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企業にとっての人材とは 人的資源管理

「経営学とは」の中で、経営学がどのように発展したかを記しました。科学的管理によって、人の働き方を考えることから始まったことはご理解頂けたと思います。
※経営学とは https://note.com/sbelabo/n/n0c48bd4ada04?magazine_key=m4ced4beeef24

今回はその「人」に視点を当ててマネジメントについて考えたいと思います。

最初に述べたようにマネジメントは人と作業の管理から始まりました。労務管理と生産管理です。この2つを通じて、どのようにすれば生産性を向上させられるかを考えました。
これは労働者の職務と権限が完全に分離したものとして考えられてきたからですが、これは例えば事業者や職能長、管理者という形で企業内の役割が明確に分けられるからです。
しかし企業の多角化やサプライチェーン(生産、流通、販売の流れ)全体をコントロールするようになるなど、企業は1チャネルの1つの役割を果たすだけの組織ではなくなります。またマーケティングが急速に発展し、特に先進国では、利益の規定要因がハードウェアからソフトウェアへと変化します。つまり経営資源な多角的、相互的な役割が必要になります。そのため経営組織の様々な形が考えられるようになりました。
すると生産部門や販売部門といった管理機能別ではなく、事業戦略を実現するための総合的な「ヒト」と「組織」の力が必要になりました。そのため労務管理ではなく、「人事・労務管理」また「人事・労務・労使関係」と呼ばれるようになります(言葉だけでなく視点の変化が必要となります)。

1990年代に入ると、バブル経済の崩壊や産業構造の転換(大量生産大量消費→多品種少量生産)に変わると、生産性が低下し始めます。またこの頃から「過労死」という言葉が多く聞かれるようになりました。
労務管理では人(労働力)を単にコストと考えていました。一人一人の生産性を向上させることでコストを削減できましたが、上述のような変化から、単純に生産性を上げることが難しくなっていきました。
そのため企業に必要な人材を確保し、能力を向上させることが求められるようになります。こうしたことから「人的資源管理」という考え方にシフトしていきました。
さらにコンピューターの発展や社会の変革、産業構造の変化が著しくなる中で、社会や市場の変化に対応するため、「戦略的人的資源管理」が不可欠になりました。人材を将来の企業価値を生み出す重要な資源として、企業戦略に合わせなければならないという考え方です。

この考え方は他の例に漏れず米国で発展した管理形態です。欧米は基本的にジョブ型雇用を行っており、これに対して日本企業はメンバーシップ型雇用を行ってきました。この違いを理解していないと、戦略的人的資源管理は形骸化してしまいます。実際にリモートワークの急速な進展で、ジョブ型雇用に転換しようとしている企業の多くが、組織形態や慣行との齟齬により難航しています。また給与体系や評価制度なども、ジョブ型を基本とした能力評価や業績評価となっていないため、職務と責任に応じた評価が困難です。
加えていて言えば、これらの評価システムを日本型企業の慣行が阻害します。

ところで僕がマネジメントについて話をする時、講義でも企業支援でも同様ですが、機能別経営管理という視点から話します。その方がマネジメントの機能と役割が解りやすいからです。

しかし今回は敢えて人的資源管理について述べたのには理由があります。
それは経営者、つまりリーダーシップの姿勢が人の管理の形を規定するからです。前回のリーダーシップの続きとして記しました。

変革への対応が求められる現代において、形だけマネジメントを‘語っても’中身が伴いません。マネジメントに変革をもたらすのは、リーダーシップのあり方から始めなければならないのです。

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