学生・教員・大学運営の「三方よし」を実現したい。「Schoo Swing」設計者が志す「ユーザーファースト」と、根底にある独自の哲学
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学生・教員・大学運営の「三方よし」を実現したい。「Schoo Swing」設計者が志す「ユーザーファースト」と、根底にある独自の哲学

株式会社Schoo(スクー)【公式】

文部科学省は、2040年に向けた大学・高等教育改革の実現すべき方向性として、「学修者本位の教育」への転換を掲げました。

テクノロジーの急速な進化やグローバル化の進展などによって先の予測が困難なVUCA時代、学生たちは自律的なキャリア形成のために、明確な目標を持って主体的・継続的に学修に取り組むことが必要です。そして大学をはじめとする高等教育機関には、学修者が「何を学び、身に付けることができるのか」を明確にし、学修の成果を実感できる教育を行うことが求められています。

学修成果の可視化において、Schooはデジタルによる学修データ活用が鍵と考えており、その一歩である「大学のDX化」は、2020年に発生した新型コロナウイルスの感染拡大によって図らずも急速に進んできました。

ただしその過程では、期待していた大学生活とはほど遠い現状を嘆く学生の声や、「教員・職員の負担が大きい」「授業の質の担保・向上が難しい」などの学校側の悩みも聞かれました。

これらの課題を解決すべく、Schooが2014年から手がける大学DX支援のノウハウを結集し、「Schoo Swing」(以下、「Swing」)を開発しました。「Swing」は「学修者本位の学びを当たり前に。」をコンセプトとし、データの活用によって学びを可視化することで教育の最適化を実現できる次世代型の学習プラットフォームです。

今回は「Swing」のプロダクトデザイナーであり、社会人向けオンライン学習プラットフォーム「Schoo」の初代設計担当でもある上羽さんにSwing開発の思い、学びの哲学を語ってもらいました。

原点である「Schoo」の根底に流れるのは、「人間の弱さ」を肯定する設計思想

——「Swing」を開発するにあたり、「Schoo」から引き継いだプロダクトのエッセンスはどんな要素でしょうか?

共通するのは、人間は弱いものだという前提でサービスを設計したことです。

大学も「Schoo」も、試験を突破したり金銭を払って入学するのですから、学びたいという目的・意欲がある人が集まっているはずです。でも実際には、学びたいという気持ちはあっても、人間ってそんなに強くないじゃないですか。例えば、お正月や年度の変わり目は多くの人が目標を立てて学び始めますが、2週間も経つと大部分の人がしんどい、つまらない、と言って止めてしまう。そういうものなんです。

だから「Schoo」は、「学びはそれ自体が楽しくないと続けられないものだ」という前提で設計しました。そして楽しさは、自身が肯定される過程で得られるものです。

1人では継続できないから、みんなで学ぶ。先生の話をずっと聞くだけだと集中力が途切れるから、受講生代表に自分の代わりに喋ってもらう。自分で質問が思いつかなくても、他の人が質問してくれる。これらはすべて人間の心の弱さを肯定するための工夫です。

また「Schoo」のこだわりとして、「ユーザーもサービスの一部に組み込む」という思想があります。

例えば僕が受講生として教室に入ったら、その瞬間タイムラインに「上羽さんが着席しました」と表示されます。授業中に投稿した質問や感想コメントは他の受講生にも共有され、多くの人が同調してくれたら、先生がそれを拾って答えてくれたり、授業の方向を調整してくれることもあります。

△「Schoo」の授業画面。画面左のタイムラインでは受講生のコメントがリアルタイムで見られる。

こうしてアクションすればするほど、「あなたもSchooの一部なんです」というふうにサービスに組み込まれていく。それが、サービスとそのユーザーが一体になるということの意味だと思うんです。

「Schoo」が原則実名登録をお願いしているのも、実在する人が教室に集まって授業を受けているという感覚をユーザー同士に持ってもらう狙いがあるからです。顔のない集団が空気のように授業を聞いているようなサービスにはしたくありませんでした。

——ユーザーが誰でどんな風に学んでいるかを意識させるところは「Schoo」の大きな特徴ですね。その目的も、やはり人間の弱さに寄り添うことにあるのですか?

