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【読書録】『ワーママはるのライフシフト習慣術』尾石晴(ワーママはる)

今日ご紹介するのは、Voicy(ボイシー)という音声プラットフォームでの大人気パーソナリティーでいらっしゃる、ワーママはる(尾石晴)さんのご著書、『ワーママはるのライフシフト習慣術』(フォレスト出版)。2021年4月に出たばかりの本だ。

著者のワーママはるさん(以下「はるさん」)の属性は、ワーママ(ワーキングマザー)。「ワーママサバイバルを賢くしたたかに生き抜く」というコンセプトで、Voicyにて「ワーママはるラジオ」という番組を運営され、毎日音声発信をされている。その放送回数は800回を超え、5万人をこえるフォロワーさんがいらっしゃる。

わたしがはるさんの番組をフォローしたのは、Voicyを利用し始めてすぐの頃だった。Voicyから、「編集部おすすめの放送」の1つとして、はるさんの番組が私のスマホ画面に表示されたのだ。

ふうん、こういう番組があるのか、と、何気なくポチッとしてみた。私には子どもがいないので、子育てのノウハウ系の情報には、正直言ってあまり興味がなかった。はるさんの番組も、そういう感じなのではないかと思い、最初はあまり期待していなかった。

しかし、聞いてみると、子育て情報の提供という域をはるかに超える、深い番組だった。たくさんの困難な状況の中で、考え方を変えたり、手段を効率化したりすることによって、自分が、そしてパートナーや子どもが、より幸せな人生を送ることができるよう、さまざまな有益な示唆をくださる番組だった。

はるさんの鋭い洞察に圧倒され、また、そのお人柄にも魅了され、すぐにファンになった。以来、毎日拝聴している。現在、たくさんのバックナンバーも、隙間時間に少しずつ聴かせていただいているところだ。

はるさんは、以前、外資系企業でご勤務されていた。外資系企業に勤める私は、この点でも、勝手に親近感を覚えている。現在、はるさんは「サバティカルタイム」を取っておられ、不動産賃貸業、ヨガ教室運営、執筆、講演などの分野で、事業家としてご活躍中だ。

この本では、はるさんがラジオで紹介してくれている考え方やノウハウを、「仕事」「人間関係」「子育て」「お金」「学び」の5つの章に分け、それぞれの観点からわかりやすく説明してくださっている。以下、例によって、特にいいなと思った箇所を抜粋又は要約させていただく。

1.「仕事」の習慣

夫婦は「共同経営者」であり、夫と妻で「家族会社」を経営しているという発想を持ち、長期の経営目標として、お互いのキャリア構築のタイミングを長期事業計画として立てていくのがおすすめ。(p25)

確かにその通りだと思う。周りの外国人の共働き夫婦を見ていると、この「長期計画に基づく共同経営」を上手に行なっている(少なくとも、そう見える)カップルが多いと感じる。我が家では、全くそのようにはできていないが…(苦笑)。

 トレードオフ思考(何かをトレードオフで差し出さないと何かを得られない)を頭の中に入れておく。キャリア形成のスピードを維持することではなく、レースから降りないこと、あきらめないこと。「一時的にトレードオフで差し出せない」ことを認識して、キャリアをストップさせるのではなく、存続させることが重要。(p31)

キャリアを泣く泣くストップしてきた友人などを見てきたので、これにはとても強く共感した。

「ライフワーク」(自分の好きなこと、やりたいこと、楽しいこと)と「ライスワーク」(お金を稼ぐための仕事)の交差点を探すキャリア形成に意識を持っていくほうが、何も考えずに仕事をしていくよりも幸せになる。(p34)

おっしゃるとおりだ。ライスワークが、嫌いなことだと本当にしんどいもんね。

ワーキングマザーになると、属性も背景も違う人たちの中に出ていって、交渉したりまとめたりする力がつき、「横型のリーダーシップや組織横断力」をつくる経験を確実に積ませてくれる。「縦」の方向性(上司部下の関係性で見るキャリアの「はしご型ライン」)ではなかなか得る機会がない「横の力」を身につける大きなチャンス到来。(p43-45)
ワーキングマザーの筋トレで身につく力は2つ、①生産性向上、②横型のリーダーシップ(p45-46)

