【漫画の海外展開の話のつづき】EU各国でのマンガ市場動向を扱った論文を発見!(※抄訳してみました)

私がEU圏での日本漫画事情について調査をする際、いつも頼りにしているのは、イタリアの社会学者、Marco Pellitteriさん。

The Dragon and The Dazzleという浩瀚な大著を書いた方です。ヨーロッパの学者さんが書いた日本漫画研究書としては決定的な一冊じゃないでしょうか!

昨日の話の続きとして、フランスの漫画事情⇒その他のEU各国の漫画事情と調べているうちに、このPellitteriさんも関わるプロジェクトの一環として、以下のような論文がネット公開されているのを見つけました。

https://www.researchgate.net/publication/201658984_Manga_in_Europe_A_Short_Study_of_Market_and_Fandom

『ヨーロッパにおけるマンガ市場とファン文化に関する考察』って、モロに私のnoteの議題じゃないですか

というわけで、、、

ざざっと拝読しましたがかなり有益な情報につき、以下、抄訳してみました!参考にしてください

(※ちなみに十年くらい前の論文なので、数値は現在とはあっていないと思います、ご注意ください。たとえば「イタリアがEU圏で一番の漫画市場である」とありますが、このあとフランスに猛追されたはず)

イタリア・フランス・ドイツの事情

イタリアはEU圏における日本漫画の一番の市場と予想される(※前述したとおり現在は違うはず(訳者))。残念ながらこれについて正確なデータが公表されていないが、2005年の出版統計では、この年に出版されたコミック2,800作品のうちの58%が、日本漫画と韓国漫画で占められていた。

フランスは2001年から2005年の間に、日本漫画の販売が500%増加したという急成長市場である。伝統的な出版社は日本漫画を敬遠するが、もともと日本の漫画やアニメを見て育った世代がビジネススクールを卒業して出版業や書店業に入ったことで、抵抗なく書棚に日本漫画を展開する傾向ができあがっているようだ。

ドイツはおそらく三番目の市場である。もともとドイツ国内にコミックという文化がないため、ドイツで出ているコミックはほとんどすべて輸入品であり、その七割を日本産が占めている。他の国と比べて女性の漫画ファンが多いことが特徴でもある。ともあれ、ドイツでは日本漫画のモラリティに関する拒絶感が強く、人気漫画はドラゴンボールや名探偵コナンといったファミリー向けの作品にとどまっている。

スペイン・ベルギー・ロシア・ポーランドの事情

スペインは最初期に日本漫画を輸入した出版社がマーケティング戦略で失敗したことから、日本漫画は苦しい状況である。高価な販売をしたために一般読者層を掴むことができず、市場は伸びていない。より低価格での出版販売に切り替える戦略が今後どれだけ効果があるかにかかっている。

ベルギーはもともと『タンタンの冒険』等、コミック文化が旺盛な国であり、日本漫画の需要にも積極的である。細かく見ると、北部のオランダ語話者の地域よりも、南部のフランス語話者の地域のほうが日本漫画市場として有力である。

ロシアは特殊な経過をたどった。1980年代、もともと禁止されていたはずの日本漫画をひそかに持ち込んだのは外交官たちであり、そのコピー版が外交官の子息を通じて若い世代に広まった。アンダーグラウンドな展開をしたため市場統計には乗ってこない。冷戦後、日本のアニメが入るようになり、それを見て育ってきた世代が今後のカギとなる。

ポーランドでの日本漫画は、きびしい検閲と世間の悪評に苦しめられてきた。これを覆しにかかっているのが、日本人がポーランド国内で起業したJPファンタスティカというベンチャー会社の孤軍奮闘である。彼らの草の根での努力により、ポーランドは21世紀における日本漫画市場の重要な対象になり得る。

総括:私にとって気になるのはスペインとポーランド

いかがでしょうか?気になった国はありますでしょうか?

私の場合、もともとロマンス語圏の語学を勉強していたので、イタリアとフランスの状況はなんとなく知っておりましたが、今回の論文はそれ以外の国と地域の紹介が入っているのが大きなところ。

私が気になったのは二点ですかね。

・スペイン語圏は巨大市場になると個人的に予想していたのに、肝心のスペイン本国がたいしたことない、という現実が前から気になっていた。「初期マーケティングの失敗ってなにがあったんだよw」と思った個所。

ポーランドの情報はめちゃくちゃ気になりますね。”JP FANTASTICA"という名前で検索すると、確かに、日本人の方々が入って漫画を販売しているポーランドのサイトが出現します。これも非常に気になる調査対象!

だんだん話題が拡散気味になってきましたが、スペインのこと、ポーランドのこと、それぞれ好奇心が疼く対象につき、ひとつずつ調べて、またnoteに上げていこうと思います。

2000年代のデータはポジティブ、2010年代のデータはネガティブ

もうひとつ、総括としていえるのが、ここではないでしょうか。

今回の論文、「日本漫画はこれからだ」という、どちらかといえば希望を持たせる感じですが、最近のこの手の論文は打って変わって、「日本漫画は苦戦している」のニュアンスな気がします。

展開がある程度進んだところで、いろんな「現実」を突きつけられている時期に入ったのだとみれば、語調がだんだんシビアになってくるのは当たり前ではありますが、

ネットでこの話題を調査するとき、2000年代の記事か最近の記事かによって、ニュアンスが全然違っているよ、というのは、調べ事の際の注意点といえるかもしれませんね

子供の時の私を夜な夜な悩ませてくれた、、、しかし、今は大事な「自分の精神世界の仲間達」となった、夢日記の登場キャラクター達と一緒に、日々、文章の腕、イラストの腕を磨いていきます!ちょっと特異な気質を持ってるらしい私の人生経験が、誰かの人生の励みや参考になれば嬉しいです!