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アロマに恋人ができるまで

マッチングアプリで実際に会ってみた人のことを徒然なるままに書き留めようと思う。脚色なしのオールノンフィクションでお届けする。

1.まずはマッチング

ひとり目は同い年の大学院生だった。

マッチングアプリをしたことのある女性なら分かると思うけれど、初めは「私って実はモテるんじゃない?」とバカな勘違いをうっかりしそうになるくらいにイイネがくる。特に登録初期は恐らく優先的に男性側の画面に表示されるような仕組みになっているのだろう、イイネの嵐だ。彼はその中のひとりだった。

顔写真を見る限り完全に「陽」のタイプだったので、正直イイネをもらったときは警戒した。学歴もある、顔も良い、身長もそれなり、プロフィールの文章は少なめ。年齢は私と変わらないので、そんなに結婚への危機感が差し迫っているわけでもないだろう。遊び相手探しか?

正直、私自身も遊び相手を探しているわけではないけど、かと言って超真面目に探しているわけでもない。ちょっと甘い蜜も吸いたいな、もし真剣交際できるひとが棚ぼたで落ちてきたらラッキーだな。そのくらい。

普段なら話すことのない人種だろうから面白いかも。

そう思い、「陽」な顔の彼とマッチした。

けれど、いざやり取りをはじめてみると、常に敬語で丁寧なひとだった。写真の印象なんて当てにならない。

大学研究者というだけあって、博識で話も面白い。大学では研究室に住んでいて授業は不真面目だったとか、隠居したら職人になりたいだとか、幼少期は三国無双ごっこしてたとか。掘れば掘るほどいろんなモノが出てくる、ちょっと変な人。

1週間程度、マッチングアプリ内でやり取りをした。私は基本的にマッチングアプリの通知を切っているし、会社ではアプリを開かないので返信は遅い。でも、自宅でなんとなく寂しいなと思って開いているときは即レス。そんなむらっけのある私に根気よく付き合ってくれた。

LINEへ移行したあとも、相変わらず返信にムラのある私。対して、即レスの彼。話題が途切れ、もういいかなと思ったところへナイスパスを打ってくる。ときどきで、例えばカメラが趣味の私に「こういうカメラの購入を考えているのだけどこのメーカーでオススメある?」だとか、絶妙に答えたくなるような質問を投げてくる。

単純に会話が上手いな、というのが私の彼に対する感想だった。

2.会うことになった

”なんとな~く”なやりとりが続いて1か月くらいが経った頃に、初めて会うことになった。

わざわざ私の住むまちへ電車で来てくれると言う。それなら、とランチのお店選びを申し出たけれど、仕事で忙しいんだから学生に任せてほしいと断られた。その頃の彼は、ちょうど論文の締め切りで忙しい時期だったと後で知った。

そして、私はもうすぐ会うぞという段階になってようやく彼に興味を持ちはじめた。というのも、

「最近、食べるの控えているものありますか?」(原文ママ)

彼のLINEのこのセリフ。優しさと気遣いが絶妙バランスでぎゅっとつまったこのセリフに驚いたのだ。

「嫌いなものありますか?」と聞くと”嫌い”というワードが強すぎて、アレルギーのない私には特にありませんとしか言いようがない。「苦手なもの」になると強さは薄まるけれど、それでも特に申告すべきものはないなという気持ちになる。「好まないだけで苦手じゃない」というあの心理。

けれど「控えているもの」になった瞬間、アレルギーはもとより、例えば炭水化物ダイエット中だとか、そういう細かなところも言い出せる。育ちの良さか、生来の優しさか、もしくは女性を扱いなれているのか。ともかく、押しつけがましさのない気遣いにはグッときた。

3.実際に会ってみた

当日、少し早めに着くはずが、持ち前の無計画さを発揮してほぼピッタリ、むしろ遅刻くらいの時間に到着した。早めに到着していた彼はというと、私の住むまちにはスタイリッシュすぎて、明らかに異質のオーラを放っていた。

私の和食を食べたい!というリクエストを忠実に叶えてくれた彼のチョイスは旅館ランチ。慣れない場で少しドキドキしながら入る。

彼は、メッセージの印象と変わらずテンポ良くお話上手な人だった。私がまごまごしなくて済むよう、質問をポンポンくれる。なんでもない質問の中に、踏み込んだ話題もさらりと混ぜてくる。そして私が質問すれば、2倍くらいにして返してくれる。

食事をしながら分かったことは、とてもスマートなこと、文化度の高い家庭で礼儀正しく育ったこと、お父さんと折り合いが悪いこと、そして近いうちに無期限で海外へ行くことだった。

惜しくないと言ったら嘘になるけれど、無期限の国際遠距離をする気はさらさらなかったので、そっと彼を「ナシ」の箱に分別した。

4.それから

ランチは楽しくお開きになった。3時間ほど話していたけれど、そんなに時間が経っていたことに驚いたくらいだった。

「これからがんばってね」

彼を駅へ見送り、そう声をかけて私の初アポはおしまい。

律儀にお礼LINEを送ってくれた彼に、私も軽くお礼を返しながら、恋人にはならないかな、なんて高飛車なことを思う。

今更?と思われそうだけれど、人間は相手に質問をすることで「あなたに興味があるよ!あなたを分りたいと思っているよ!」ということを伝えるのだと、彼の私への対応を見ながら学んだ。その学びが次に繋がるのだけれど、それはVol.2でまた書こうと思う。

オールノンフィクションのマッチングアプリ恋活記録、また次回。


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