これは本当にそう思う。ワーママの部下の皆さんには、対人コミュ力が高く、時間管理に優れている人がとても多いと感じる。とても貴重な戦力だ。

「属人化防止力」を身に着ける。(p49)  
そのコツとして、相手に完璧を求めない。(p53)
「行動マネジメント」はマニュアル化し、「感覚的マネジメント」は、担当者に経験を通じて「その人の感覚」を培ってもらい、口を挟まない。(p54)
4つの質から考える生産性を上げるコツ
①ゴールを重視する【結果の質】
②「なぜ」を使って視座を上げる【関係の質】
③枠や制約をうまく使う【思考の質】
④タスクを細かくするクセをつける【行動の質】(p58-59)

このあたりのコツはとても実践的。ぜひ全文を読んで学んでいただきたい。

2.「人間関係」の習慣

「私が不幸なんだから、お前も不幸になれ病」を改善するために2つのことに取り組んだ。1つは、「家族のミッション・ビジョン・バリューの作成」、もう1つは、「夫婦でファミリーキャリア(お互いのキャリア)をすり合わせる」こと。(p84-85)
夫婦仲を良くするためのコツは、可処分時間の公平性。(p90)

「お前も不幸になれ病」「可処分時間の公平性」などのキャッチーなキーワードに脱帽。確かに、「自由になる時間の不公平さ」が世の中の家庭不和の大きな原因なのではないかと感じる。

「思考のクセ」(何かが起きたときに、自分の意志とは関係なく、自動的に湧き出る思考。「見方、認知のクセ」)を「悪い」と思うのではなく、見つけて対処する、気づくことが大事。その手法として「事実」と「感情」を切り分けるようにしている。(p95-97)

これは本当にそう。30代の頃、人生の先輩から、似たようなアドバイスを受けたことを思い出した。私は、人の発言を悪いほうに曲解して、被害妄想に陥る癖があった。その先輩は、そのことを指摘してくださり、まさに「事実」と「感情」を切り分けなさい、という助言をくださったのだ。それ以降、それを心がけることによって、かなり心理的に楽になった。

「サードプレイス」(仕事でも家庭でもない3番目の場所)を持つメリット
①視野が広がる(ナナメの関係、多様な価値観)。
②個人力が上がる(ストレス緩和、コミュニケーション力)。(p102-103)
場所によって違う自分を存在させる「分人」を複数(著者的には、仕事場趣味などを合わせてだいたい3人から5人)を持っておくのがよい。(p103-105)

これにも共感。色々な場所で、色々な人間関係を築き、色々な自分らしさを出していければ楽しいと思う。

機嫌がいい人は「心理的柔軟性」が高い。(p110)

機嫌よく過ごすための条件:
①環境やまわりに左右されない。
②自分の内面に振り回されない。
③悪くなりそうになる前に手を打てる。(p112)

機嫌よく過ごすためのコツ:
①「良し悪し族」ではなく「好き嫌い族」になる
②「加点方式で物事を見るクセ」をつける
③ストレス解消用アクションを持つ。(p112-119)

機嫌がいいと、「信頼残高」が貯まる(p120)

これも本当にそう。何かトラブルや、ストレスを感じることがあっても、ここに書いてあることを実践できれば、ある程度、自分で解決できるようになると思う。

3.「子育て」の習慣

「子どもは社会からの預かりもので、18歳になったら社会に還す」と思って子どもを育てている。大事なのは、子どもが安心して過ごせるように家庭内の「心理的安全性」を高めること。(p151-152)

自分の子どものことしか目に入らない、モンスターペアレント的な親御さんも多いなか、このお考えは本当に素晴らしい。私も、子どもは社会全体の宝物だと思って、他人様の子どもたちに接していきたいと思っている。社会全体がそのような視点を持てるとよいと思う。

親ができることは、わが子が生まれ持った遺伝の中で、「興味関心があること」「得意なこと」を見つけるための選択肢を用意してやる、非共有環境を選ぶ際の応援をしてやる(選択肢を見せてやる、通学支援や学費を用意する)、これくらいしかありません。(p152)
子育てにおける「親」側の視点の持ち方2種類:
「ヘリコプター型」:親としての子育ての「視点、解析度」が高いタイプ
「ブルドーザー型」:「子どもの問題」を当事者目線で見てしまうタイプ(p155)

