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【PDF付き】OpenAI従業員700人が署名した嘆願書の全文を大公開!

割引あり

こんにちは!連日 OpenAI やジピちゃん(ChatGPT)の最新情報を追いかけ回している、ChatGPT 飼育員の Sayah (@sayah_mediaです👩❤️‍🔥🤖

先日、ChatGPT や GPT-4 などの生みの親「OpenAI」が、突如サム・アルトマン氏の CEO 解任グレッグ・ブロックマン氏の取締役会会長 解任を発表し、世間に衝撃を与えました。

しかし、電撃発表からわずか 5 日後、サム・アルトマン氏が CEO として OpenAI に復帰することが正式に発表され、この追放劇は世間の期待に応える形で幕を閉じました👏

今回のハッピーエンドが実現した背後には、幾度となく行われた交渉のほか、OpenAI の従業員たちの著しい努力や献身、そして強い覚悟と団結力がありました。

今回、OpenAI の従業員が取締役会に宛てた、14 ページにのぼる嘆願書のデータを入手したため、本記事では、AI プロンプトエンジニアの私 Sayah が、以下のトピックに焦点を当てて解説します。

🔸 嘆願書に書かれている内容の全貌
🔸 嘆願書の中身から新たに判明した事実
🔸 復帰が実現するまでの関係者たちの目まぐるしい努力

後半では、嘆願書の全文と日本語訳(署名者名を除く)を掲載し、PDF ファイル 14 ページ分の嘆願書のダウンロードリンクも掲載するため、全文が気になる方は、よかったらダウンロードしてご覧ください。


✍️ OpenAIの従業員、ほぼ全員が嘆願書に署名

現地時間の 2023年11月17日(金)、OpenAI が公式サイトを更新し、サム・アルトマン(Sam Altman)氏の CEO 解任と、グレッグ・ブロックマン(Greg Brockman)氏の取締役会会長解任という電撃発表を行いました。

これを受け、現地時間の 11月20日(月)までに、OpenAI の 従業員のほぼ全員にあたる 700 人以上が、取締役会宛の嘆願書(書簡)に署名をしています(Dastin et al., 2023)。

嘆願書の中で、従業員たちが取締役会に求めたことは「サム・アルトマン氏とグレッグ・ブロックマン氏の復職」および「取締役会の辞任」です(Dastin et al., 2023)。

世界中が動向を見守る中、事態は二転三転し、一時はマイクロソフト(Microsoft)社への移籍が発表されるなど、しばらく混沌とした状況が続きました。

そんな中、なんと現地時間の 11月21日(火)夜、遂にサム・アルトマン氏とグレッグ・ブロックマン氏の復職に関し、取締役会と合意に至ったことが、OpenAI の 公式 X アカウントから正式に発表されました 🎉🎉🎉

サム・アルトマン氏の解任から復帰までのタイムラインについては、以下の記事に時系列でまとめています。

📨 OpenAIの従業員が取締役会に宛てた内容

OpenAIの従業員が取締役会に宛てた書簡
(The New York Times, 2023)

今回、取締役会宛の嘆願書に署名をした従業員の数は、700人以上です。

米『The Information』誌によると、OpenAI の全従業員数は約770人で、これは従業員のほぼ全員が嘆願書に署名したことを示しています(Burke, 2023)。

この嘆願書では、署名した従業員たちが OpenAI を辞める旨が示唆されており、「もしサム・アルトマン CEO とグレッグ・ブロックマン前社長が復職しなければ、私たちはマイクロソフト社に移籍します」との内容も含まれていたそうです(Burke, 2023)。

また、OpenAI の従業員たちは、取締役会の辞任を求める嘆願書の中で、セールス・フォース(Salesforce)の元 CEO であるブレット・テイラー(Bret Taylor)氏や、元米国下院議員のウィル・ハード(Will Hurd)氏を名指しし、新たな独立取締役として任命することを要求しました(Dastin et al., 2023)。

OpenAI の従業員たちは、取締役会に対し、嘆願書の中で「私たちの企業とミッションを貶めた」「あなたたちの行動は、OpenAI を指揮する能力がない」とも非難しています(Dastin et al., 2023)。

🆗 マイクロソフトもOpenAI従業員の受け入れを保証

サム・アルトマン氏とグレッグ・ブラックマン氏の、マイクロソフト(Microsoft)社への移籍が決定した際、同社は、同騒動を受けて辞職を決断した OpenAI 従業員たちに対し、マイクロソフト社に受け入れることを保証しました。

