と火行が実働部隊として働き、金行が不足し木行は欠落しているように生まれました。
 この性質は東洋医学にも通じ、木と金に相当する身体の機能単位たる肝と肺に深刻な不調をきたしました。これらは既に克服した不調ですが、普段の生活でも意識的なケアをしていくことが望ましいことを知りました。

 人は未知なるものに恐怖を感じます。
 すべてを知る必要はありませんが、予め分かっていた方がうまくいくことも多い。

 そんなことを思いながら、私は山の麓まで下りていきました。

 それは遠い記憶。
 不意に夢に浮上してきたことにも、何か意味があるのでしょう。


 拙文に最後までお付き合い頂き誠にありがとうございました。願わくは、貴方の五行のバランスが整って、心身の健康に至りますように。



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