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【読書録】『LIFE SHIFT - 100年時代の人生戦略』リンダ・グラットン/アンドリュー・スコット

今日ご紹介する本は、「人生100年時代」という言葉のルーツとなった世界的な大ベストセラー、『LIFE SHIF - 100年時代の人生戦略』(原題は『The 100-Year Life: Living and Working in an Age of Longevity』)。

ロンドン・ビジネス・スクールの経営学教授であるリンダ・グラットン(Lynda Gratton)氏と、同校の経済学教授であるアンドリュー・スコット(Andrew Scott)氏の共著である。

人生は、誰でも100年生きる時代に突入した。そんななか、私たちはどのような生き方の変革を迫られるのか。すべての人の人生設計を根底から覆しかねない、なんとも衝撃的なテーマを扱った本だ。この本が世に出てからというもの、「人生100年時代」という言葉を、誰もが日常的に使うようになった。

以下、私にとって特に印象深かった箇所を書き留めておく。

まず、人生100年時代の苦難について、問題提起がなされている部分(p20-21)。

20世紀には、人生を3つのステージに分ける考え方が定着した。すなわち、教育のステージ、仕事のステージ、引退のステージ。

しかし、寿命が延びても引退年齢が変わらなければ、十分な資金を確保できず、大きな問題が生ずる。働く年数を長くするか、少ない老後資金で妥協するかのどちらかになるが、魅力的ではない。

「オンディーヌの呪い」の例え。妖精のオンディーヌが不貞を働いた夫に、眠ればその瞬間に死ぬ、という呪いをかけ、夫は目を閉じることを忘れて一瞬の休みもなしに動き続ける羽目になった。現在の人生モデルのまま寿命が長くなれば、私たちを待っているのはこの呪い。

17世紀の政治思想家トーマス・ホッブズは、人生は「不快で残酷で短い」と言ったが、不快で残酷で長い人生はそれよりひどい。

次に、無形の資産の重要性を論じた「見えない『資産』」(第4章、p119~)。

長く生産的な人生を築くために、有形の金銭的資産と同じくらい、無形の資産も重要になる。
●生産性資産:人が仕事で生産性を高めて成功し、所得を増やすのに役立つ要素。スキルと知識、仲間、評判。
●活力資産:肉体的。精神的な健康と幸福。健康、友人関係、パートナーや家族との良好な関係。
●変身資産:自分についての知識、多様性に富むネットワーク、新しい経験に対して開かれた姿勢。

さらに、選択肢の多様化について触れる「新しいステージ」(第6章、p219~)。20世紀の「教育→仕事→引退」の「3ステージ」の生き方では立ち行かなくなるため、次の3つのスタイルで、多様なマルチステージの人生を生きることができる、と論じる。

●エクスプローラー(探検者):一か所に腰を落ち着けず身軽に動き続け、金銭面の制約は最小限にする。
●インディペンデント・プロデューサー:職を探す人ではなく、自分の職を生み出す人。組織に雇われずに独立した立場で生産的な活動に携わる。
●ポートフォリオ・ワーカー:異なる種類の活動を同時に行い、バランスを主体的に取りながら生きる。

さらに、新しい時間の使い方について(第8章、p291~)。

マルチステージの人生が標準になれば、人生で経験するステージの多様性が増し、それにともない、時間の構成に関する多様性も増す。

新しい余暇の過ごし方として、「レクリエーション」(娯楽)ではなく、自己の「リ・クリエーション」(再創造)に時間を投資するケースが増えるだろう。

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新鮮な発想や概念ばかりで、時間を忘れて読みふけった。

これからは、多くの人が、祖父母の世代や親の世代よりも、ずっと長い人生を生きることになる。それは、ほぼ確実なようだ。

それなのに、従前の「3ステージの人生」という常識に従って漫然と生きていると、上記の「オンディーヌの呪い」のような、ただ長くてつらいだけの人生を送ることになるかもしれない。

そうならないために、と、本書は、無形資産を築くための「リ・クリエーション」や、新しいステージへの移行などを検討すべきだ、と説く。それらは、とても説得的だ。

だが、一生学び続け、スキルを磨き続けなければならないというのは、結構大変そうだ。そう考えると、暗澹たる気分になる。

でも、光も見えている。本書を読めば、私たちを待ち受けている未来の輪郭が見えてくる。新しい世界が分かれば、新しい世界でどうやったら幸せに生きられるかを、考えることもできる。本書は、そのために様々なヒントを与えてくれる。

これらを参考にして、柔軟に考えて、自分なりのアクションを起こしていけば、年齢を重ねてもなお素敵な冒険を続けられる、という希望が持てた。

アラフィフの私だが、これからも、さらにアクセルを踏み(でも時にはブレーキもかけつつ)、人生の後半戦を充実させていきたい。

みなさんも、楽しい100年人生を送られますように!

この本をわかりやすく漫画で解説した本についての記事もどうぞ!

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