これは、OpenAI の従業員たちが マイクロソフト社への入社を選択した場合、新しい子会社には全従業員分のポジションを用意することを示しています。

マイクロソフト社の会長 兼 CEO、サティア・ナデラ(Satya Nadella)氏は「従業員が OpenAI に残るも、マイクロソフト社に入社するも、どちらも受け入れる」と語りました(Dastin et al., 2023)。

また、同氏はどちらにしても、OpenAI のガバナンスの変更は必須であると強調しています(Dastin et al., 2023)。

👑 24人のリーダー中22人が署名または辞任

加えて、現地時間 11月20日(月)の朝時点で、サム・アルトマン氏を除く全24人のリーダーのうち、少なくとも22人が嘆願書に署名または辞任表明をしていることも判明しました(Burke, 2023)。

署名をしていない2人のリーダーのうち1人は、『プラダを着た悪魔』のアン・ハサウェイ(Anne Hathaway)氏…ではなく、イアン・ハサウェイ(Ian Hathaway)氏です(Burke, 2023)。

イアン・ハサウェイ氏は、同社とは別の法人会社である「OpenAI Startup Fund(OpenAI・スタートアップ・ファンド)」のパートナーで、サム・アルトマン氏が X に投稿した「I love the openai team so much(OpenAI チームのみんなが大好きだよ)」という Post のリプ欄に、ハートの絵文字を投稿しています

署名をしていないもう1人のリーダーは、AI アライメントの責任者であるヤン・ライク(Jan Leike)氏です。

ヤン・ライク氏も、Xへの投稿で 「I think the OpenAI board should resign(OpenAI の役員は辞任すべきだと思う)」と述べています(Leike, 2023)。

⚡️クーデターの黒幕はイリヤ・サツケヴァーではない…?

そして驚きなのは、同書簡の署名者の中に、チーフ・サイエンティストのイリヤ・サツケヴァー(Ilya Sutskever)氏の名前が含まれていたことです(Dastin et al., 2023)。

イリヤ氏は、取締役会メンバーかつ共同創業者の1人で、サム・アルトマン氏に CEO 解任の件を発表直前に伝え、グレッグ・ブロックマン氏に取締役会の退任を通知した人物でもあります。

同じ共同創業者であり、2人とは付き合いも長いことから、今回のクーデターの首謀者なのではないかと囁かれていました(Dastin et al., 2023)。

署名者の欄に、イリヤ氏の名前が記載されたのが、投資家たちや従業員たちの圧力があってのことなのかは明確になっていません。

👏 イリヤ・サツケヴァーも遂に自身の思いを投稿

今回の騒動があってから、終始沈黙を貫いていたイリヤ氏。

しかし、11月20日(月)の朝方 5時05分(現地時間)に、イリヤ氏は自身の X 上で以下のような文章を投稿し、後悔の念に駆られていることや、会社を再統合すべく全力を尽くす意向を示しました。

私は、取締役会の行動に参加してしまったことを深く後悔しています。私は決して OpenAI に害を与えるつもりはありませんでした。私たちが共に築き上げたすべてのことを愛していますし、会社を再統合するためにできる限りのことに全力で取り組みます。

(Sutskever, 2023)

今回のクーデターの首謀者はイリヤ氏だと考えられていましたが、「取締役会の行動に参加してしまった」という言葉が示唆しているとおり、「実は黒幕は他にいるのではないか?」という説があちこちで飛び交っています。

前回の記事でも書いたとおり、イリヤ・サツケヴァー氏は「サムとの対話が機能不全だった」と主張しており、サム・アルトマン氏の CEO 解任とグレッグ・ブロックマン氏の取締役会からの追放が、OpenAI のミッションを守るための「唯一の道」であったと述べていました(Efrati & Gardizy, 2023)。

また、懸念点として、同氏は以下の 3つを挙げています。

🔸 OpenAI テクノロジーの急速な開発スピード
🔸 開発したものが誤用あるいは悪用されるリスク
🔸 同社がコントロール不可能なものに変わる可能性

🪟 心を「Open」にするサム・アルトマン氏

これに対し、今回解任を告げられたサム・アルトマン氏も、上記のイリヤ・サツケヴァー氏の投稿を引用リポストし、「❤️❤️❤️」とエールを送っています。

プロダクトだけではなく、心の広さまでワールドワイドです 👏🌍

この反応を見ると、私たち第3者が思っている以上に、まだサム・アルトマン氏とイリヤ・サツケヴァー氏は、強い絆で結ばれているのが伺えます。

🤝 創業メンバーのヴォイチェフ氏も励ましの声

また、OpenAI 創業メンバーの 1人、ヴォイチェフ・ザレンバ(Wojciech Zaremba)氏も、リプライ欄で「人は誰でも過ちを犯すものだ。君はずっと僕の友達だよ」とコメントしました(Zaremba, 2023)

