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キャリアと人生のオーナーシップを握るための学びと、「自分らしさ×市場ニーズ」の方程式

世界的なコロナ禍にウクライナ戦争の勃発など、先行きが極めて不透明な現代が続きます。

コロナ禍によって急加速したDX(デジタルトランスフォーメーション)、それに伴う市場構造の変化、資本主義から公益重視への転換など、世界の激変に伴ってビジネスパーソンに求められるスキルも変化し、大人の学び直しは必須となっています。

激しい変化の時代の中で100年近い生涯を過ごす私たちは、自分らしく働いて生きていくために、何を意識し、何を学ぶべきなのか。

CCO(Chief Content Officer)としてSchooの学習コンテンツを作成・提供する最高責任者であり、記者・編集者時代に働き方や生き方をテーマに多数の企業等を取材し、キャリアコンサルタントの資格も持つ滝川麻衣子に聞きました。


求められるスキルと働き方の変化はすでに起きている

終身雇用が崩壊し、コロナ禍でDXが叫ばれるなど、変化のスピードが加速する中、経済格差や変化の時代を生きる対策として「学び」が注目されています。

ニュースでも度々取り上げられるように、経済低迷が続く一方、コロナ禍で社会のオンライン化やDXが加速する今、デジタルスキルがない社員たちを雇っておく余裕が企業にはもうありません。

そのため例えばアメリカでは、Amazonやウォルマートをはじめとする大企業が福利厚生として大学の講座を受講する費用を支給したり、オンライン教育サービスを従業員向けに導入したりと、社員の「リスキリング」を支援する仕組みを整え始めています。デジタル人材が不足している今、高スキルの人材を高額な給与で雇うよりも、既存の社員を学び直させる方が合理的だからです。

同じことは、日本でもすでに起きています。ヤフーやソフトバンクなど大手IT企業では、AI人材育成のために社員にデジタルスキルを学ぶコースを受講させています。こうした動きはIT企業以外にも広がっていくでしょう。このことが意味するところは、「こうしたスキルが無ければ今後仕事がありませんよ」というメッセージでもあるのです。

また政府側の文脈では、「人的資本経営」という言葉を目にする機会も増えてきました。経営資源としてヒト・モノ・カネと言いますが、物や金銭的な価値である経済資本以外にも、人材の価値をきちんと評価し、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方のことです。

人的資本経営の流れでは、社員の多様性確保やリスキリングなどの人材開発支援制度の有無、社員のエンゲージメントの高さ、離職率の低さといった非財務情報を開示し、株式市場の投資の基準にしようという動きも進んでいます。この動きはヨーロッパを中心に広がり、日本でも今年の夏には開示ルールの目安や行動計画の書き方が整理される見込みです。

つまり、会社が人材開発にどれだけ投資しているか、社員がどれだけ学び続けているかが、会社の価値として投資家から評価される時代が始まろうとしているのです。

変化の時代をしなやかに生き抜く「プロティアンキャリア」の考え方

学びが重要とはいえ、具体的に何を学べば良いか分からないという方にまずお伝えしたいのが、「プロティアンキャリア」という考え方です。

「プロティアン」とは、ギリシャ神話に登場する「プロテウス」が語源で、思いのままに姿を変えることができる神様の名前です。

その名の通り、社会や環境の変化に応じて柔軟に変わることのできる変幻自在のキャリアのことで、ボストン⼤学経営⼤学院のダグラス・ホール教授が提唱し、近年キャリア学で注目を集めています。

日本でもベストセラーとなった、リンダ・グラットン氏の『LIFE SHIFT』という書籍にも共通するものがあります。いずれもキーワードは変化する力。「変化する時代に対応し、キャリアも自ら変化させていく」という点です。

自分に必要な学びを見つけるための、2つの「補助線」

かつての日本であれば、大学を卒業して安定した会社に就職すれば定年まで安泰だと信じられてきました。しかし今は、トヨタ自動車のような100年続いた大企業ですら終身雇用が難しい時代になりました。

そこで注目されているのがプロティアンキャリアです。プロティアンキャリアが提唱するのは、「アイデンティティ」「アダプタビリティ」の2つを身につけることです。

「アイデンティティ」とは、自分に何が向いていて、どんな仕事をしている時に最もいきいきできるかということ。激しい時代の変化に流されるのではなく、自分らしさをきちんと確立することが重要だということです。

同時に、環境や市場の変化に柔軟に適応すること、すなわち「アダプタビリティ」を持つことも必要です。例えば自分のアイデンティティとしてデザイナーを志したとしても、市場から求められなければ、食べていくことは難しい。ならばどういうデザイナーであれば必要とされるかを考えて、そのスキルを身につけるべきです。

つまり、自分らしく働きながら、市場や環境に求められる能力も磨いていく。自分の特性と市場のニーズとを掛け算した交差点にあるものこそが、今学ぶべきものだということになります。