「召使いママ」のように、親子で依存関係をつくらない、つくらせない。「18歳には社会に還す」視点で、子どもと自分を切り離して「お互いの人生」を尊重していきたい。「ヘリコプター型」で、子供の悩む場面を取り除かないように心がけていきたい。(p158)
見えない「世間の声」を気にしすぎない。(p159)

自分の中の「アンコンシャス・バイアス」に気づく(p161)

無意識に持っている「罪悪感」や「すべき」の存在に気づくための行動
①罪悪感の種類を分ける。「罪悪感を抱く必要がない」「罪悪感を活かして行動に変える」
②罪悪感の正体を反対から見る。例えば、喧嘩ではなく、「価値観のすり合わせ」のために建設的な議論をする場と定義する。(162-165)

特に日本人には、自分の中のアンコンシャス・バイアスや、「べき論」で不必要に自分を縛って、自滅する人が多いように思う。自分にもそういう傾向があった。だから、このくだりにも大いに共感した。

4.「お金」の習慣

「家庭の収支」を夫婦間で共有する(p168)

共働きをやめない(p170)

家計のミニマム化(p172)

自分に合った投資法を探す(p182)
日本人はもともと不安に関係するセロトニントランスポーターがSS型(不安型)が60%以上を占める不安になりやすい民族。すると、短期的なリターンが期待できないものや、目にみえないものに「お金を使うこと」をためらわせてしまう。(p190)
しかし、最も効果的な投資は、自己投資。(p192)

年収の10%は大人として自分のために使うべきだと考えている。(p196)

自己投資は、いずれ大きなリターンになる。できるだけ早くから自分への投資をする。(p198)

資産運用(お金)と違って、自分への投資は「経験」が絶対に残る。(p201)

「共働きの継続」は、最高のリスクヘッジ(p203)

どんな働き方でもいいので、自分の収入経路を持っておく(p204)

「2つ以上の収入経路の確保」を考える(p205)

「労働集約型」以外に、「資本集約型」の収入経路を準備する。(p209-212)

「フロー型」と「ストック型」の収入経路を考える(p212-215)
「地位財」(他人との比較によって満足が得られる財産、お金やモノ、社会的な地位など)は「浪費」になりやすい。「非地位財」は、他人との比較は関係なく満足が得られる財産(健康、自由、家族など)。(p216)
私たちの「思考力」や「体力」は加齢に伴って日々失われていく。情報や経験の非可逆性(知ってしまったら、戻れない)は、年齢が上がるにつれて進む。お金を適切なタイミングで使うのも、人生においての投資。思考力と健康があるときにしか味わえないことは多くある。(p222-223)

お若いのに、ここまで深く考えられていて、実際に、自己投資、複数の収入経路の確立を実行され、いろいろなビジネス展開されていて、凄いの一言。私が実行できているのは、「共働きの継続」くらいかな…。

5.「学び」の習慣

「大人の学び」を継続させるコツ:「努力の娯楽化」が鍵になる。(p239)

このメッセージについては、以前ご紹介した『selfish』という本に書いてあったことにも通じると感じた。

人生100年時代ともなれば、「自分の興味関心に敏感になっている」かどうかが「幸せ」のターニング・ポイントになる。(p254)
やりたいことを「1つに絞る」「一貫性を持つ」必要はない。そのほうが、複数の職業人生を生きる「種」をたくさん持つことができるから。(p254-255)
目の前の興味関心に耳を傾けて、経験を積んでいくと、そこから考察やさらなる行動がつながっていく。「やりたいことがない」と思って「やりたいこと探し」をするよりも、まずは経験をしていくほうが、スタートとしては大事。
「職業人生は、人生に二度やって来る可能性がある」と意識しながら、現在の生活を送るのと、何も考えず定年まで過ごすのとでは、その後の人生は大きく変わる。(p256)
「はしご型」ではなく「ジャングルジム型」(シェリル・サンドバーグの言葉)のキャリア形成を目指していく必要がある。上り調子なく、横に行くときもある。しかし、過去から見れば必ず少しずつ上に登っていっている(はしご的の意味合いではなく、自分の枠を広げる意味合い)。
このジャングルジムを縦に登らない期間にこそ築いていきたいのが、「無形資産」。知識、スキル、信頼、経験、人脈、健康などの物的ではない資産。(p257-258)
無形資産は、インプット・アウトプットする習慣で身につけていくことができる。(p259)
アウトプットに対する達成ハードルを高くすると、続かない。1から何かをつくり上げるというより、「自分」のフィルターを通して出たものに価値がある(今の時代、自分しか知らない情報などない)。そのため、インプットが貯まるまで待つより、「アウトプット」は、ハードルを下げても継続するほうが大事。(p265)
どんなことでも「仕組み」がないとうまくいかない。モチベーション(動機付け)という見えないモノに頼るから続かない。具体的な見えるもの(仕組み)を頼りにしたほうが何事もうまくいくし、継続する。(p268-269)