💬 イーロン・マスク氏が疑問の声

一方、OpenAI 創業者の 1人で、現在はサム・アルトマン氏や OpenAI との不仲説が囁かれている、実業家のイーロン・マスク(Elon Musk)氏は、イリヤ・サツケヴァー氏の投稿に対し、以下のような疑問の声を投げかけました

なぜそのような極端な行動を取ったんだ?もし、OpenAI が人類にとって危険なことを行っているのであれば、世界に知らせる必要がある。
(筆者訳)

(Musk, 2023)

❤️ サム・アルトマン氏、OpenAIへの感謝と今後について語る

まだ OpenAI への復帰が決定していなかった 11月20日の 10時19分(現地時間)、サム・アルトマン氏は自身の X を更新し、OpenAI のメンバーに感謝の意を述べました

サム・アルトマン氏は、特に、当初「暫定 CEO」に任命されていた CTO のミラ・ムラティ(Mira Murati)氏、COO のブラッド・ライトキャップ(Brad Lightcap)氏、CSO のジェイソン・クォン(Jason Kwon)氏の 3 人に焦点を当てています。

OpenAI のリーダーシップチーム、特にミラ、ブラッド、ジェイソン、そして本当に彼ら全員が、歴史に残るような素晴らしい仕事をしてくれた。彼らを心から誇りに思います。
(筆者訳)

(Altman, 2023a)

🤝 形は変われど、今後もOpenAIと連携を図る意向

また、OpenAI に復帰する形で話がまとまる前、マイクロソフト社への移籍が発表された直後も、サム・アルトマン氏は、OpenAI の CEO という形と違えど、今後も OpenAI と連携を図っていく意向を示していました。

これまで以上に、僕らは結束力とコミット力、集中的に取り組む意識が高まっています。何らかの形で、今後もみんなで手を取り合って共に働けることに、とてもワクワクしています。

1チーム、1ミッション。
(筆者訳)

(Altman, 2023b)

🌈 OpenAIの繁栄を重んじるサム・アルトマン氏

こちらの Post も、取締役会との交渉が決裂し、マイクロソフト社への移籍が決まった際のものです。

たとえ OpenAI から退く形になっても、OpenAI の反映が最優先であるとの揺るぎない想いを語っており、サム・アルトマン氏の OpenAI に対する揺るぎない愛情や信念、情熱が伝わります。

サティア(ナデラ氏)と僕の最優先事項は、引き続き OpenAI が繁栄し続けることです。僕たちは、パートナーや顧客に事業の継続性を完全に提供することを約束します。OpenAI と Microsoft のパートナーシップによって、この目標はより実現に近づくでしょう。

(Altman, 2023c)

結果的に、サティア・ナデラ氏のサポートもあり、OpenAI に CEO として復帰できることが決まったサム・アルトマン氏ですが、むしろ今回の一件で、より一層 OpenAI のチームやマイクロソフト社との絆が深まったようにも見えます。

また、OpenAI とマイクロソフト社は、今後も引き続き良きパートナーとして、連携・協力し合っていく意向を示しています。

そして今回、サム・アルトマン氏やグレッグ・ブロックマン氏の復帰を勝ち取れた裏側には、OpenAI のリーダーたちや従業員たちをはじめとする、多くの人々のサポートや努力、勇気ある行動、そして強い絆や団結力があったのでした

📜 OpenAI の従業員が取締役会に宛てた嘆願書

今回の復帰の実現につながった要因の1つとして、OpenAI の主要なリーダーたちや従業員たちが取締役会に宛てた嘆願書があります。

嘆願書の中には、組織の崩壊にもなり得る今回の身勝手な行動や、取締役会の不誠実な対応に対する強い批判や不信感が、赤裸々に綴られていました。

今回「OpenAI の従業員が取締役会に宛てた嘆願書」のファイルを入手し、全文を日本語に翻訳したため、ここに掲載します。

嘆願書の PDF データも以下からダウンロード可能なので、興味がある方はぜひご覧ください。

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6,196字 / 1ファイル

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