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メイド・イン・ヘヴン 〜『時は加速』する〜

 時は加速していませんか?
 表題はフレディ・マーキュリーの「死後」に発表されたQueen最大級のヒットアルバムであり、「ジョジョ」シリーズ第6部に登場するプッチ神父のスタンド名の由来です。
 Queenのファンとしてこのアルバムを擦り切れるほど聴きましたし、荒木飛呂彦先生のファンとしても難解なスタンド能力を理解するために、該当箇所を何回も読み直したものです。

 アルバムはフレディの生前に収録された音声データ等を用いて死後に発表されたため、天国で創られた、納得です。スタンドは敬虔なキリスト教徒であるプッチ神父(「神父」ですからカトリック系で、厳格な性格が浮き彫りにされるあたり荒木先生の登場人物のつくり込みのこだわりが垣間見えます)が目指した天国への道を示しています。

 作中に「時は加速する」とありますが、さて。

 この現実世界も、時が加速していませんか?

 思い出してください。物心ついた頃、毎日が新しいことの連続でした。小学校にあがる前、一日のなんと長かったことでしょう。小学生の頃の休み時間は15分でしょうか、30分でしょうか。もし30分も休み時間があったら、どんな遊びでもできる気がしてきますね。校庭に走っていってサッカーでもしましょうか。ドッヂボールもいいですね。缶があったら缶蹴りも楽しめます。雨の日はトランプでもしましょうか。1週間は長いですね。夏休みは永遠にも思えるパラダイスでしょう。
 中学生になると部活動に入りますか。入らなくてもよいでしょう。勉強の分量が増えてきました。次の授業までに出す宿題に取り組みましょうか。ああ、週末になりました。どこに遊びに出かけましょうか。
 高校生になって、気付くと受験が近いと気付きます。達成すべき課題の量が飛躍的に増えます。働き始める人もいるでしょう。すると週末が待ち遠しい。1ヶ月って30日でしたっけ。
 通勤の1時間は長いですか?30分なら短いですか?あれ、30分あれば缶蹴りでも鬼ごっこでも、いくらでも遊べたはずなのに。
 年間休日は何日ですか。1年は52週ですね。お盆休みはとれますか。年末休みはとれますか。ああ、今年は休めなかったな。来年は休めるかな。

…『加速』してますよね?

 10歳の頃の1年と、20歳の頃の1年と、30歳の頃の1年が、同じ長さとは思えません。中学生の頃この事実に気付いてしまった私は、恐ろしくてたまりませんでした。加速していった「時」にいつかおいてけぼりにされて、死を迎えるんだ、と。

 「時間」というものが一定の尺度でないことは、哲学や心理学の観点からだけでなく、理論物理学の観点からも明らかです。前者は「楽しい時間が一瞬で過ぎる」例だとか、「生きてきた時間の割合での仮説(0〜20歳までの体感時間と20〜80歳までの体感時間が同じ)があります。後者では特殊相対性理論によって詳しく説明されています。

 理論はどうあれ事実として、やはり「時間」は一定ではありません。個人個人で違いますし、ひとりの人間の領域内でも変動します。したがって1日が24時間という条件は万人に共通する事項ですが、その価値は平等でも公平でもありません。

 ぼうっと生きていたら、すぐ終わってしまいそうです。かといって生き急ぐだけでは、痕跡だけが残って大切なものを失い続けることでしょう。

 重要なのは「覚悟」です。

 何のために生きるのか。何処を目指すのか。

 ヒトは考えることができる生き物です。思考は時間を凌駕します。タイムマシンなんてものは必要ありません。加速する時を、止める必要もありません。

「過去を変えたいなら、今を重ねるしかない」

 これはB‘z稲葉浩志さんの言葉ですが、ある種の核心を突いていると思います。
 「過去は変えられない」という「常識」を、疑ったことはありますか?

 真理は、どこにあるのでしょうか。


 拙文に最後までお付き合い頂き誠にありがとうございました。また、観念的な思考実験に御協力いただけたことに重ねて御礼申し上げます。
 疑問、反論、感想、なにか少しでもひっかかるものがあった方は、是非コメント下さい。
 気付けば今年も残りわずかとなりました。
 皆様の幸せを祈り、結びといたします。

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