はい。せっかく学びたいと思った気持ちが折れないように、「あなたはこの教室にいていいんだよ」と囁くようなイメージです。それも「Schoo」の機能の一部だと思っています。

これは受講生にだけではなく、登壇してくださる先生にも同じことが言えます。オンライン授業だと、先生から受講生が見えづらい。本当に話を聞いてくれているのか、興味を持ってくれているのか、分からない。

だから「Schoo」では、先生から受講生が近くに見えるように設計しています。着席ボタンやコメントによるリアクションもそうです。授業が始まる前に「受講したい」ボタンによって受講生たちのポジティブなメッセージが届けば、登壇前からワクワクして臨んでもらえる。

授業中は受講生代表が目の前に居るから話しやすいし、受講生も先生に近づきやすくなる。教室に一体感が生まれる。これは楽しい、また来たいと思ってもらえる。

そういった結びつきの場にするための設計思想を大事にしています。

受講生ファーストであり、先生ファーストでもある。両方合わせて「ユーザーファースト」ということです。

——なるほど。上羽さんのキャリアの始まりは、Webデザイナーですよね?

そうです。でも本当は人の気持ちに興味があって、哲学者になりたかったんです。

僕はデザインを作るよりも、どうやってユーザーの人生の中にサービスを組み込んでいくかを考える方が好きなんですよね。今で言うUXです。

「Schoo」のサービス立ち上げ時にWebデザイナーとしてお手伝いをしていたのですが、β版のユーザー数が1万人を超えた頃、「これは本当に社会を変えるサービスになり得るのではないか」と思い、正式にメンバーに加わることにしました。

——「デザイン×哲学=UX」と言えそうですね。

UXデザイナーという言葉自体も、Webサービスを作る立場だから使うだけであって、仕事が違ったら僕は使わないでしょうね。もし自分に肩書きを作って名乗れるとしたら、やはり「哲学者」を名乗りたいです。

 ▼参考:上羽のWebサービス設計思想に関するnote記事

「Swing」の設計思想は、学生・教員・大学運営の「三方よし」

——「Schoo」におけるユーザーファーストの考え方と同様、「Swing」の場合は学生だけでなく、教え手である教員の心地良さも同時に設計しているということですか?

2020年1月に文部科学省の中央教育審議会大学分科会が取りまとめた「教学マネジメント指針」を読み、これまでのLMSや学習指導要領では特に「学生」に対するユーザーファーストが十分ではなかったと気付いたんです。逆もまた然りで、「教員が学生ときちんと向き合えること」も「Swing」の特長にしようと考えました。

プロダクト設計にあたっては、2020年4月ごろから10校以上の大学関係者にヒアリングを行いました。そこで得られた洞察をもとに、「Swing」のプロダクト方針を定めました。それは、学生・教員・大学運営の「三方よし」を実現するというものです。

まず学生たちは、コロナ禍以降に入学した僕たちはどうしてずっと家の中に閉じ籠っているんだ、期待していたキャンパスライフとはかけ離れている、と不公平感を募らせていました。

次に、教員方は突然オンライン授業の動画を作る必要に迫られ、また、学生の理解度確認のために毎週課題を作っては大量の添削を行わなければなりませんでした。負担がとても大きい訳です。

——「三方」でいうともう一方、教務課や理事会のような大学運営側もSwingユーザーですね。

はい、ここが恐らく一番のチャレンジだと思います。目玉は「学修者本位の教育」を実現するためのデータ活用ですね。

文科省の指針を受けて、多くの大学が三つのポリシー(ディプロマ・ポリシー、カリキュラム・ポリシー、アドミッション・ポリシー)を策定し、大学ごとの特色を打ち出しています。しかしこれらをうまく活用し、学修者の実際のスキルや知識を可視化できている大学はまだ多いとは言えません。

その解決方法として、デジタルによる学修データ活用がデファクト・スタンダードになると私たちは考えています。

学修データの分析と活用については、現場の皆さんも模索中の状態だと思います。そのため、「教学マネジメント指針」で示されている達成目標をもとに、こういうデータが取れたら良いのではないか、こんなことが知れたら役に立つのではないかということをSchooから提案する形で機能の設計を進めています。

——少し切り口が変わりますが、「学修者本位の教育」を実現するにあたってはオンライン授業に強みがあると考えていますか?