人生100年時代を楽しく幸せに生きるために、好きなことを見つけ、無形資産を築いていく。以前ご紹介した『LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略』にも書かれていることと共通する。

それを達成するために、インプットとアウトプットする習慣を作ったり、仕組み化したりする。はるさんの成功体験に基づくノウハウが、本章では披露されている。少しずつ、誰にでもできそうな気がしてくる。

感想

はっきり言います。この本、推します。みなさん、これを読んで、ここに書かれていることを少しずつ実践されると、きっと、人生を、ずっと「賢くしたたかに」送れるようになりますよ! 

以下、読後の感想。

まず、忙しい読者にやさしい本だと思った。とても読みやすいのだ。特に、重要なメッセージを太字で書いているので、そこだけサラッと目で追い、まずは全体を通して要点をつかみ、あとから興味のある分野だけをじっくりと読み、深掘りすることもできる。忙しいワーママをメインの読者ターゲットにした本だけあって、よく工夫されていると感じた。

内容面では、上記で私が抜粋した箇所だけを見ると、よくある、意識高めで小難しい自己啓発本ではないかと思われるかもしれないが、決してそうではない。

まず、はるさんのご自身のワンオペ育児経験や、ワーママ経験に基づくエピソード、具体例がとても豊富で、説得的。また、はるさんは、1年に200冊は読書をされるそうで、本書にも、その豊富な読書量に裏打ちされた、広く深い知識や考察がたくさんちりばめられている。理論と実践(経験)の両面からの記載が充実しており、ロジカルで、筋が通っている。どの記載も、すとんと腑に落ちる。

さらに好感を持てたのは、本書を通して、はるさんが、優しく、頑張る読者を応援してくれているような雰囲気がにじみ出ていることだ。はるさんが本書で提唱していることを、全て完璧に実行するのは難しいかもしれないが、少しずつやってみようかな、私にもやれるかも、という気にさせられるから不思議だ。

本書は、30代くらいのワーママをメインの読者層にされていると思うが、既にアラフィフ、かつ、DINKSで子どものいない私にも、学ぶものがたくさんあった。もう少し早くこういうことを考えておけばよかったと後悔するとともに、今からでも遅くない、と、若い著者からの学びを素直に受け止めた。印象に残ったところに付箋を貼りながら読んだら、刺さるキーワードが多すぎて、付箋だらけになってしまった。

私には子どもはいないが、子育ての項目もとても参考になった。ワーキングマザーである妹や、会社での部下や同僚たちの状況や悩みが、よりクリアに分かるようになったのだ。私のように、ワーキングマザーを部下や同僚に持つ方や、実の娘や義理の娘がワーキングマザーである親御さんなどにも、おすすめだと思う。

この記事に興味を持っていただいた方には、ぜひ、この本を手に取って、全文を読んでみていただきたい。また、それだけではなく、是非、はるさんのVoicyもチェックしてほしい。文字づらだけ読むよりも、ずっとリアルだ。はるさんの語り口は、穏やかで落ち着いて、耳に心地よい。こちらもわかりやすいので、家事などをしながらの「ながら聴き」も十分可能。

ちなみに、はるさんのVoicyでは、少しオトナな男女関係の話や、性教育の話(主に金曜日に放送)など、この本でカバーしていない機微なトピックも取り上げられている。この記事に興味をお持ちになったあなたには、はるさんワールドにハマること請け合いだ。

ご参考になれば幸いです!

はるさんのVoicyチャンネルはこちら。

本書に関連するトピックとして、以下の読書録(↓)もどうぞ。

上記の本が、まんがで分かりやすく説明されたものは、こちら(↓)。

「努力の娯楽化」については、こちら(↓)の本も手がかりになると思います。


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