そう考えると、今学ぶべきものは当然人によって異なります。「今の時代は絶対にAIを学ぶべきだ」というのは実はナンセンスで、自分自身に必要な学びは自分で見つけるものなのです。

まずは「キャリアのオーナーシップ」を持つこと

戸惑う人も多いと思いますが、そういう時の一つの助けとして、「キャリアのオーナーシップ」という考え方もご紹介します。

例えば江戸時代、自分が生まれた家が下駄屋であれば、自分も下駄屋になることが生まれた時から決まっていました。ここまで昔の話でなくても、終身雇用が当たり前の時代なら、転勤の有無や配属・異動に関して、もちろん希望は出すとしても、基本的には会社に決められていました。つまり、かつてキャリアのオーナーシップは生まれた家庭環境や勤めている企業が握っていたのです。

対してこれからの時代は、自分自身がキャリアのオーナーになって、自分のことを自分で決めていく。まずはその考え方を持つことが、プロティアンキャリアを築く第一歩です。

長い人生を豊かにする「キャリア資本」

先程紹介した『LIFE SHIFT』の中に「生涯を通じて学び続けることが、資本・財産として自らに蓄積されるイメージを持とう」という言葉がでてきます。

生きていれば日々色々なことがあります。職場の人間関係、家族のこと、悩むことも多々ありますが、それらにとらわれて格闘していても、自らの資本・財産は蓄積していきません。

目の前の問題に全ての時間と労力を使い切るのではなく、5年後10年後の未来にどうなっていたいかをイメージして、それに近づくための行動に時間とエネルギーを使うように意識してみる。そういう意識の転換をするだけで、行動が変わってくると思います。

キャリア資本に関しては、語学力や会計学、IT・OAスキルのような職務経歴書に書けるものはもちろん、「無形資産」と言われるものも同じく重要です。

家族や友人関係、肉体的・精神的な健康、困った時に頼れるコミュニティ・ネットワークなど、お金に換算できない資産こそが身を助けてくれることもあります。人生を幸せに生きていくためには、こうした無形資産も蓄積していくことが大切です。

そう考えると、キャリア資本を作るのは仕事だけではないはずです。日々の生活や地域のお付き合い、ボランティア活動や寄付活動といった社会との繋がりなども、私たちの大切な資産になっていきます。

それら有形・無形の「資本」が人生のオーナーシップを持って生きていくことに大きく寄与するのです。

キャリアと人生の幅を広げる、「手持ちカードを一枚増やす」という意識

最後にもう少し具体的なTipsをお伝えしたいと思います。私は仕事柄、様々な職業の方とお話するのですが、その中でキャリアのオーナーシップを持っていきいきされている方に共通しているのは、「持ち札が複数枚あること」だと思います。

例えば私であれば、インタビュアー、編集者、マネージャーなどのカードを持っていますが、そこに手持ちのカードを更に活かすようなかけ算のカードをもう一枚増やすというイメージです。そうした発想を持っている方は、非常にいきいきされている印象があります。

一つのカードだけで生き抜くには、人生は意外と長いものです。新卒からデザイナーとして活躍してきたけれども、デザインに対してマネジメントのカードをかけよう、プログラミングのカードをかけよう、コミュニティ運営のカードをかけようと考えて学んでいくと、仕事の幅も人生の幅も広がっていきます。

Schooでは、「ビジネス基礎力」「デジタルリテラシー」「デザイン力」「AI時代の人間力」「リベラルアーツ」の5つを「今学ぶべき学習領域」として定義し、たくさんの授業コンテンツを提供しています。

今自分のアイデンティティがビジネスパーソンとしての基礎にあるなら、そこにデザインをかけてみよう、デジタルリテラシーをかけてみよう、というように、違うジャンルの学びを一つ増やしてみると良いと思います。

学びは最高のエンターテインメントであり、最善のセーフティネット

最後に、これは私自身が日々実感していることですが、学び続けることは最高のエンターテイメントです。ただ提供されるエンターテインメントを消費するだけでは、人間はいつか飽きてしまいます。しかし、学ぶことで無形資産がどんどん蓄積され、何歳になっても自身が成長・前進する実感を持つことができる時、人は充実と飽くことのない好奇心を感じるからです。

同時に、5年後10年後がどうなっているか想像もつかない先行き不透明な時代、学び続けることで自分自身の生きていくスキルを身につけることが、今私たちが成しうる最善のセーフティーネットなのではないかとも思っています。

先行き不透明な変化の時代であっても、大人が前向きに学び続けることは一つの希望になり得ます。エンターテインメントとセーフティーネットを自ら紡ぎながら、人生のオーナーシップを持って進んでいきたいですね。


株式会社Schoo
http://corp.schoo.jp/

MISSION:世の中から卒業をなくす
VISION:インターネット学習で人類を変革する

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