是が非でもオンライン授業が良いと思っている訳ではなく、対面授業とオンライン授業のそれぞれに良さがあります。その上で、現状対面でしか実施できないと思われていることの大部分をオンラインで実現できる確信はあります。

例えば、ゼミのように少人数で集まって議論をする授業。多くの大学さんが対面で実施していますが、ブレイクアウトルーム機能を使ってオンラインでグループを作れば、話したことをその場で可視化してすぐ発表できるなど、利点も多いです。

また講義型の授業に関しても、大学の教室で行われる対面授業の方が総じて熱量が高いという意見がありますが、僕はむしろ、静まりかえった大教室での対面授業よりも、質問やコメントがタイムラインに勢い良く流れてくるオンライン授業の方が、熱量が高いと考えています。

このように、「Swing」は大学が今抱えている課題感と国が示す方向性、そこにオンライン学習サービスを10年間提供してきた知見やノウハウも取り入れて設計しています。

前者二つだけなら他の会社でも開発できるかもしれませんが、徹底的にユーザー目線に立ってやってきて掴んだポイントを組み込んでいることが、「Swing」の個性であり、大きな強みだと自負しています。

大学という「卒業がある」世界で、「世の中から卒業をなくす」というミッションとどう向き合うのか

——最後に、大学はある意味「卒業がある」機関ですが、Schoo創業メンバーでありSwingの開発者として、「世の中から卒業なくす」というミッションをどう捉えていますか?

哲学者らしく、哲学の話をしましょう。

哲学と言えば古代ギリシャということで、学校について話をする際、僕がいつも紹介する絵があります。ラファエロの大傑作、『アテナイの学堂』です。

△『アテナイの学堂』 (パブリック・ドメイン) https://en.wikipedia.org/wiki/The_School_of_Athens#/media/File:%22The_School_of_Athens%22_by_Raffaello_Sanzio_da_Urbino.jpg による

描かれているのはアテネの学校なのですが、中央で天を指して、真理は天、つまりイデア界にあると言っているプラトンと、全ての真理は地上にあり、物事が全てを規定すると主張しているアリストテレス。この二人を中心に、みんなで知識を深めあっています。

重要なことは、この学校には「先生」がいないということです。有史以降約2500年間、原始の学校には先生がいなかったのに、何かのタイミングで「先生」と「生徒」という2種類に人々が分離してしまった。

僕は、この絵の世界を復活させたいんです。この二人の姿を。全員が自分の目的意識を持って、色んな人との議論を重ねて自分で成長していくという学びのあり方を。

学びとは「先生が答えを持っている」という前提に成り立っているわけではないし、議論もまた「お互いを論破し合う」ことが目的ではない。学校とは、「それぞれがお互いに学び合い、研鑽し合う」ことで高みに向かって進み続けられる場所です。

これを体現する場がまさに「卒業のない学校」と言えるんじゃないかと思います。そこで多くの人が学べば、多くの社会課題を解決できるのではないでしょうか。

知と知が健全にぶつかり合うことで、きっと、何かがもっと良くなる。それを僕は信じています。


▼参考:大学・高等教育機関のDXや授業のオンライン化の意義について


株式会社Schoo
http://corp.schoo.jp/

MISSION:世の中から卒業をなくす
VISION:インターネット学習で人類を変革する

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株式会社Schoo(スクー)【公式】
株式会社Schooは「世の中から卒業をなくす」をミッションに、インターネットでの学びや教育を起点とした社会変革を進めています。主な事業は社会人向けオンライン学習サービス、法人向けオンライン研修、大学のDX支援、地方創生。→http://corp.schoo.jp/