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パンクロッカーに憧れた少女の日記(仮)61


中三・三学期
受験が終わるまでしばらく日記を書く余裕はなくなると思う。勉強ばっかしてたら息がつまるし、気晴らしが必要だけど、受験なんかなくともこの家でそもそも気晴らしなんか出来ないし、今はとにかくひたすら勉強するしかない。ひたすら勉強してても、例の人に高確率でからまれるんだけどもね。「にげる」を選択しても「しかしまわりこまれてしまった!」ってドラクエみたいだ。まぁ、私には一緒に戦う仲間なんかいないけどね。本当は音楽聴きながら勉強したいけど(その方がはかどる気がするから)、例の人は勉強しながら歌なんか聴いて、お前はふざけてるのかって何時間も恫喝してくるのが想像できるのでしない。いい加減、音楽聴きたいよ。ウォークマンがほしい。それなら外で、例の人を気にせずに聴けるじゃんって思ったけど、受験とか関係なく、普段からこの家じゃ一人で外に出かけること自体ほとんど出来ないってことに気づいた。ああ、ほぼ家と学校と塾しかない私の世界。その塾ももう後わずかで終わり。これから家と学校の往復が少なくとも3年間は続くのか、、、つらいな。きついな。どうせ、Y女子受かっても、部活なんかやる気ないけど、家にいたくないから何かそういうのに入ってもいいかなって思ってる。気に入るような部活があるとは思えないけどさ、この家よりマシだろ。何の部活がいいだろね?どんなのがあるか知らないけど。なんていうか、今更だけどさ、私って趣味とか得意なものってないんだなって気づいてしまったよ。英語は他の子より出来るけど、ただそれだけ。楽器とか、歌とか、絵とかスポーツとか、なんも出来ないもんな。私の趣味はこれです、って言えるものもひとつもない。小学生の頃は手芸が好きで、クラブにも入ってたけど、家では禁止になってしまった。例の人はぬい物も編み物も全然できなくて、他の子たちは分からないところはお母さんに教えてもらったりして作品を完成させてたけど、私は例の人に聞くなんて怖くてとてもじゃないけどできなかった。学校の図書室で借りた手芸の本に「分からないところがあれば、お母さんやお姉さんにきいてみましょう」って書いてあったけど、聞けるわけないっちゅーの!って思った。前にお父さんが、靴下に穴が開いたから例の人につくろっておいてと頼んだら、全然穴がふさがってなくて、それを見たお父さんが「お前はこんなこともできねぇのか、だったら美穂や里香にやらせた方がマシなんじゃねぇのか」って例の人を怒鳴って以来、うちでは手芸は禁止になった。というより、例の人に何か言われるんじゃないかと思って自分からやらなくなった。どうしても家庭科の課題でやらなきゃいけない時だけたまにやったけど、出来るだけ例の人に隠れてやった。ああ、いつか台所で家庭科の宿題をやってるとき例の人が突然からんできては「その裁ちばさみで手を切って死んでみろ。お前みたいなお嬢ちゃんにはどうせ出来ないだろうけどね」ってあおってきたのもそのせいか、、、。お父さんも余計すぎる一言二言多すぎる。そんで私にいつもいつもとばっちりが来る。変なことをお母さんに言うのやめてって訴えたこともあるけど、あんな奴にビビってんじゃねぇ、お前は臆病だなって言うだけだった。ビビるに決まってるじゃん。包丁持ちだして、死んでやるとか一緒に死のうとか言う人だよ?何で、小中学生がこそこそ隠れて親のいないときに宿題をやらなきゃいけないんだよ。ふざけんな。ああ、、、受験勉強に打ち込みたいのに、また一つ嫌なことを思い出してしまった。忘れたいけど何故だか今書かずにいられないから書く。小5の時、家庭科でぞうきんをぬわされたことがあったけど、完成してない人は残りを家でやってくるようにって言われた。私は家に持って帰りたくなかったから必死で授業中頑張ってやったけど間に合わなくて、仕方なく家に持ち帰った。けど例の人のいる前でやると無事に出来る気がしなかったから、お腹が痛いって嘘をついて、トイレの便座に座ってぞうきんをぬった。けど、例の人がいつトイレに来るかと思うと焦って指を針で刺しまくってしまい、ぞうきんに血がついてしまった。一度でぬいきれるわけもなく、続きは例の人がおつかいに行ってる間や家の前で近所のおばさんとくっちゃべってる時にやったけど、いきなりドアのノブを回す音が聞こえたときは思わずぬいかけのぞうきんをトイレのゴミ箱の奥に隠した。例の人が6畳に行ったすきに回収するつもりで。けど運のめちゃ悪い私と、変なことに関してはカンが異常にいい例の人、すぐにバレてしまった。「なんだこれは、親に隠し事なんかしやがって、将来ロクな人間にならねぇわ」と怒鳴られたばかりじゃなく、私が変に気を使ってたのまでカンづかれてて「お前、こうすればお母さんがお父さんにぶん殴られずに済むとでも思ったのかよ?バカだね~、お前がこんなことしなくてもしょっちゅうお母さんはお父さんにぶん殴られてるわ」ってせせら笑ってきた。そして「私の育て方が悪かったのね~」と大げさにウソ泣きまで始めた。ちょうどその時里香がいたから、余計大げさな演技をしたんだと思う。いかに私がお母さんをいじめる悪い子で、家に問題を運んでくる疫病神だってことを里香に印象付けて同情を得るために。その試みはもう充分、すでに成功してると思う。今でも例の人はことあるごとに同じようなシナリオで私を悪者にする。私が悪いことを繰り返すせいで例の人がお父さんに怒られてるのに平然としてる悪い奴だって仕立て上げてる。里香は愛想の良さでは天下一品だし、顔も可愛いし、例の人にもお父さんにも気に入られてるから私に勝ち目なんかない。里香は本当は例の人が悪いって知ってるに決まってる。いくら小学生でもそのくらい、バカじゃあるまいし分かる。ただ、例の人やお父さんの味方についてた方がずっとずっと得だからお姉ちゃんが悪いとばかりににらみを利かせたり、お姉ちゃんが悪いからお母さんに謝れと言ってるだけ。例の人が一番最悪なのは当然として、里香も最悪だ。そうしないと例の人にいじめられるかも知れないからそうしてるのは分かるけど、普段から私を疫病神扱いしたり、私のものを勝手に盗ったり、好き放題してるから許せない。カナちゃんとアキsanはどうしてあんな仲がいいんだろう。結構前に、いつか私たちみたいに、ミホも妹と友達みたいになると思うよって言ってたのが忘れられん。でも絶対にありえない、マジで。カナちゃんとアキsanは、親をめぐってこんな争いをしたことは多分ないから、そういうことが言えるんだと思う。カナちゃんとアキsanも、私の勝手な予想だけど、おじさんとおじいさんのことはクズだと思ってて、おばさんのことは悪い奴と結婚させられたかわいそうな人って思ってると思う。カナちゃんがおばさんの悪口言ってるとこ、一度も聞いたことないしな。むしろ、おばさんが悲しむからたばこやお酒は出来るだけ見つからないようにやってると言ってるし(多分バレバレだけど)、おじさんがたまに家に帰ってくるときはカナちゃんもアキsanもライブとか外には遊びに行かないで、家にいると言ってた。私もアキsanみたいなお姉さんがほしいし、おばさんみたいなお母さんがほしいよ、、、。